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頼りになるマンガ Vol.7:SNSに辟易した時に読むマンガ。

  • 2022.1.27
ちひろ マンガ 単行本

SNSに辟易した時に読むマンガ。

『ちひろさん』安田弘之/著

推薦者:トミヤマユキコ

ちひろさんの孤独の流儀を身につけたら最強!

繋がりっぱなしの日常に疲れたら、ぜひ手にとってほしいのがこのシリーズ。主人公のちひろさんは、元風俗嬢なんですが、ある日ふらっと店を辞め、気づけば小さなお弁当屋さんの看板娘になっています。

私に言わせれば、彼女は「孤独」の科目を履修し終えている孤独のプロです。地域のみんなと仲良くしてはいるけれど、コミュニティの中心には近寄らず、端っこの方に陣取って疲れたらさっと逃げ、戻りたい時に戻ってくる。孤独の良さを知っているから、それができるんですよね。

SNSに疲れてしまう人は、みんなの輪の中にいなければと思いすぎてしまう人なんじゃないでしょうか。そういう方はちひろさんを心の師として孤独の修業をしてみてほしいですね。

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ちひろ マンガ 単行本

『ちひろさん』安田弘之/著

〈ちひろさん/やすだ・ひろゆき〉
元風俗嬢のちひろは、夜の街の喧騒を離れて、海辺の小さな弁当屋で働き始めた。そこには恋愛、家族、仕事、人間関係など、いろんな悩みを抱えた客がやってくる。自由に風のように生きるちひろから人生を学びたい。全9巻/A.L.C. DX(秋田書店)。

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トミヤマユキ_頼りになるマンガ

トミヤマユキコ

1979年生まれ。少女マンガ研究者、ライター。東北芸術工科大学講師。専門分野は日本近現代文学と少女マンガ。著書に『少女マンガのブサイク女子考』(左右社)、『40歳までにオシャレになりたい!』(扶桑社)などがある。

『ナンシー いいね!が欲しくてたまらない私たちの日々』オリヴィア・ジェイムス/著 椎名ゆかり/訳

推薦者:岩下朋世

ナンシーはアメリカのご長寿新聞マンガの主人公。なんと80年以上の活躍を続けるこのキャラクターだが、どうもこのところ様子がおかしいらしい。2018年にオリヴィア・ジェイムスが6代目の担当作家になって以降、すっかりスマホ中毒の現代っ子になってしまったのだ。

いつもスマホを手放せないナンシーの姿は、日本の読者にとっても痛いところを突いてくる「あるある」が満載。人によっては我が身を振り返って反省するきっかけになるかもしれないし、流石に私はここまでひどくないぞ……とちょっとした安心材料になってくれるかもしれない。

SNSなどの現代的トピックを扱った皮肉なユーモアだけでなく実験的な表現も多い。とにかく刺激的なマンガだ。

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ナンシー マンガ 単行本

『ナンシーいいね!が欲しくてたまらない私たちの日々』オリヴィア・ジェイムス/著 椎名ゆかり/訳

〈ナンシーいいね!がほしくてたまらないわたしたちのひび/おりゔぃあ・じぇいむす〉
6代目の作者が描くのは、スマホを持ってネット中毒になったナンシーの姿だった。現代人であれば思わず同調してしまう描写が満載。全1巻/DU BOOKS(ディスクユニオン)。

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岩下朋世

岩下朋世

いわした・ほうせい/1978年鹿児島県生まれ。相模女子大学学芸学部メディア情報学科教授。専門はマンガ研究、メディア論。最新著書に『キャラがリアルになるとき 2次元、2.5次元、そのさきのキャラクター論』(青土社)。

『恋は論破できない』柳原望/著

推薦者:近西良昌

現代人が忘れてしまったスローな暮らしが新鮮。

現代人は1人1台スマホを持っていることが当たり前になってきています。もしもスマホを忘れて外出してしまったら、不安でたまらないですよね。

この物語の登場人物は、スマホもパソコンも持っていない女性。メールもSNSもできません。この女性に思いを寄せる男性は、電話をしたくても家の電話にかけるしか方法がなく、家族になかなか取り次いでもらえません。今では考えられない、もどかしいくらいのスローな恋愛の展開ですよね。

すぐにメールで連絡が取れる現代において「どんな反応が返ってくるんだろう」とドキドキしながら手紙を書く姿もとても新鮮です。便利すぎる現代に疲れてしまった時、この古風なやりとりをする2人に心が癒やされると思います。

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恋は論破できない マンガ 単行本

『恋は論破できない』柳原望/著

〈こいはろんぱできない/やなはら・のぞみ〉
ネットに居場所を見出している大学生の現人くんが恋をしたのは、インターネットでのコミュニケーションが一切取れない少女だった。昭和な暮らしをする彼女とどうしたら仲良くなれるのか。『ヤングガンガン』(スクウェア・エニックス)で連載中。

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近西良昌

近西良昌

ちかにし・よしまさ/1979年生まれ。〈三省堂書店海老名店〉(住所:神奈川県海老名市中央1-1-1 4F/TEL:046-234-7161)で20年以上コミックを担当。マンガ大賞選考委員。生涯のベストは森山大輔の『クロノクルセイド』(少年画報社)。

『マンガ サ道~マンガで読むサウナ道~』タナカカツキ/著

推薦者:青柳いづみ

書を捨てて町へ出よう、サウナへ行こう、だ。

フランスのナントに公演に行った時、劇場にハマム(スチームサウナと垢すりの融合)が併設されていて驚いたのを覚えています。あの時は蒸し焼きにされてるだけじゃないかと思っていたサウナですが、サ道を読んだ今ならわかる。

サウナはいい。サウナ内には携帯は勿論、本だって持ち込み禁止。そんなもの何もいらない、書を捨てて町へ出よう、サウナへ行こう、だ。「ととのった」未体験にも拘らず何事も形から始めないと気が済まない私は、ヴィヒタの葉っぱを富良野から取り寄せようかと本気で企んでいます。

私も夜空の星々を飛び越え宇宙と合致してみたい。サウナに入るだけで人に感謝できる自分になりたい。素敵なサウナハットを知っていたら教えてください。

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サ道 マンガ 単行本

『マンガ サ道~マンガで読むサウナ道~』タナカカツキ/著

〈マンガ さどう〜まんがでよむサウナどう〜/たなかかつき〉
苦手だったサウナに「ととのったー」と開眼した作者による入門書。トン子ちゃんが登場する回もあり、男女問わずサ道を伝道する。TVドラマ化もされ、現在の本格サウナブームを牽引中。既刊4巻/モーニングKC(講談社)。

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青柳いづみ

青柳いづみ

あおやぎ・いづみ/1986年生まれ。俳優。〈マームとジプシー〉〈チェルフィッチュ〉などの舞台出演をメインに、今日マチ子との共著エッセイマンガ『いづみさん』、音楽家・青葉市子とのユニットなど多方面で活躍中。

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