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なかなか寝てくれない我が子……寝かしつけの技を教えて!【保育士さんの“育児のウラワザ”vol.5】

  • 2022.1.27

家庭で育児をしていると、自分の育児がこれでいいのかのか、心配になることがあります。今回は、「寝つきのよくない子」をテーマに、保育士養成校での指導も行っている保育園園長の大竹龍さんにお話を伺いました。

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保育士:大竹龍さん おおたけりょう/認可保育園園長。保育士養成校で講師を務め、柳沢式運動プログラムの視点で「育ち」を捉え、現場から生まれたあそびを交え紹介している。また絵本のスペシャリスト「絵本専門士」として専門的な視点から絵本の魅力を伝える活動や、「絵本男子モデル」としてWEBで絵本読み聞かせ動画、あそび歌の配信や絵本ライブを行っている。

保育園で寝ない子には、どうしていますか?

――寝かしつけに苦労しているお母さんの悩みはよく聞きます。抱っこでないと寝ない、ベッドにおろそうとすると起きる、やっと寝てもすぐ目が覚める……。でも保育園では、大人数を最初から布団で寝かせていますよね。寝かしつけはどうしているんでしょうか?

大竹:保育園でも、はじめの慣らし保育のときは、抱っこで寝かしつけもしますよ。みんな家庭環境がバラバラですから、ワンパターンで全員を寝かしつけようというのは、そもそも無理があります。だから、「この子はどういうふうにしたら、安心感を得られるのか」ということを探っていくことを第一にします。

寝ない子というのは、寝ることに安心できないから、抵抗するのだと思うんです。お母さんと体が離れることが不安、いま楽しかった時間が終わってしまうという不安、寝たらお母さんがいなくなるんじゃないかという不安。不安感が強い子は、不安で起きるのに、またすぐ寝かせられて嫌になる、という悪循環もあります。

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――寝かしつける方法は、どんなバリエーションがありますか?

大竹:まずは、その子その子の寝方をよく観察します。たとえば、背中をトントンたたいたら寝た、頭をなでたら寝た、耳のところをさわったら寝たとか、そういう「どうやったら寝るのかな」というのを考えながら関わっています。大人が寝る時にも、寝る向きや寝る時の音楽など、しっくりくる寝方に個人差があるのと同じです。トントンか、見守りか、歌か、絵本か、その子なりの安心感を見つけて、なるべく同じ時間に、同じ手法で、同じ環境にしてやり続けます。毎日同じリズムの中で行われると「いまは寝る時間なんだな」というのが、次第に子どもたちもわかるようになります。

あとは、どの子にもに共通するのが、大人がまず気持ちを落ち着けて、安心感を得られるようにやすらいだ気持ちで接することですね。ミラーニューロンの法則といって、大人の気持ちがあかちゃんにも伝染するんです。早く寝てほしい! とイライラしていると、それが伝わってしまうというか。お母さんも寝不足で大変だと思うんですが、まずは気持ちを落ち着かせて接してみてください。

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寝かしつけの方法はその子次第!

――少し体力がついてくると、お昼寝の時間に寝てくれず、夕方や夜に眠くてグズグズしてしまうというお子さんもいます。無理に寝かせようとすると、お布団を蹴って出てきたり、わざと音を出したりして、気をひこうとします。それでも「いまは寝る時間」と寝かせるべきでしょうか?

大竹:保育園では、寝る時間は伝えつつ、起きていてもいいから静かにしようねって伝えてます。朝が遅く、登園時間も遅い子は、睡眠のリズム的に、他の子よりちょっと遅い時間に眠くなる可能性があります。お昼寝の時間になっても、その子が眠くなるまで、ちょっと遊ばせたり、「これで遊んだらお昼寝しようね」って予告をして、見通しを持てるようにします。「寝る」選択肢と「遊んでから寝る」という選択肢から、選ばせてあげるんです。

――「遊んでから寝る」を毎日選んだ場合、遊んでくれないと寝ないという習慣になることも考えられますが、それはその子の生活リズムとして作っていく感じでいいのでしょうか。

大竹:そうですね。まずは大人と子どもの考え方は違うと認識して、子どもに合わせてあげることだと思います。「早く寝なさい!」「もう遊ぶのダメ!」「じゃあ部屋の外で一人で遊んでなさい!」と言うのでは、逆効果です。まずわたしたちは、子どもの気持ちに共感して、嫌だ・こうしたいという事実を理解して、解決策を提案して、向き合えた時間を認めるというふうにします。大人が全部をコントロールしません。ちょっと余地を作って遊ぶことで、気持ちを受け止めてもらえたり、自分がしたいことが認められて満足した後なら、すんなり寝てくれることもあります。見通しが持てるように予告をすることは大事ですね。

――睡眠導入の儀式的なものとして、たとえば「これ読んだら寝ようね」と、保育園では絵本を読んでいるのをよく見かけますが、逆に眠れなくなったりはしないのですか?

大竹:クラスによって、寝る前に読み聞かせをしているクラスと、そうでないクラスがありますね。5歳ぐらいは就学に向けて、あえて寝る時間を減らしていく時期です。体力もついてきて、すぐに眠たくなる感じは少なくなります。なので、コットに横になったら長編の絵本を「今日は何章までね」という感じで読んだりしています。

「エルマーの冒険」や「おしいれのぼうけん」などの冒険ものを読むこともあります。でも、人の声による読み聞かせ自体に、前頭葉をリラックスさせる効果があるそうです。それはお母さんの声じゃなくても、人の声自体にそういう効果があって、安心感を持って眠るということにもつながってくると思います。

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――寝る時は、静かに暗くしたほうがいいとも聞かれますが、寝る時の環境はどうしていますか?

大竹:以前は、あかちゃんを薄暗い中で寝かせておくのがいいとされていましたが、いまは、ある程度の刺激を与えたほうが安心して眠れると言われています。小児科医も、あかちゃんが昼間寝る場合は、少し明るくして、空気の流れがあり、少し音が聞こえる場所がいいというアドバイスしています。

大人の人間だって、真っ暗で、人の声がしなくて、無機質な部屋だと、逆に落ち着かないじゃないですか。何か生活の感じがする場所じゃないと、あかちゃんも逆に命の危険を感じて落ち着かないと言われています。

――そうなんですね。寝かしつけひとつをとっても、やり方や環境の整え方など、いろんな方法を試してみるといいかもしれないですね。

大竹:そうですね。もちろんいろいろやってみても、子どもによっては、甘えっこだったり、神経質だったりで、うまくいかないことはあると思うんです。ご家庭でのお母さんは、愛情を独り占めできる特別な存在。だからこそ、特に絶対的な安心感を求められてしまうこともあります。

でも子どもも成長しながら、大人をよく見ていると感じます。「寝てくれない」という発想をちょっと変えて、お子さんにとって「寝る準備をするお母さんとの時間が楽しい」「一緒に寝ていると幸せな気分になる」と感じるには、どういうふうにしていこうかな、と想像するところから始めてみてもいいかもしれませんね。

POINT・寝かしつけるときは、まず大人が気持ちを落ち着かせて ・この子にとって「安心感」を得られるのはどういうときなのか観察する ・「遊んでから寝る」「絵本を読んだら寝る」というように、すぐ寝る以外の選択肢も選べるようにする ・急に暗くて静かすぎる場所に移すより、生活感があるほうが落ち着いて寝られる場合も

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聞き手:日下淳子 くさかじゅんこ/kodomoe編集ライター・元保育士・一児の母。親子と絵本と音楽をテーマに活動中。

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イラスト:山川あかね やまかわあかね/イラストレーター・布人形作家。インスタグラムにて育児日記を公開中。https://www.instagram.com/dummpuppe/

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