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40歳ひきこもり長女は「会話が苦手」で発達障害…年金受給に必須の診断書、どうする?

  • 2022.1.25
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障害を持つひきこもりの子が障害年金を受給するには?
障害を持つひきこもりの子が障害年金を受給するには?

ひきこもりのお子さんの中には、うつ病や発達障害などの精神疾患を抱えているケースも多く見受けられます。その障害があるために、働いて収入を得ることが難しく、お金に不安を抱えているようであれば、障害年金の請求をすることも検討しましょう。

ただし、障害年金を請求するためにはさまざまな書類をそろえる必要があり、日本年金機構指定の書式で医師が作成する診断書は、特に重要です。そのため、普段から医師としっかりコミュニケーションを取り、自身の障害状態などをしっかりと伝えておかねばなりません。では、コミュニケーションが苦手なお子さんはどうすればよいのでしょうか。

医師に症状伝えることが重要

ひきこもりのお子さんは、その障害で初めて病院を受診した日(初診日)が20歳前、または20歳以降でも就労経験がなく、厚生年金ではなく国民年金加入中であることが、多いでしょう。そのような場合、障害基礎年金を請求することになります。障害基礎年金には1級と2級があり、より障害状態の重い方が1級です。仮に障害基礎年金の2級に該当した場合、収入月額は次の通りです。

障害基礎年金2級 約6万5000円障害年金生活者支援給付金 約5000円合計約7万円

お子さんにとって月額7万円の収入は大変心強いものでしょう。ただし、先述のように、障害年金を受給するためにはさまざまな書類をそろえて請求する必要があります。その中で最も重要な書類は「医師の作成する診断書」です。

診断書には、お子さんの障害状態や日常生活を送る上で困難なことを踏まえた内容で、詳しく記載してもらう必要があります。精神疾患の症状は外見からでは分かりづらいので、定期的な受診の際にしっかりと医師に伝えておくことが重要です。しかし、お子さんの中にはコミュニケーションが苦手で、「自身の障害状態などをきちんと伝えられていない」といったケースもあります。

筆者の元に相談に訪れた親子もそのようなことで悩んでいました。

障害のこと、伝わっているか不安に

障害年金を申請する際の精神障害用診断書にある項目
障害年金を申請する際の精神障害用診断書にある項目

ひきこもりの長女(40)の相談に同席した母親(72)は、長女について語りだしました。

「長女には発達障害があり、特に対人関係が苦手で会話のキャッチボールがうまくいきません。長女は現在も月に1回精神科に通院していますが、問診はわずか数分で終わってしまいます。医師はパソコンの画面をずっと見ながら話をしており、長女は『果たして自分の障害状態がしっかり伝わっているのか。今のような状態で医師に診断書を書いてもらっても大丈夫なのか』といった不安を感じているようです」

「なるほど。事情は分かりました。娘さんの障害状態や日常生活での困難さを口頭で伝えることが難しいというのであれば、あらかじめ文書にして、それを医師に見てもらう方法もあります」

それを聞いた母親は、疑問を口にしました。

「文書を作成するといっても、一体どのような内容にすればよいのでしょうか」

「日本年金機構の精神障害用診断書には『その障害により日常生活がどのくらい大変なのか』という項目があります。この項目を参考に、娘さんが生活をする上でどのくらい大変なのかといったことをまとめていくとよいでしょう。文書は私(筆者)の方で作成しますからご安心ください。まずは、それぞれの項目で何がどのくらい大変なのかを確認してみましょうか」

「はい。どうぞよろしくお願いいたします」

母親はそう答え、長女も拒否しませんでした。筆者は診断書を手に取り、項目の記載がある欄を親子に見せました。

長女は対人関係やコミュニケーションを特に苦手としています。そこで「他人との意思伝達および対人関係」の項目から確認をしてみることにしました。

長女の一番の悩みは「相手に何か伝えようとすると、急に頭の中が真っ白になってしまい混乱してしまう」「興味のない話になると頭に全く入らず、理解することができない」といったもの。確かに筆者と話をしているときも言葉がなかなか出ず、「あー」「えー」といった発言を繰り返したり、筆者の質問に対して見当違いな答えをしたりといったことが見受けられました。

長女は、「何とかしたい」という思いから、発達障害の支援団体や就労支援に通ったこともあったそうです。しかし、いずれも長続きしませんでした。支援者や周囲の人となじむことができず、また支援者が長女のためを思っていろいろと提案や助言をしてくるのに対して、その内容を理解したり自分の思いや意見を伝えたりすることができなかったからです。そのような状況に強いストレスを感じてしまい、ついには「感情を爆発させて周囲を困らせてしまう」といったことが何度も続いてしまったため、現在では社会との接点を持とうとせず孤立しています。

親子からそのようなエピソードを聞き取った筆者は、他の項目も同様に時間をかけてヒアリングし、文書を完成させました。

後日、通院先の医師に文書を渡し、長女の状況を踏まえた診断書を作成してもらうことができました。その後、障害年金の請求に必要なその他の書類は筆者が作成し、代理で請求したところ、長女は無事に障害基礎年金を受給することができました。

何度も言いますが、障害年金を請求する上で、診断書はとても重要な書類です。お子さんの状況を医師に口頭で伝えることが難しいようであれば、あらかじめ文書としてまとめておき、診断書作成の参考にしてもらうとよいでしょう。

社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー 浜田裕也

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