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身体ナビゲーションVol.64「尿が排せつされるまで」

  • 2015.8.18
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こんにちは。健康管理士のSAYURIです。

汗をたくさんかく夏場は腎臓にも影響が出やすくなるもので、尿路結石はその代表例と言えます。

今回は腎臓でろ過され作られた尿が排せつされるまで、そして、あまり知られていない“尿を作ること以外”の腎臓の働きについてご紹介したいと思います。

●尿の旅路〜原尿が尿として排せつされるまで〜

大人の場合、1日に約150Lもの原尿が作られていて、その原尿はまず近位尿細管で老廃物が取り除かれます。しかし、約80%が再吸収されるため、近位尿細管は血液のリサイクル装置とも呼ばれています。ブドウ糖やアミノ酸などの大部分も再吸収されます。

そして、近位尿細管の下にあるU字型のヘンレ係蹄という部分でさらに水分が吸収され、尿の濃度が調整されます。次の遠位尿細管では、ナトリウムや水分、塩素が吸収される一方、取り込み過ぎたカリウムが尿中に戻されます。ここで水分や電解質の量の最終的な調整が行われ、集合管と言う太い管に流れ込みます。

集合管では、抗利尿ホルモンの働きによって水分や尿酸が再吸収され、体に不要とされる老廃物を含む水分が腎杯、腎盂(じんう)に集められます。これが尿管を通って膀胱にためられ、最終的に尿として排せつされるのです。

ちなみに、この過程で再吸収された水分やさまざまな成分はどうなるかというと、血液に戻されて腎静脈から下大静脈に入って心臓へと戻り、再び全身を流れるようになっています。

●体内環境の調整役も担う腎臓

人体の約60%は水分でできているといわれているように、その水分量を調整することは、生命の維持にとって非常に重要です。実は、体内の水分量を調整するのも腎臓の働きなのです。

例えば、水をたくさん飲むと血液の濃度が低下します。この情報は脳でキャッチされ、抗利尿ホルモンの分泌が低下します。すると、尿細管に対する作用が抑えられ、水分の再吸収量が減少し、薄い尿がたくさん出るように調整されます。逆に、夏に大量の汗をかいたときなどは、抗利尿ホルモンの分泌が促進されて水分の再吸収が活発になり、濃い尿が少ししか出ないように調整されます。

つまり、腎臓には尿を薄くする希釈力と尿を濃くする濃縮力があり、体の状況に合わせて臨機応変に対処しながら体内の水分量を一定に保ってくれているのです。

また、全ての細胞は外側を細胞外液と言う液体に保護されています。細胞外液にはナトリウムやカリウム、カルシウム、マグネシウムなどの電解質が含まれていて、この濃度が少しでも変化すると、細胞は正常に働くことができなくなってしまいます。この電解質の調整をしているのも腎臓です。例えば食事で塩辛いものをたくさん食べたとしましょう。細胞外液に含まれるナトリウム濃度は0.85%が正常値です。これを超えるほどの塩分が入ってくると余計な塩分を尿として排せつさせ、ナトリウム濃度がプラスマイナス0.05%の誤差の範囲内に保たれるように調整してくれます。

●体内のpH調整も腎臓の役目

私たち人間の体は弱アルカリ性の状態がいい、というのはご存じかと思います。

人間の体液のpHは7.35〜7.45の弱アルカリ性、それも極めて狭い範囲に保たなければいけません。そのため、腎臓は重炭酸イオンの濃度を調節することによって体のpHのバランスを取っています。この重炭酸イオンはアルカリ性で、血液が酸性に傾いたときにはこのイオンを排せつしないようにし、反対に、アルカリ性に傾いたときにはこのイオンを多く排せつするようにしています。

このように、腎臓は排せつによって水分・電解質・pHの割合を調整して、体液の組成を一定に保つ役割も果たしています。

【参考文献】

・総務省認証予防医学学術刊行物『ほすぴ』成人病予防対策研究会発行

●ライター/SAYURI(心理食育インストラクター)

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