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物理学者いわく、宇宙が美しい理由はたった3つ。

  • 2022.1.13
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「宇宙はなぜ美しいのか」。そう聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろうか。満天の星、天の川、流れ星。壮大で神秘的な宇宙の姿がたくさん目に浮かぶだろう。しかし、物理学者に言わせれば、宇宙の美しさは目に見えるものだけではない。東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構教授の村山斉さんが『宇宙はなぜ美しいのか カラー新書 究極の「宇宙の法則」を目指して』(幻冬舎)で語るのは、「宇宙の法則」の美しさだ。

本書第1章では、宇宙と聞いて私たちが想像するような、惑星や星雲や銀河のスペクタクルが紹介されている。フルカラーの写真だけではなく、ページ内のQRコードから、木星に彗星が衝突する映像や、ブラックホールが合体する音(!)まで視聴できる。もちろんそれぞれの現象に関して、物理学者ならではの解説もあり、第1章だけでも十分楽しめる。

しかし、第1章はほんの序章にすぎない。本書のメインは第2~5章。主役はこの宇宙の物理法則だ。登場するのは、目に見えない素粒子や正体不明の暗黒物質、重力、4次元、ビッグバン......。難しくて面食らう話も多いが、すべて理解しようとしなくても大丈夫。村山さんが伝えたいのは、たった3つの「美しさ」だ。それは、「高い対称性」「簡潔さ」「自然な安定感」。物理学者は、この3つに美を感じるのだという。

物理学者が感じる、3つの美しさ

まず、「高い対称性」とは。「対称性」のあるものとして、左右対称なベルサイユ宮殿や、4方向から見た形が同じ東京タワー、さらに一周ぐるりとどこから見ても同じに見える東京スカイツリーが例に挙げられている。これらはすべて人工物だが、対称性のある形が「美しい」という感覚はわかっていただけるのではないだろうか。

3次元でもっとも対称性が高い形は、球だ。スカイツリーは上下をひっくり返したら見た目が変わってしまうが、球はどこをどうひっくり返しても同じ見た目になる。そんな球の形をしているこの地球は、物理学者にとってはとても美しいものなのだ。

「簡潔さ」はもっとわかりやすいはずだ。いくつもの式を必要とする法則よりも、1つの式で説明できる法則のほうが、すっきりしていて美しい。たとえば、みなさんご存じアイザック・ニュートンの「万有引力の法則」は、木から落ちるリンゴと地球の周りを回る月を、1つの理論で説明した。これはとても簡潔で美しい法則だ。

最後に「自然な安定感」。これは村山さんもほかの2つより「主観的」と言っているのでピンときづらいかもしれないが、簡単に言えば、奇跡や偶然で成り立つ法則よりも、いつなんどきでも必ず成り立つ法則のほうが美しいということだ。条件が変わったら崩れてしまう法則は美しくない。以上3点、どこから見ても同じで、シンプルで、いつでも成り立つ。物理学者は、こんな物理法則を「美しい」と感じるそうだ。

実は、この美しさは感覚だけの問題ではない。この「高い対称性」「簡潔さ」「自然な安定感」をかねそなえている法則は、そうでない法則よりも、実際に正しい可能性が高いのだそうだ。本書第2章からは、歴史上から今に至る物理学者たちが、「美しい」物理法則を追い求めるさまが解説されている。ニュートンがリンゴと月をつなげたように、バラバラの現象を1つの理論で説明しようと試行錯誤する姿は、まるで勇敢な冒険家のようだ。

物理学者の頭のなかを覗いてみよう

記者の高校時代、数学の先生が問題の解答を「美しい」「エレガントですね」と言ったり、図形の角を指さして「可愛い」と言ったりして、生徒がポカンとしていたのを覚えている。なかには、うちの数学・理科の先生もそうだった! という方もいるのではないだろうか。あの先生が見ていたであろう「美しい」世界を、この本で覗き見ることができた気がする。

専門的な話が多く、なかなか流し読みができる本ではないが、リニアモーターカーの仕組みや、スカイツリーの上と下では時間の流れが違う(!)などといった雑学も随所にちりばめられている。物理学者の頭のなかを知りたい方はぜひ。もちろん、本気で宇宙の物理法則に挑みたい方にもおすすめだ。

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