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心の現代病! 私たちが「何かしていないと不安」な理由

  • 2022.1.11

平日でも週末でも、15分おきに目覚ましをセットして、“本物”の目覚ましが鳴る前にベッドから出る。デート、結婚式、大切な会議の前は、身支度に2時間かける。ゆっくりするのは、体調不良か二日酔いで動けない日だけ。そうでなければ、何かをせずにいられない。時間に取りつかれている。もっと言うと、いつも時間が足りなくてソワソワしている。こう感じている人は意外と多いみたい。アメリカ版ウィメンズヘルスより詳しく見ていこう。

「意義を大事にしている人は、時間を無駄にするという考え自体が苦手です。それが自分の時間でも、人の時間でも」と話すのは、総合診療医で『The Ten Worlds: The New Psychology of Happiness』共著者のアレックス・リッカーマン医学博士。これは専門家が言うところの“時間不安”で、時間の経過に対する強迫観念。時間不安は、異なる形で現れる。休みの日でも遅くまで寝ていることができなかったり、(他に用事があるわけでもないのに)時間が無駄にならざるを得ない状況でストレスを感じたり、何に対しても遅れることを恐れたり。「すべてのことに意義が見い出せてこそ幸せ、何らかの価値が見い出せてこそ成功、という考え方をしていると、ただ時間が過ぎていくような状況で、ものすごく不安になります」とリッカーマン博士。

時間に追い立てられる日々

子供の頃は、お昼ご飯に食べたいものも、生きる目的も分からなかった。それに時間は無限にあった。でも、成人を迎えるまでに私たちの大半は、大切な人を思いがけないタイミングで失ったり、赤ちゃんが1晩で子供になるのを見たりする。学期ごとのスケジュールや決められた休暇もなくなる。そうすると、時間が一瞬で流れ去る貴重なものに見えてくる。だから、大人としての義務が増え、自己成長の名のもとに目標を立てては追い、立てては追いを繰り返しているうちに、1分1秒が大切になってくるのは当然のこと。

臨床心理士のケヴィン・チャップマン博士によると、問題は時間が限られていることじゃない。「時間とうまく付き合えないのは、時間が自由に使えていないという感覚があるからです」。その結果、いつも不安に付きまとわれる。例えば、渋滞に巻き込まれたときや、列に並んでいるときだけでなく、映画を見ながら寝てしまったときでさえ、自分が時間を無駄にしていることしか考えられず、精神的なゆとりがなくなり、あとの1日を平穏に過ごせない。この絶え間ない切迫感は、心身の健康に大きな打撃を与えかねない。

「自分がいましているべきこと、次にするべきこと、先にしておくべきだったことばかりを考えていると、それだけで体内に有害な反応が生じます」とチャップマン博士。慢性的なストレスは、うつ病を始めとする病気のリスクを高めるばかりか、不眠や摂食障害といった問題も引き起こす。これでは仕事もはかどらない(時間に取りつかれている人は、皮肉なことに効率を重視する)。

生産性のパラドックス

1秒も無駄にしまいと頑張った結果、かなり作業がはかどった。だからといって、できるだけ多く予定を詰め込もうとするのは、早まった考え方。「時間不安を抱える人は、あれもこれもやろうとする傾向にあります」とチャップマン博士。「あれもこれもしていれば、その分だけ安心できると思うからです」。でも、実際は逆効果。「やるべきことがありすぎて、時間が足りないという状況に陥りますから」。そして、自分に負担をかけすぎた結果、本当にやるべきことを先送りする。「不安を減らす目的で、ストレスのもとになっていることを後回しにしても、ますます時間が足りなくなって余計不安になるだけです」

リッカーマン博士によると、一般的な不安対策に使われる瞑想も、時間不安の人には効かない。「不安の原因が能率の悪さだと、いまに集中すること、つまり、“何もせずに”座ること自体が無意味に思えてしまいます」。そして、ただ時間が過ぎていくのを感じてやきもきすればするほど、自分が無力に思えてくる。

時限爆弾を解除する

この問題は2つのステップで解決できる。最初のステップは、時間や日にちが足りないという強迫観念を手放すこと。方法としては、「Xに間に合わない」とか「Yをする時間がない」というような“壊滅的”思考パターンを断ち切るだけ。チャップマン博士によると、このような思考パターンは体をおびえさせてしまう。頭がパンクしそうになったら、「手元の時間では1つのことしかできないけれど、やるからにはしっかりやろう」というような現実的かつ肯定的な言葉を使うといい。

そして、時間の経過を見守るのは、それほど悪いことじゃないと認識するのが第2のステップ。「自分がしているすべてのことに意味を持たせてあげましょう」とリッカーマン博士。「たとえ何もしていないように思えても、です」。金曜の夜にベッドの中でネットフリックスを見るのは、激動の1週間に耐えた脳を休めて、元気に月曜日を迎えるため。スーパーのレジに並ぶのは、1週間分の献立を考えて、お母さんに近況報告の電話をするため。見方が少しでも変わったら、それをノートに書き留めて(感謝日記に書いてもいい)。

「FOND」は、“The Fear of Not Doing”(何もしないことに対する恐怖)の略で、自由な時間を非生産的に過ごす(例:用事を済ませる代わりに昼寝をする)ことに後ろめたさを感じる現象。これからは、リラクゼーションも立派な功績と考えて。

「時間に対する見方が変わると、1日の過ごし方も変わります」とリッカーマン博士。今日はワークアウトを頑張って、明日は洗濯物を片付けるだけ、という風に10勝しなくても1勝で喜べるようになる。チャップマン博士によると、“時間をいじめる”メンタルエクササイズも楽しい。「遅れてもクビにならないイベントにわざと遅れて、それがまったく大ごとにならない様子を見届けるエクササイズです」。自分の恐怖に立ち向かえば、その恐怖にコントロールされにくくなる。

※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: Marissa Gainsburg Translation: Ai Igamoto

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