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福岡市美術館『ゴッホ展』レポ

  • 2022.1.9

こんにちは、地域特派員のみずぽんです。私は、大学時代は美術部で水彩画を描いていました。社会人になってからは、絵画教室に通い、絵を基礎から学びました。絵を見るのも描くのも大好きで、この取材に行けることがとても嬉しくて、その嬉しさを記事で表現したいです。前置きが長くなりましたが、「ゴッホ展――響きあう魂 ヘレーネとフィンセント」が福岡市美術館で開幕しました♪ ちょうど10年前の冬、九州国立博物館の「没後120年『ゴッホ展』」に行きました。ゴッホの絵の、今にも動き出しそうな独特な筆到を鮮烈に覚えています。 ゴッホは、画家を志したのが27歳で、37歳で亡くなるまでの約10年の間に、2100点以上の作品を残しています。すごいペースですよね!ゴッホの亡くなった年齢を超えてしまって、私は現在38歳です。短期間に素晴らしい作品をたくさんの後世に残した超人だと、改めて思いました。ゴッホ展の見どころをご紹介します♪ゴッホ作品52点が一堂に会する貴重な機会ですよ! ※場内撮影は禁止されていますが、取材のため特別に許可を得て撮影しています。

出典:リビングふくおか・北九州Web
ヘレーネ・クレラー=ミュラー

ヘレーネは、20世紀初頭にファン・ゴッホの人と作品に魅了され、作品をコレクションし、公開することで、ゴッホの名を世に知らしめた人です。ヘレーネは、38歳から近代美術のコレクションを始めました。あ!今の私と同い歳です。今回の「ゴッホ展」では、ヘレーネが開いたヘレーネ=ミュラー美術館と、ゴッホ美術館のコレクションからゴッホ作品が展示されています。

出典:リビングふくおか・北九州Web

『ヘレーネ・クレラー=ミュラーの肖像』1910年 クレラー=ミュラー美術館所蔵 © Kröller-Müller Museum, Otterlo, The Netherlands

クレラー=ミュラー夫妻が購入したファン・ゴッホ作品一覧です。しかも、いくらで購入したのかまで描かれていますよ。へぇー、こっちの方が高値なんだ!と興味深かったです。

出典:リビングふくおか・北九州Web
ゴッホの歩いた軌跡

今回の「ゴッホ展」では、ゴッホが画家を志してから晩年までの軌跡を辿っていくような、絵の並びになっています。ゴッホはオランダ出身で、画廊に勤務し、伝道師に転職し、27歳で画家を志しました。オランダ、ベルギー、フランスに住み、そこで出会った人や景色から感じたことを絵に表現しました。まだコロナ禍で、なかなか旅行しにくいですが、ゴッホの絵を見ることで、旅行に行った気分にさせてくれます。

まずは素描の練習から

素描の練習は、「絵画で言う筋トレみたいな感じ」と私の通っていた絵画教室の先生は言っていました。“画力”を鍛えようとよく言われました。 ゴッホは素描見本の模写をしたり、都市風景や人物を素描しながら、習熟していきました。

出典:リビングふくおか・北九州Web

『ジャガイモを食べる人々』は油彩画で有名ですが、こちらは、習作をもとに制作された版画です。

出典:リビングふくおか・北九州Web

『ジャガイモを食べる人々』1885年 クレラー=ミュラー美術館所蔵 © Kröller-Müller Museum, Otterlo, The Netherlands

油彩画デビュー

様々な材質を描き分ける訓練として、静物画の制作をしました。素描の訓練後、油彩画に着手。バルビゾン派やハーグ派の画家に倣って、暗い色調を用いています。

出典:リビングふくおか・北九州Web

『リンゴとカボチャのある静物』1885年 クレラー=ミュラー美術館所蔵 © Kröller-Müller Museum, Otterlo, The Netherlands

『黄色い家(通り)』

『黄色い家(通り)』の絵の配色が、個人的には大好きです♪ ゴッホには、芸術家コミュニティを作る夢がありました。そこで、アルルに「黄色い家」を借りて、パリで出会った仲間を呼び、みんなで作品制作を作りたかったのです。

出典:リビングふくおか・北九州Web

『黄色い家(通り)』1888年 ファン・ゴッホ美術館(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)所蔵 © Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)

『種まく人』

『種まく人』は、同時期に活躍した画家・ミレーの『種をまく人』を意識した作品です。ゴッホの作品は、太陽のエネルギーが感じられる、明るい作品になっています。

出典:リビングふくおか・北九州Web

『種まく人』1888年 クレラー=ミュラー美術館所蔵 © Kröller-Müller Museum, Otterlo, The Netherlands

日本の浮世絵に影響を受けた

ゴッホはベルギーやパリで、日本美術に出会い、とても影響を受けました。浮世絵から、鮮やかな色彩と構図を学んだりもしました。ゴッホは来日したことはありませんでしたが、没後、ゴッホの絵が来日して、ゴッホも喜んでるんじゃないかなと想像しています。この『草地の木の幹』という作品は、シンプルなものに本質を見出す日本美術の作品から影響を受けています。

出典:リビングふくおか・北九州Web

『草地の木の幹』18年 クレラー=ミュラー美術館所蔵 © Kröller-Müller Museum, Otterlo, The Netherlands

『青い花瓶の花』

この作品は小物などにプリントされていたり、どこかで見たことがありませんか?手前の花瓶と花々は印象派で、背景は新印象派の点描画法に近いです。印象派はルノワール、新印象派はスーラが有名です。

出典:リビングふくおか・北九州Web

『青い花瓶の花』1887年 クレラー=ミュラー美術館所蔵 © Kröller-Müller Museum, Otterlo, The Netherlands

ルノワールは人物画が得意で、福岡県民お馴染みの、某CMにも起用されていますよね。

出典:リビングふくおか・北九州Web

ルノワール『カフェにて』1877年 クレラー=ミュラー美術館所蔵 © Kröller-Müller Museum, Otterlo, The Netherlands

スーラの作品も展示されていました。スーラは新印象主義の画家で、「分割手法」という描き方を作り上げた人です。「分割手法」は点描画です。視覚の不思議を楽しむことができます♪

出典:リビングふくおか・北九州Web

スーラ『ポール=アン=ベッサンの日曜日』1888年 クレラー=ミュラー美術館所蔵 © Kröller-Müller Museum, Otterlo, The Netherlands

ちなみに、日本画では岩絵の具というものが使われるのですが、鉱物を砕いた石の粒でできています。粒どうしは混ざり合うことがないので、まさに点描画の効果を出せる画材です。

印象派の画家たちの技法

印象派の画家たちは、「視覚混合」という技法を用いています。ゴッホで有名なのは、「筆触分割」と言って、絵の具をパレットの上で混ぜずに、併置させて色を乗せていくことで、明るい表現を可能にします。絵の具はいろんな色を混ぜれば混ぜるほど暗くなってしまいますが、「筆触分割」をすることで、色それぞれの本来の明るさを残すことができます。この技法で描かれている作品も展示されてあるので、絵の中にどんな色が使われているのかを、是非探してみてください♪離れたとき、近づいたとき、それぞれに発見がありますよ。離れて見ると、隣合う色どうしが混じり合っているように見えます。たまに美術館に、絵に対して近づいたり、離れたりして鑑賞している人がいますよね!見方を変えることで、同じ絵が違う絵に見えます。全身で味わうホンモノの美術鑑賞の醍醐味です。

16年ぶりにようこそ日本へ! 〈糸杉〉の傑作『夜のプロヴァンスの田舎道』

『夜のプロヴァンスの田舎道』は、「筆触分割」で描かれていることが分かりやすく、ゴッホの絵の特徴「うねり」を見られる作品です。ゴッホは、親友のゴーギャンと共同生活をはじめようと、アルルに招きました。性格が合わず、2か月で共同生活は破綻し、失意のどん底にあったゴッホは、アルルを離れ、自ら精神病院に入りました。最晩年の作品です。

出典:リビングふくおか・北九州Web

『夜のプロヴァンスの田舎道』1890年 クレラー=ミュラー美術館所蔵 © Kröller-Müller Museum, Otterlo, The Netherlands

『サン=レミの療養院の庭』

こちらの作品は入院していた療養院のお庭です。右下には珍しくサインが入っています。力強くはっきりとした輪郭線が、印象的です。浮世絵にも輪郭線がありますよね、影響を受けたのでしょうか。輪郭線と言えば、私は棟方志功が思い浮かぶのですが、棟方志功は、ゴッホの絵を見て「わだば日本のゴッホになる」と言ったそうです。棟方志功の作品も輪郭線が印象的で、作品に勢いがありますよね。日本美術の影響を受けたゴッホと、ゴッホから影響を受けた棟方志功。西洋と日本美術の融合、興味深いです。

出典:リビングふくおか・北九州Web

『サン=レミの療養院の庭』1889年 クレラー=ミュラー美術館所蔵 © Kröller-Müller Museum, Otterlo, The Netherlands

ミニチュアライフ展2とゴッホ展のコラボ!

現在JR九州ホールで開催中(1/17まで)の「MINIATURE LIFE展 2 ―田中達也 見立ての世界―」では、ゴッホ展とコラボした作品が飾られています。こちらもゴッホ展の前に見に行ってきました。平面が立体になるとこんな感じなんだ!と感激しました。

JR九州ホールでの個展は、こんな感じの展示になっており、撮影OKです。

出典:リビングふくおか・北九州Web

「MINITURE LIFE展2-田中達也 見立ての世界-」 JR九州ホールにて開催中(2022年1月17日まで)

出典:リビングふくおか・北九州Web

福岡市美術館の様子。1/17までパネル作品、1/18からはミニチュア作品を展示します。

「ゴッホ展」満足度★★★★★★★…(∞)

記事を書きながら、まだ興奮しています。実際に足を運んで、是非ゴッホの世界観を味わっていただきたいです♪物販コーナーは、お財布の紐がゆるんでしまう、ゴッホグッズがたくさん待っています!名刺入れ、欲しいなぁ・・・名刺交換のときに、お相手が絵画好きだったら、話が弾むきかっけを作ってくれそうです(笑)

出典:リビングふくおか・北九州Web

「ゴッホ展」の満足度は無限大です(笑)また行きたいです、、、今度は家族といっしょに。娘たちの感想を聞いてみたいです。もっとゴッホを好きになりました♪

展覧会名:ゴッホ展――響きあう魂 ヘレーネとフィンセント 会期:2021年12月23日(木)~2022年2月13日(日) 休館日:月曜日、12月30日(木)~1月1日(土)、1月4日(火)、1月11日(火) ※ただし1月3日(月)、1月10日(月・祝)は開館。※12月28日・29日、1月2日・3日はゴッホ展のみの開催となり、コレクション展示室等は閉室します。開館時間:9:30~17:30(入館は17:00まで) 会場:福岡市美術館 (福岡市中央区大濠公園1-6) 観覧料:一般:2000円 高大生:1300円 小中生:800円 ※本展は、会場内の密集を避けるため、土日祝日、1月2日・3日は日時指定チケットの事前購入を推奨します。

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