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家入レオ「言葉は目に見えないファッション」vol.45 2022年

  • 2022.1.7
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クォーター・ライフ・クライシス。それは、人生の4分の1を過ぎた20代後半〜30代前半のころに訪れがちな、幸福の低迷期を表す言葉だ。26歳の家入レオさんもそれを実感し、揺らいでいる。「自分をごまかさないで、正直に生きたい」家入さん自身が今感じる心の内面を丁寧にすくった連載エッセイ。前回はvol.44戌の日の御参り

vol.45 2022年

新しい1年がはじまった。2022年。干支は虎。デビュー10周年を迎える今年、自分にとって特別な意味を持つ1年になるだろうなと思って、思った後すぐに、いやするんだ、と気を引き締めた。街に出ると、お正月の名残がまだそこにあって後ろ髪を引かれるような気持ちで改札を抜け、停車していた待ち合わせ電車に乗り込んだ。車内にいる会社や学校に行く人たちの表情は独特で。クリスマスからお正月にかけて目白押しだったイベントが終わり、またいつもの日常に戻っていく躊躇いと、戻っていける日常がある安心感。きっと私も同じような顔をしているんだろうな、と窓越しの自分を見つめた。

年の瀬から年初めにかけて、普段中々会えない人たちと顔を合わせていると、世間で言う27歳が今人生のどの辺りに位置しているのか自ずと実感する機会が増える。御節や縁起物が並ぶ食卓を囲みお酒を酌み交わしている時はちゃんと大人の心づもりで座っているからか、いろんな世代の価値観を面白がれたり、昔話に花が咲いたり、身内のちょっとしたお節介も故意におどけて流したり。だけどふとした瞬間に大人であることを自覚すると、心にスーッと風が吹き抜けていく。ミントタブレットを数粒食べた後に、水を飲んでしまった時みたいな清涼感。実際、それは本当に何気ないことで。カメラを向けられ、酔いが回った私は陽気にポーズを取り、スマホ画面を覗き込みながらその写真を見せてもらっていた。何の気なしに「メイクしてないと幼いな」と呟くと、優しい目でその人は「思っている以上にちゃんと年相応だよ」と返してくれて。その優しさにふと我に返り、27って立派な大人だよな、と。私がスーパーやコンビニに行けば当たり前に大人として見られていて、だけどレジで支払いをしている私の中身はあの頃と何も変わってなくて。大丈夫かなって迷子みたいな面持ちでしょんぼりしたあと、それで良いんじゃないかな、と思いはじめている自分に気がついた。生まれ持った性格がどの人にもあって、人との出会いや社会に揉まれることによって、折り合いをつける術を学んでいく。綺麗事ばかり言ってられないし、時には腹を括ることだって必要。だけど無理は永遠には続かない。たった27年生きてみて思うことは、大人になることは子供の頃の自分とかけ離れていくことじゃない、ってこと。変えられるものと変えられないもの。生まれ持った自分をどれくらい活かしていけるか知っている人が私の目指す「大人」なのかもしれないなと思った。2022年は、ひとつでも多く自分の活かし方を知れる大冒険の年にしようと決めた。

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