1. トップ
  2. おでかけ
  3. 東京都現代美術館で開催中!クリスチャン・マークレーの大規模な展覧会

東京都現代美術館で開催中!クリスチャン・マークレーの大規模な展覧会

  • 2022.1.5
  • 959 views

国内では初めての大規模な展覧会「クリスチャン・マークレー トランスレーティング[翻訳する]」が東京都現代美術館で開催中!

出典:シティリビングWeb

展示風景より「アブストラクト・ミュージック」シリーズ(1989-1990)

現代アートと音楽を繋ぐという革新的な試みを続け、世界からその活動を高く評価されている作家クリスチャン・マークレー。国内で初めての大規模な展覧会について、担当学芸員の藪前さんに聞きました。

スーパースター、クリスチャン・マークレー

クリスチャン・マークレーは、1970年代末のニューヨークでターンテーブルを使ったパフォーマンスで音の実験を始め、サウンドアーティストの重要人物として活躍してきましたが、その活動範囲は音楽だけに留まりません。

出典:シティリビングWeb

展示風景より「リサイクルされたレコード」シリーズ(1979-1986)

「クリスチャン・マークレーは、音楽と現代アートという解きほぐせない両者の関係について探究しています。この試みは今までも多くの芸術家が考えてきましたが、実際に数多くの注目すべき作品を通して活躍しているクリスチャン・マークレーは、美術ファンにとってスーパースター的な存在なんです」(藪前さん)

トランスレーティング[翻訳する]とは

今回の展覧会は、レコードやコミック、映像、写真など、幅広い素材を再利用して作品がつくられている点に注目。

「ゼロからつくるのではなく既に有るものを再利用することによって別のものに組み替えているんです。ある感覚が別の感覚に置き換わるということなんです」(藪前さん)

トランスレーティング[翻訳する]とは、そういうことなんですね。

例えば最初の展示室。床には円状にレイアウトされた旧型のデスクトップPCが置かれ、モニターにはリサイクル工場の作業風景の映像が音声とともにくり返し流れています。

工場の作業風景を視ている感覚が、いつの間にかアート作品を視ているという不思議な感覚になっていることに気付きます。

出典:シティリビングWeb

《リサイクリング・サークル》 2005 映像・音響インスタレーション Photo: Osamu Watanabe ©Christian Marclay. Courtesy Gallery Koyanagi, Tokyo.

さらに展示室を囲うように壁面に仕掛けられた長い文字列≪ミクスト・レビューズ≫が目を引きます。

「展覧会全体がひとつの作曲になっていて、円のようにはじまりとおわりが繋がっています。はじめに展示されている≪ミクスト・レビューズ≫が、実はおわりに展示されている≪ミクスト・レビューズ(ジャパニーズ)≫と繋がって作品になっているんです」(藪前さん)

ひとつの作曲という意外性とインパクトに心が揺さぶられる展示の数々。

出典:シティリビングWeb

《フェイス(恐れ)》 2020 コラージュ 30.2 ㎝ × 30.3 ㎝ ©Christian Marclay. Courtesy Gallery Koyanagi, Tokyo.

コラージュの手法によって視覚と聴覚の接点を探り、コミックからオノマトペを切り抜いて叫ぶ顔をイメージした「フェイス」をはじめ、レコードジャケットの音楽指揮者と女性イメージをコラージュした社会風刺的な作風の「ボディ・ミックス」。

中古レコードショップで購入したレコードジャケットをペインティングしてアート作品に仕立てた「アブストラクト・ミュージック」など、ユニークで多彩な作品を楽しめます。

展覧会のみどころ

革新的な作品が集められた展覧会ですが、特に注目したいみどころについて藪前さんにお聞きしました。

「特に視てほしいのが代表作である≪ビデオ・カルテット≫です。登場人物が楽器を演奏したり音をたてる映画のシーンを中心に数百の映像を切り取りコラージュにして、まったく新しい曲につくり換えているんです」(藪前さん)

出典:シティリビングWeb

《サラウンド・サウンズ》 2014-2015 映像インスタレーション Photo: Ben Westoby ©Christian Marclay. Courtesy White Cube, London, and Paula Cooper Gallery, New York.

「もうひとつ、見逃せないのが≪サラウンド・サウンズ≫です。マンガのオノマトペ(活字での音声表現)を使った無音の映像インスタレーションです。

コミックからスキャニングされた文字がアニメーション映像になって観客を囲むように四方の壁面に映像展示されています。音を視て、イメージを聴くという未知の体験ができるんです」(藪前さん)

学芸員からのメッセージ

出典:シティリビングWeb

「現代美術を難しいと考える人が多いと思いますが、知らない人と出合ってみるという気軽な感覚で展覧会を楽しんでほしいです。また、公園に隣接していますしカフェもあります。いろんな人が楽しめるような美術館でありたいと思っています。

当館には展覧会の体験を補完する場所として読んで学べる美術図書室もありますので、ぜひ利用していただければと思います」(藪前さん)

めったにお目に掛かれない貴重な展覧会。この機会をお見逃しなく!

東京都現代美術館

「クリスチャン・マークレー トランスレーティング[翻訳する]」

開催期間:2022年2月23日(水・祝)まで

開館時間:10:00-18:00 (展示室入場は17:30まで)

休館日:毎週月曜日(ただし1月10日、2月21日は開館)、1月11日(火)

入館料:一般1,800円ほか

https://www.mot-art-museum.jp/

プロフィール/SEIJI(小太刀正史)

フリーキュレーター。

MeDEL個人事務所主催。学芸員の目線から美術館の情報を発信する活動を始める。自身もオブジェ作家として活動歴あり。OBJECT東京展入選 FromA The art日本オブジェ部門佳作 日本文化デザイン会議ETDA展参加など。

元記事で読む
の記事をもっとみる