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頼りになるマンガ Vol.4:マンション暮らしでペットを飼えません。

  • 2022.1.4
猫奥 マンガ 単行本

マンション暮らしでペットを飼えません。

『しっぽの声』夏緑/原作 ちくやまきよし/著 杉本 彩/監修

推薦者:兎来栄寿

生き物を飼うことの残酷な現実。

私自身まさに最近人生で初めて自宅で犬を飼い始めたのですが、その前に読んで肝に銘じたのがこの作品。タイトルと表紙はかわいいのですが、内容は「生き物を飼う」ということに付随する残酷な現実がありありと描写されています。

読んでいて辛くなる部分も多いのですが、命と向き合う際に覚悟して知っておかねばならない大事なことでもあります。コロナ禍によって癒やしを求めてペットを飼う人が急増していますが、軽い気持ちで飼い始めた結果悲惨な結末を迎えてしまうケースも多いそうです。

この作品を読んだうえで「自分は絶対に大丈夫」「何としてでもペットを飼いたい」と思える場合は、ペット可の住居への引っ越しも検討すると良いのではないでしょうか。

Information

しっぽの声 マンガ 単行本

『しっぽの声』夏緑/原作 ちくやまきよし/著 杉本 彩/監修

〈しっぽのこえ/ちくやまきよし〉
動物シェルターの天原士狼と獣医師の獅子神太一の2人を主人公に、繁殖業者、生体展示販売、殺処分……というペット流通の闇と命の尊さに迫る、アニマル&ヒューマンドラマ。既刊8巻/ビッグ コミックス(小学館)。

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兎来栄寿

兎来栄寿

とらい・えいす/マンガソムリエ。10歳頃から神保町やまんだらけに通い、ジャンプ作品からトキワ荘・大泉サロン作家まで読み漁った生粋の愛好家。少年青年少女マンガからBL・百合まであらゆるジャンルを愛し布教する。

『性悪猫』やまだ紫/著

推薦者:青柳いづみ

紙の上からでも撫でてしまいたくなります。

動物が生きている時間は、人間のように直線に進むのではなく、円環をなして閉じているそうです。今日は何を食べたとか、明日はどこへ行こうとか、人間がその機能を持ち考えてしまう面倒な次元に動物はいないらしい。なんてうらやましい。

性悪猫はそんなこと関係なく、うれしいと泣いたり、口惜しかったり哀しかったり、恋をして子どもを生んだり、抱いていてよとせがんだり、そして「せけんなど どうでもいいのです お日様いっこ あれば」としたり顔で言ったりする。うらやましいなんて言うと、直接聞いてみたこともないくせにと言い返されてしまいそう。

猫の描写が美しく、紙の上からでも撫でてしまいたくなります。引っ掻かれないように気をつけて!

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性悪猫 マンガ 単行本

『性悪猫』やまだ紫/著

〈せいあくねこ/やまだ・むらさき〉
『COM』でデビューした作者が同誌休刊後『月刊漫画ガロ』に移り本作を発表、初の単行本となった記念碑的作品。登場する猫たちは、性悪女を自認した作者の分身か。表題作ほか3編を収録。貴重な猫のイラストも。全1巻/やまだ紫選集(小学館)。

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青柳いづみ

青柳いづみ

あおやぎ・いづみ/1986年生まれ。俳優。〈マームとジプシー〉〈チェルフィッチュ〉などの舞台出演をメインに、今日マチ子との共著エッセイマンガ『いづみさん』、音楽家・青葉市子とのユニットなど多方面で活躍中。

『猫奥』山村東/著

推薦者:岩下朋世

猫好きなツンデレ主人公と猫の交流にほっこり。

大奥における管理職の一つ、御年寄を務める滝山。実は大の猫好きの彼女だが、生来の厳しい顔つきと内心を明かすのが苦手な性分もあって、「デレ」の姿を素直に見せられない。

そのせいで周囲からはすっかり猫嫌いだと誤解され、今さら猫を飼いたいとも言い出せない。それでもなんとか猫を愛でたい、仲良くなりたい。そんな滝山と大奥の猫たちのすれ違いがちな交流を描くコメディだ。猫もかわいいが、読んでいるとそれ以上に滝山の方がかわいく思えてくるかもしれない。

大奥という外部から隔絶された環境にあって、猫をはじめとしたペットがどれほどの癒やしになるか。猫の愛を求めて右往左往する滝山の姿からは、そのことがつくづく実感されてくるからだ。

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猫奥 マンガ 単行本

『猫奥』山村東/著

〈ねこおく/やまむら・はる〉
江戸城の大奥に暮らす女たちの間で、猫を飼うことが流行した。猫に愛情をたっぷり注ぐ大奥の女。猫を愛する人間の気持ちは今も昔も変わらず、猫は昔も今も変わらず自由にゃ。猫を取り巻く日常ショートコメディ。既刊2巻/モーニングKC(講談社)。

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岩下朋世

岩下朋世

いわした・ほうせい/1978年鹿児島県生まれ。相模女子大学学芸学部メディア情報学科教授。専門はマンガ研究、メディア論。最新著書に『キャラがリアルになるとき 2次元、2.5次元、そのさきのキャラクター論』(青土社)。

『今日のさんぽんた』田岡りき/著

推薦者:近西良昌

犬派のあなたにおすすめする、お散歩マンガ。

私は個人的に犬派。私もマンション暮らしなので犬は飼うことができず、日々犬に触りたくてしょうがないという気持ちを抱えています。そんな叶わぬ思いを紛らわすように、この作品を読んで犬と散歩している気分を味わっているんです。

これは犬との散歩の風景を描いた、ほのぼのとしたストーリー。絵柄も素朴でかわいらしい。散歩中、飼い主はひたすら犬に話しかけています。登場する犬はちょっとドライな性格で、心の声で飼い主に突っ込んだり、呆れたり。その絶妙な掛け合いに思わずくすっと笑ってしまいます。

飼い主の犬への愛情をひしひしと感じますし、長年の付き合いである2人の関係性も羨ましく思います。私と同じ犬派の方に薦めたい一冊です。

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今日のさんぽんた マンガ 単行本

『今日のさんぽんた』田岡りき/著

〈きょうのさんぽんた/たおか・りき〉
柴犬のポン太と飼い主のりえ子の散歩風景を描く。天然ボケのりえ子の発言に、心の中で冷静に突っ込むポン太がかわいい。ゲッサンWEBと作者のTwitterで連載中の、お散歩コメディ。既刊2巻/ゲッサン少年サンデーコミックス(小学館)。

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近西良昌

近西良昌

ちかにし・よしまさ/1979年生まれ。〈三省堂書店海老名店〉(住所:神奈川県海老名市中央1-1-1 4F/TEL:046-234-7161)で20年以上コミックを担当。マンガ大賞選考委員。生涯のベストは森山大輔の『クロノクルセイド』(少年画報社)。

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