アート「Fascination（Jonathan）」Mark Morrisroe：やさしい気持ちになれる、心がふっと温かくなる珠玉の名作選Vol.40

激動の時代にあっても、誰しもに「やさしいとき」は訪れているかもしれないということを感じさせるのが、アーティストの故・マーク・モリスローが23歳だった時の恋人、写真家ジャック・ピアソンとの朝の一幕を撮影した本作。

脱ぎ捨てられた、昨晩のパーティを思い起こさせるピンク色のドレスと、その上にまるでイエス・キリスト像のように腕を真っすぐ伸ばして横たわるピアソンが象徴的なワンシーンだ。傍らで猫が、ピアソンの指に留まる小鳥を狙っているのも、どこか寓話的。

性的マイノリティに対する社会の無知や偏見が強かった時代に撮られた、ひそやかで穏やかなイメージが、何度見返しても胸を打つ。

談・ミヤギフトシ

Information

「Fascination（Jonathan）」Mark Morrisroe

“ボストンスクール”時代を代表するマーク・モリスローが撮影した写真作品。猫から小鳥を守っているような描写には、暴力的な社会に対してアートがいかに安全な場所を提供できるかを提示している。写真集『MARK MORRISROE』（TWIN PALMS PUBLISHERS）収録