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“ダ・ヴィンチ最後の傑作”を巡る、政治的ドキュメンタリーが暴く真実──『ダ・ヴィンチは誰に微笑む』監督インタビュー。

  • 2021.12.27
Photo_ © 2021 Zadig Productions
Photo: © 2021 Zadig Productions

2018年頃、映画中にも登場するサウジアラビアのムハンマド皇太子のドキュメンタリーをTV用に撮ろうと計画し、リサーチを始めました。その過程で、前年に彼がオークションハウスのクリスティーズで、レオナルド・ダ・ヴィンチの最後の傑作とされる「サルバトール・ムンディ」の絵画を約510億円という高額で購入したことを知ったのです。彼についてはイエメンでの戦争や反イランといった政治的な側面にばかりフォーカスしていたので、彼とアートとの繋がりが意外で興味を惹かれました。

『ダ・ヴィンチは誰に微笑む』は、“ダ・ヴィンチ最後の傑作”といわれる絵画を巡るドキュメンタリーではありますが、私自身、政治が専門でアートの専門家ではなく、この作品も、むしろ政治ドキュメンタリーだと感じています。さまざまな取材をした結果、いまだに世界で物議を醸しているサルバトール・ムンディの真贋性については、私個人はダ・ヴィンチの工房が手掛けたことはほぼ間違いないと思っています。ただ、ダ・ヴィンチ自身が描いたかどうかはわからない。問題は、その議論が十分になされる前に、政治的・外交的な問題が絡んでしまったことでしょう。ムハンマド皇太子が科学的、および芸術的な根拠は問わずダ・ヴィンチの作品として扱うよう圧力をかけたことで、逆に真実が隠されてしまった。

日々、フェイクニュースの問題が取り沙汰されますが、「真実」はつくられるもの。この作品では、深い意味でのロジックを浮き彫りにしたかった。この絵に関しても、どのように「真実」がつくられたのかを伝えたかったのです。

Photo_ © 2021 Zadig Productions
Photo: © 2021 Zadig Productions

『ダ・ヴィンチは誰に微笑む』

アントワーヌ・ヴィトキーヌ監督/公開中

アメリカの田舎町のとある家に飾られていた絵画が、約13万円でニューヨークの画商に購入されてから、サウジアラビアの皇太子の手に渡るまでの数奇な旅路を辿るノンフィクション。監督のアントワーヌ・ヴィトキーヌは、フランスの大手TV局の政治ドキュメンタリー作品を主に手掛ける監督&ジャーナリスト。『ヒトラー『わが闘争』がたどった数奇な運命』(2011年/河出書房新社)をはじめ著書も多数。

Interview & Text: Atsuko Tatsuta Editor: Yaka Matsumoto

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