恥ずかしいとの声も…店員のサンタ＆トナカイ「コスプレ」、断れる？断れない？

クリスマスシーズンになると、コンビニやピザ店などの小売店で、店員がサンタクロースやトナカイの「コスプレ」をして接客する場面をよく見ます。コスプレを経験した人の中には、楽しかったという声がある一方、「恥ずかしかった」「嫌とは言えなかった」など、ネガティブな思い出もあるようです。

コスプレ姿で照れくさそうに働いている店員などを見ると「無理にコスプレしなくてもいいのに…」と思ってしまいますが、サンタやトナカイのコスプレを断ることはできないのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

女性のみのコスプレ義務化は違法

Q.コンビニやピザ店では、アルバイトであっても制服で働くケースがほとんどです。自分の好きな服で働きたいというのは許されないのでしょうか。

牧野さん「社員で働くにせよ、アルバイトで働くにせよ、入社時、就業規則や職場のルールで『制服で働く決まりだ』という説明を受けて入社していれば、それに同意した上で働いていることになります。そのため、自分の好きな服で働くことは許されないでしょう」

Q.クリスマス前になると、サンタやトナカイのコスプレをして接客する小売店を見かけますが、これらの衣装も業務上の制服に当たるのでしょうか。

牧野さん「業務上の制服というよりも、正確には『イベント時に要求される販売促進のための特別なコスチューム』に当たると思います。これも入社時、『イベント時には特別なコスチュームを着る』との説明を受けた上で入社していれば、それに同意した上で働いているので、着用を拒否することは難しいでしょう。一方、イベント時に特別なコスチュームを着用することの説明を受けていない場合は、拒否することができると思います。

また、説明があっても、短いスカートや露出の多いような、予想外の派手なコスチュームの場合は着用を拒否することができますし、女性のみにコスチュームを義務付けているのであれば、男女雇用機会均等法違反の可能性が生じますので、拒否できる場合もあります」

Q.着用を拒否できる場合であっても、サンタやトナカイのコスプレをするように何度も促すと違法性はあるのでしょうか。

牧野さん「サンタやトナカイのコスプレであっても、性的に強調する要素があり、本人が嫌がるのに何度も着用を促されれば、『セクハラ』に該当する可能性があります。また、しつこく強要すれば、『パワハラ』に該当する可能性もあり、損害賠償責任が小売店側に生じる可能性があります」

Q.コスプレを断ったところ、通常の制服だと統一感がないとの理由で、コスプレで接客する期間のシフト勤務を外され、結果的に給与が減少した場合、違法性はあるのでしょうか。

牧野さん「『コスプレを断ったから、期間中のシフトを外したよ』と店側から言われて勤務を減らされたなどの事情があれば、『逸失収入（いっしつしゅうにゅう）』を請求できる可能性があります。しかし、シフトを外された理由がコスプレを断ったことに起因するのかどうか、因果関係を証明することが通常は難しいので、小売店側に何か請求することは難しいでしょう」

オトナンサー編集部