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若きシェフを迎えたル・ムーリス、ガストロノミー新時代が始まった。

  • 2021.12.22

リヴォリ通りに面したレストラン、ル・ムーリス・アラン・デュカス。

ここ数年、20~30代の料理人の台頭が目立つパリ。ガストロノミー・レストランにおいてもしかりで、昨年チュイルリー公園に面したホテル内のル・ムーリス・アラン・デュカスも新しく、アモリー・ブウールをシェフに任命した。彼は33歳で、それはアラン・デュカスが3ツ星をとった年齢なのだそうだ。“自分の経験を若い料理人たちに継承してゆく”と語るデュカスを、アモリーは自分にとって素晴らしい模範だと称え、同じく30代のメートル・ドテル、ソムリエとチームを組んでパリ最古の美しきパラス・ホテルの歴史あるレストランを牽引している。まさにガストロノミー新時代の到来といえよう。

初めての食事客もリラックスできる堅苦しすぎないサービス。高級レストランのイメージに結びつく薄くて繊細な磁器に限らず、しっかりとした陶製のお皿も用いられ……料理が変われば、うつわもそれに合うものが選ばれるのだから当然だろう。シェフのアモリーはモナコのアラン・デュカスのレストラン、ルイ15でキャリアをスタート。デュカスが望んでいるのは、アモリーが考える星付きレストランの料理のヴィジョンを自由に表現することだという。アモリーにレストランが任された2020年春は、フランスが外出制限期間に突入していた時である。彼はその期間、厨房でクリック&コレクトのための料理をクリエイトするという高級レストランとして新しい試みにチャレンジした。レストラン再開後、その経験も生かした料理作りをしている。

アモリー・ブウールを中央に挟み、左はホテルの若きシェフ・パティシエのセドリック・グロレとアラン・デュカス。右はメートル・ドテルのオリヴィエ・ビカオとソムリエのガブリエル・ヴェセール。

レストランで提案する料理には、彼が素材に向ける新たな視線が感じられる。星付きレストランだからといって、価格が高かったり見た目が整った素材だけが良い素材ではない。環境に留意する生産者が丹精した素晴らしい素材を重んじる新シェフ。たとえばかつては高級食材とは見なされず、こうしたレストランのテーブルには登場しなかったキャベツ、ビーツといった野菜も彼はためらわずに使う。またソースや添え野菜にローズヒップの酸味やホップの苦味などを活用し、新しい味の世界を開いてくれる。素材の組み合わせもおもしろく、牡蠣にブドウのスライスが乗っていたり、タイの冷製にスモークヨーグルトを添えるなど驚きをおいしくクリエイト。素材を余すことなく使用することもガストロノミー・レストランといえど実践している。プチ・ヴェルサイユ宮殿とも呼びたくなるような空間で、アミューズ・ブーシュに鶏の足の揚げ物?と意外性を感じるところから、アモリー・ブウールが自由に表現する星つきレストランの料理の旅は始まる。美しい空間でおいしい料理、というだけでなく、地球やガストロミーの未来についても考えさせられる機会となる旅だろう。

アミューズ・ブーシュのタルトレット、鶏の足の揚げ物。photos:Maki Manoukian

左: 根菜、クエッチ、リンボクの実。右: ブルターニュ地方ケルマンシーの牡蠣、レーズン、ぶどう汁、トニック。photos:Maki Manoukian

左: オマール・ブルー、ラディッシュ、やまほうれんそう。右: 仔牛“Grain de soie”、グリーンキャベツ、ホップ、スイート&チリペッパー。photos:Maki Manoukian

Le Meurice- Alain Ducasse228, rue de Rivoli75001 Paris営)19:00〜21:30休)土、日www.alainducasse-meurice.com

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