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手軽に大自然の世界へ!山岳旅ライターが選ぶ「低山トラベル」におすすめの山

  • 2021.12.15

日本アルプスなどの高山も好きですが、この頃、標高の低い山ばかり登っているトラベルライターの土庄です。

日本は国土の3分の2が森林で形成される自然豊かな国。地形図にはおよそ1万7000もの山の名前が記載されています。雄大な山脈から郷土の里山、地方の独立峰まで、日本はまさに山の王国です。

そんな豊かなアウトドアフィールドをもつ日本。昨今、密を回避した旅の楽しみ方として、ハイカーの間で「低山トラベル」が注目を集めています。

今回は「低山トラベル」の魅力と、筆者おすすめの山をご紹介したいと思います。ハイキングや登山を趣味にしたい方は必見ですよ。

低山とは

まず「低山」という言葉の解釈について、いろいろ見解はありますが、筆者は2段階に分けています。標高1000メートル未満の山と、標高1000〜1500メートル前後の山です。

岐阜県/納古山(のこさん、標高633メートル)

あくまで印象ではありますが、標高1000メートル未満の山には、郷土の里山といえる山が多くあります。都市部からも近く、3〜4時間で往復できるのが特徴。

本格的な登山装備がなくても、手軽に気持ちのいい自然を味わうことができます。特に登山初心者の人におすすめですよ。

滋賀県・岐阜県/伊吹山(いぶきやま、標高1377メートル)

一方で、標高1000メートルを超えると、また山の趣が変わってきます。地方のトレードマークとなっている独立峰たちは、標高1500メートル前後であることが多いもの。

麓の樹林帯から、山頂周辺の高山帯まで劇的に景色変化をする山も多く、登りごたえと絶景に富んでいます。

低山トラベルの4つの魅力

ここまで"低山とは?"について触れてきましたが、次に「低山トラベル」の魅力をご紹介していきたいと思います。旅好きの方には共感してもらえるポイントも多いのではないでしょうか。

入門のハードルが低い

三重県/入道ヶ岳(にゅうどうがたけ、標高906メートル)

まず第一に大きな魅力が、ハードルの低さでしょう。登山をする……となると、一般的には相応の装備が必要になりますが、標高1000メートル未満の山の多くはスニーカーや普段着で登ることができます。

また、歩行時間が3〜4時間かつ標高差も少ないので、体力的な心配もあまりありません。日帰りできるため、週末にサクッと行けてしまいます。

非日常の世界と絶景を味わえる

愛知県/茶臼山(ちゃうすやま、標高1415メートル)

第二に、山で味わえる美しい景色も魅力です。特に、少し高い標高1500メートル前後の低山では、四季折々の息を呑むほどの絶景に出会えることがあります。

高山植物が咲き乱れる夏、パッチワークのように彩る紅葉、白と青で構成される雪山。日常生活で押し込められた冒険心を解放できる、非日常の世界が広がります。

遊べるフィールドが飛躍的に広がる

愛知県/五井山(ごいさん、標高454メートル)

筆者は、旅行が自由にできなくなった中で、地元の山の魅力に気づかされました。灯台下暗しとなっていた近所にも、素晴らしい低山があり、極上の癒やしを与えてくれたのです。

物理的な制約をネガティブに考えるのでなく、むしろ「いかに楽しめるか?」に目を向ける。そうしたとき、手つかずの自然と低山は可能性の宝庫と言えるでしょう。

旅行と相性がいい

東京都/天上山(てんじょうさん、標高572メートル)

最後に旅好きとして語らずにはいられないのが、旅行との相性の良さ。日帰りでサクッと登れる低山をプラスすることで、旅行に深みが出てきます。

低山はその地域の自然の豊かさを象徴し、歴史文化の土台となっています。低山を組み合わせれば、その地域の魅力を網羅したオリジナルの旅を楽しむことができるのです。

郷土の里山(標高1000メートル以下)

それでは筆者がこれまで登ってきた中で、おすすめの山をいくつかご紹介したいと思います。まずは、郷土の里山(標高1000メートル未満)からは以下の4座です。

房総のマッターホルン「伊予ヶ岳」|千葉県

千葉県/伊予ヶ岳(いよがたけ|標高336メートル)

千葉県は標高1000メートルを超える山がない、ハイキング感覚で楽しめる低山の宝庫。その中で、南房総市の「伊予ヶ岳(いよがたけ|標高336メートル)」は、アスレチックな登山道と山頂の大パノラマが人気の山となっています。

麓の平群天(へぐりてん)神社から往復2時間ほど。登山道もよく整備されています。特に山頂直下のロープワークは、冒険心を刺激してくれるはず!

愛知県の高尾山「猿投山」|愛知県

愛知県/猿投山(さなげやま|標高629メートル)

愛知県の高尾山と言われるほど、登山のメッカになっている「猿投山(さなげやま|標高629メートル)」。麓の猿投神社から歩きやすい登山道が整備され、毎日多くのハイカーで賑わいます。

スタートから杉の古木が趣たっぷり。森林浴が気持ちよく、森へ射しこむ木漏れ日に癒やされます。天気が良ければ、木曽の名峰・御嶽山(標高3067メートル)が望めることも。

琵琶湖トワイライトの「高室山」|滋賀県

滋賀県/高室山(たかむろさん|標高818メートル

琵琶湖の東側に位置する、郷土の里山「高室山(たかむろさん|標高818メートル)。地元ハイカーにしか知られていないマニアックな低山ですが、山頂からは引き込まれるような大パノラマが待っています。

太陽が沈んでいく夕暮れ。トワイライトの琵琶湖とカルスト台地の陰影が、ドラマチックな風景を見せてくれるのです。紅葉最盛期の10月下旬には、燃えるような色彩が山麓に展開します。

円錐形が美しい。薩摩富士「開聞岳」|鹿児島県

鹿児島県/開聞岳(かいもんだけ|標高924メートル)

低山について紹介する際、欠かせない存在が「郷土富士」でしょう。日本全国には富士山のように、見事な円錐形の山容を呈す山々が多く存在します。中でも筆者イチオシが「開聞岳(かいもんだけ|標高924メートル)」。

薩摩富士と言われ、日本百名山にも選出されているこの山は、野趣に富んだ登山道と、枕崎までを見渡す山頂の爽快な大パノラマが見事です。往復3時間という手軽さも嬉しいところ。

絶景が待つ地方名山(標高1500メートル前後まで)

次に、標高1500メートル前後の山まで視野を広げて、特徴的な地方低山をピックアップしていきたいと思います。登りごたえと絶景を求める方は、ぜひ挑戦してみてください。

未知の惑星のような世界観「雌阿寒岳」|北海道

北海道/雌阿寒岳(めあかんだけ|標高1499メートル)

広大なフィールドを誇る北海道の中でおすすめしたい低山が「雌阿寒岳(めあかんだけ|標高1499メートル)」。山麓のオンネトーコース登山口から往復4〜5時間でハイキングを楽しむことができます。

前半は鬱蒼とした樹林帯から始まり、6合目付近で一気に展望がひらけます。火山らしい荒涼な登山道を進み、クライマックスへ。噴火口から阿寒湖を望むパノラマは、まるで惑星に来たかのような気分にさせてくれますよ。

ダイヤモンド富士で有名な「竜ヶ岳」|山梨県

山梨県/竜ヶ岳(りゅうがたけ|標高1485メートル)

低山の宝庫として多くのハイカーに支持されている富士山周辺。富士山の火山活動の影響で形成された山々が多くあります。中でも手軽に登れる山として「竜ヶ岳(りゅうがたけ|標高1485メートル)」がおすすめです。

富士五湖のひとつ、本栖湖からは片道1時間程度で登頂できます。天を衝くようにそびえ立つ「富士山(標高3776メートル)」には思わず声を上げてしまうこと間違いなし!毎年1月1日には、ダイヤモンド富士の初日の出を見に来るハイカーで賑わいます。

秘境・祖谷渓の独立峰「国見山」|徳島県

徳島県/国見山(くにみやま|標高1409メートル)

日本三大秘境のひとつ祖谷渓(いやけい)の屋根を形成しているのが「国見山(くにみやま|標高1409メートル)」です。金比羅神社から始まる登山口と、4合目付近から始まる登山口があり、後者からであれば片道1時間10分ほどで登頂できます。

植生はほとんどが杉、ヒノキの造林ですが、山頂周辺にはブナの原生林も残っています。特に紅葉が美しく、四国山地の盟主・剣山(つるぎさん、標高1955メートル)のパノラマが雄大。下山後は、祖谷温泉でひと風呂浴びるのがおすすめの楽しみ方です。

山陰・孤高の名峰「伯耆大山」|鳥取県

鳥取県/伯耆大山(ほうきだいせん|標高1729メートル)

最後に取り上げたいのが、山陰の名峰「伯耆大山(ほうきだいせん|標高1729メートル)」です。標高1500メートルを超えてしまいますが、日本アルプスの山々と比較して低山と括られることが多い山です。

往復6時間/標高差約1000メートルと、これまでご紹介してきた低山からレベルが1段階上がりますが、同時に登りごたえと出会える絶景指数も上がります。中でも冬の美しさは、多くの登山愛好家を虜にしています。

手軽に非日常を味わえる「低山トラベル」の世界へ

滋賀県/綿向山(わたむきさん|標高1110メートル)

今回は近年トレンドになっている「低山トラベル」の魅力とおすすめの山をご紹介しました。

いつでも好きなところに行けるわけではなくなったことで、むしろ国内を見る視点がよりディープになり、地元や近場の新たな魅力に気づくことができるはず。

ぜひ手軽に楽しめる非日常を求めて、低山を歩いてみてくださいね。きっと拗(こじ)らせていた冒険心の受け皿になってくれるでしょう。

All photos by Yuhei Tonosho

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