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女が支払うのはダメじゃないんじゃない? 世の中の「ダメ」を一刀両断

  • 2021.12.12

女は性欲を表に出してはダメ? 人様に助けてもらうのはダメ? 一日何もしないでいるのはダメ? そんな、「別にダメじゃないのに、なんかダメっぽいことになっている」世の中のあれこれに、イラストレーターで文筆家のはらだ有彩さんが「ダメじゃないんじゃない?」と一石を投じる。それが、エッセイ集『ダメじゃないんじゃないんじゃない』(KADOKAWA)だ。

ぼんやり「ダメ」だと思っていたけれど、実は別にダメじゃないのでは? そんなふうに思うことの一つや二つ、あなたにもあるのではないだろうか。本書ではたとえば、こんなエピソードが紹介されている。

交際相手の男性の誕生日。はらださんは、彼のためにフレンチのレストランを予約した。店には事前に誕生日祝いであることを伝え、ケーキも出してもらった。楽しい食事を終えたのち、はらださんがお会計をお願いすると、店員さんが一瞬ぎょっとした顔を見せる。持ってこられた伝票は、女性であるはらださんではなく、さっき誕生日を祝われたはずの男性の手元に置かれた......。

この人、さっきまでめちゃくちゃ祝われていたのに自腹だと思われてる!? そして私は自分で予約しておきながらタダ飯を食うと思われていた!? はらださんのツッコミが炸裂する。フレンチで女が「おあいそ」するのって、ダメなの? 別にダメじゃないんじゃない?

「ふざけながら怒る」のがミソ

はらださんは、いたって軽妙な口調で、ふざけまじりに問題提起をしていく。性別以外で支払う人を判断してもらう解決策として、片方はお金持ちっぽい服装を、もう片方はラフな服装をしていく......というのも、見た目で扱いを変えるということなので気が引ける。それならいっそ、頭に札束のカチューシャでもつけて行くのは? なんていう妄想まで飛び出す。もちろん冗談だ。

ふざけながら怒るのがはらださんの持ち味だ。肩の力を抜いてラフに、でもズバッと斬り込む痛快さ。オシャレだけどどこかゆるいイラストも、また絶妙だ。あなたが今までダメなんだ......と思っていたことも、はらださんのスタンスで「あれっ、これってダメじゃないんじゃない?」と思えるようになるのではないだろうか。「ダメ」の呪いを軽やかに脱ぎ捨てる、今の時代に必要な一冊に違いない。

もくじ

はじめに

「らしくないからダメ」
フレンチで女が「おあいそ」するのはダメじゃないんじゃない
男の子がコスメと生きるのはダメじゃないんじゃない
女に性欲があるのはダメじゃないんじゃない
フェミニスト(というか人類)が脱毛するのは、あるいは脱毛しないのはダメじゃないんじゃない

「『迷惑』だからダメ」
ベビーカーが「ベビーカー様」なのはダメじゃないんじゃない
産休・育休で仕事に「穴を開ける」のはダメじゃないんじゃない
○○が嫌でも○○を出て行かないのはダメじゃないんじゃない
怒ったときに思わず乱暴な態度と言葉遣いになるのはダメじゃないんじゃない

「そういうものだと決まってるからダメ」
「ハゲ」とか「デブ」とか「ブス」とか「チビ」とかはダメとかダメじゃないとかじゃないんじゃない
ヌードを芸術として受け入れられないのはダメじゃないんじゃない
家と家庭をとにかく第一に考えない生活はダメじゃないんじゃない
助けてもらいながら「それなりの態度」で暮らさないことはダメじゃないんじゃない

「何にもならないからダメ」
やっべ~、今日何にもしてない......のはダメじゃないんじゃない
名前のない関係で生きていくのはダメじゃないんじゃない
女が女と一生一緒に住む予定でいるのはダメじゃないんじゃない
人生のストーリーから外れてみるのはダメじゃないんじゃない

おわりに ふざけながら怒るために

■はらだ有彩(はらだ・ありさ)さんプロフィール
関西出身。テキスト、テキスタイル、イラストを作るテキストレーターとして、2014年にデモニッシュな女の子のためのファッションブランド《mon.you.moyo》を立ち上げる。2018年4月に『日本のヤバい女の子』を刊行、大きく話題を呼ぶ。2019年8月には続編『日本のヤバい女の子 静かなる抵抗』を刊行。ウェブメディアや「文藝」「オール讀物」などでエッセイ・小説を執筆。ほかの著書に『百女百様 街で見かけた女性たち』『女ともだち ガール・ミーツ・ガールから始まる物語』がある。

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