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「MUJI 新宿」でアップサイクル。思い入れをさらに重ねる“金継ぎサービス”

  • 2021.12.9
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割れた陶器やガラスを修復し、新しい命を吹き込む金継ぎ。サステイナブルをはじめとする世の中の物を大切に慈しむというムードの高まりから、日本古来の文化だった金継ぎがいま注目されている。とはいえ、毎回自分で金継ぎをして修復するのは技術的にも金銭的にもわりに合わない。そこで注目したいのが「MUJI 新宿」の金継ぎサービスだ。

お気に入りの器を割ってしまい泣く泣く処分した経験は誰しもあるはず。高価な物でなくても日々愛用している物には少なからず思い入れはある。だからこそ破損したときのダメージは大きい。そんなときに適しているのが日本のサステイナブル文化ともいえる技法、金継ぎだ。ここ数年「物を大事にする」という世の中のムードの高まりから、“壊れた器を漆でつないで直す”という日本古来の修理が注目されている。室町時代からある「金継ぎ」は、割れた陶器や磁器を、漆を使って修繕し、つなぎ目に金粉や銀粉などを蒔いて装飾し修復跡をあえて目立たせる日本の伝統的な修繕技法である。芸術的に価値を見出した金継ぎは、今のアップサイクルの走りともいえる。最近では、都内に金継ぎ教室も増えつつあり、少しずつ認知が広がっている。とはいえ、金継ぎを習いに行くことや、そもそも金継ぎは購入したお皿の何倍ものお金がかかることもあるため、なかなかトライしづらいのも事実であった。

金継ぎサービスの窓口があるのは「MUJI 新宿」の地下1階だ。秋のリニューアルを機に「ReMUJI」という回収した無印良品の衣料品を加工して再販売する取り組みを拡大。ほつれや破れがある規格外の商品を加工して再商品化したアイテムや古着など、他店とは異なるラインナップが面白い。リサイクルを打ち出したフロアの商品群にも圧倒されるが、「MUJI 新宿」が金継ぎサービスをスタートした理由は、陶器は衣類と比べてリサイクルやリユースが難しかったからだという。そこで金継ぎの技術を見つけ、恵比寿の金継ぎ教室「つぐつぐ」と連携してサービスをスタートしたとのことだ。

金継ぎの申し込みは至ってシンプル。サービスカウンターに商品を預けて申込書を記入するだけだ。その際に、漆で繋いだ際の色付けを、食器のデザインや色によって金にするか銀にするかを選べる。それを無印良品が恵比寿にある金継ぎ教室「つぐつぐ」に送り、後日そこから修理の見積もりが届くという流れだ。

今回金継ぎに出したのは、学生時代に購入した陶芸家・鈴木麻起子さんの陶器だ。洗い物の際に落としてしまい、見事にパックリと割れてしまった。実は過去に一度金継ぎ教室に持っていったことがあったが、割れ方が細かいため修繕をするのは難しいと断られた物だ。それでも思い入れがあったため、破片とともに捨てずに取っておいたまま数年経っていた。カウンターで対応してくれた店員の方にも物によっては直せない物もあるといわれたが、後日きたのは修復可能という返事だった。それを聞いただけで、この陶器がどのように変貌を遂げるか期待が高まる。

修理期間は、大体1ヶ月から2ヶ月と難しさや混み具合によっても変わるとのこと。金継ぎは漆が乾くのを待ってから次の作業へ入るため、全工程が終わるのに平均でもそのくらいの時間がかかるそうだ。ましてや今回のように繋ぐ部分が多い場合はその分乾く時間が必要となる。今回は、細かく難易度も高かったが1ヶ月弱で仕上げていただいた。また金額に関しては1カケラ3,000円〜できるため、物によっては購入するより高くはなるが、陶器への思い入れを考えれば決して高い値段ではない。

受付の際にサービスの利用状況を店員さんに聞いたところ、秋からスタートしたばかりでまだまだ知る人ぞ知るサービスであるものの、徐々に利用者が増えているという。高額な陶磁器を修理に出すというよりも、プレゼントやお祝い品など何か思い入れやストーリーのある物を持ち込む方が多いようだ。高価な物や1点物はもちろんのこと、たとえ商品自体に価値がなくてもその人の思い入れによって物の価値が増す。物を長く大事に使うのは素敵なことだ。

後日連絡を受けて陶器を取りに行ったが、その変貌ぶりに驚いた。割れている部分に沿って金が塗られており、花の模様みたいだ。鈴木麻起子さんのターコイズブルーの陶器に凛としたアクセントが加わり、上品な佇まいに仕上がった。まるで新品を購入したかのような満足感だ。もちろん、一度割れてしまっているので、電子レンジや食洗機NGなど強度は落ちるが、再び日常で使える喜びに勝るものはない。大事にしている器が割れてしまっても「ここで修理できる」という場所ができたことが心強かった。

エシカルな消費やサステイナブルな取り組みも、今回のように楽しみや喜びが伴うとグッと身近で気軽に利用できる「MUJI 新宿」のサービスはすごくありがたい。陶器をはじめ、洋服や雑貨もこのような感覚でワンアクションできれば自然とサステイナブルな循環になるはずだ。割れたり欠けたりした陶器がある人は、是非「MUJI 新宿」の地下1階へ駆け込もう。修繕までのプロセスを通して、大切な物を長く使うということの心地よさに気付かされる。

取材協力
MUJI 新宿
https://www.muji.com
つぐつぐ
https://kintsugi-girl.com

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