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"大腸がんの花嫁"が、娘に遺した「愛」の記録

  • 2021.12.9
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遠藤和(のどか)さんがステージ4の大腸がんを宣告されたのは、2018年、21歳のときだった。和さんの夢は、わが子を産み、母として愛情を注いで育てることだった。22歳で結婚式を挙げ、23歳で長女を出産。「私は大丈夫」だと信じ、普通の暮らし、普通の幸せを決してあきらめなかった。

2021年9月、24歳の若さで和さんは亡くなった。亡くなる10日前まで書き続けた日記が、1冊の本になった。『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』(小学館)だ。

和さんは、両親と2人の妹に囲まれて、青森で育った。みんなから「のんちゃん」と呼ばれ、料理とデパコスが大好きで、明るくて、押しが強い一方で、スーパーの店員さんに声もかけられないほど人見知りな一面もあったと、夫の将一さんは語る。

がん宣告当時、交際中だった将一さんは、和さんの報告に「絶対、別れない」と応じた。2人の結婚式の様子は日本テレビ系番組「笑ってコラえて!」内で紹介され、大きな反響を呼んだ。

産むには、治療を止める必要が。それでも

子供を産むには、抗がん剤の投与を一時的に止めなければいけない。和さんの体が危険にさらされることになる。それでも和さんは、どうしても子供が欲しかった。子供を産まなかったら、絶対に後悔する。死んでも死にきれない。和さんはそう言って将一さんを説得した。そして2020年7月、和さんは長女を出産した。

娘と目が合ったら、感極まって涙が出た。
私も、娘も生きてる。本当によかった。
(本文より)

母体の安全を守るため、27週で帝王切開での出産だった。子供の出生時の体重は1000gにも満たなかったが、無事すくすくと育ち、翌年には親子3人揃って1歳の誕生日を祝うことができた。

21年5月の時点で、余命数週間と宣告されていた。和さんは、わが家で家族との日々を送り、「それでも人生でいまが一番しあわせ」と書き綴った。

和さんも将一さんも、あきらめずに治療を続ければ絶対に治ると信じていた。将一さんは、この本を「死ぬことを目前にしたつらいばかりの記録」だとは思っていないと言う。和さんは、がんと闘いながら、ただ生きただけでなく、当たり前の幸せを手放さないように一生懸命に生きたのだ。

本書は、Amazonの闘病記カテゴリでベストセラー1位を獲得(2021年12月6日時点)。多くの人に読まれ、感動を呼んでいる。ママがもうこの世界にいなくても、あなたは望まれて、愛されて生まれてきたのだと伝えたい。これは、和さんが夫と娘に遺した「愛」の記録だ。

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