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悪い接客、まずい料理…客の評価は低くても経営続けられる店、カラクリは?

  • 2021.12.5
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低評価でも経営できる店の秘密は?
低評価でも経営できる店の秘密は?

地域住民からの評判が高かった店が突然、閉店し、「あの店がなぜ閉店?」「品質や接客サービスはよかったのに」と考えさせられるケースがあります。一方で「品質や接客サービスがあまりよくない」「料理がまずい」といった評判にもかかわらず、長年、経営を続けている店もあります。なぜ、客からの評判があまりよくなくても、経営を続けることができるのでしょうか。経営コンサルタントの大庭真一郎さんに聞きました。

それぞれの店に経営方針

Q.小売店や飲食店の中には「品質や接客サービスがあまりよくない」「料理がまずい」といわれながらも、長年、経営し続けている店もあります。なぜ、そのようなことが可能なのでしょうか。一方、客からの評判が高い店が突然、閉店をする理由は。

大庭さん「そもそも、何か特別な性質や構造があって、『客からの評判がよくないのに倒産しない』『客からの評判がよいのに倒産する』という結果に結び付いているわけではありません。それぞれの店(企業)の経営方針に基づいて、『経営状態が芳しくないにもかかわらず、経営を続けていく』『お客さまから愛されているのにもかかわらず、閉店する』という結果を生み出しているのです。

例えば、店に対する客からの評判がよくない状況であっても、店主の『店の経営を続けていきたい』という思いが強い場合、手元の現金資産を取り崩しながら、あるいは資産を担保に金融機関から資金調達をした上で経営を続けているケースがあります。また、本業とは異なるビジネスで利益を得て、本業である店の経営を続けているケースもあります。

反対に、客からの評判がよく、経営が順調であっても、『経営者が高齢で事業承継のめどが立たない』『経営者の体調不良や人手不足が原因で、今の体制で店の営業を続けていくことが難しくなった』『今よりもよい立地に店を移転するチャンスが巡ってきた』などの理由で閉店するケースもあります」

Q.「値段は安いが、生鮮食品や弁当、総菜の質がよくない」という評判のスーパーが長年、経営を続けているケースがあるようです。先述のように、手元の現金資産や、金融機関からの資金調達で経営を続けているケースもあり得ますが、「生鮮食品や総菜の品質がよくない」といわれるのは、スーパーにとって致命的だと思います。なぜ、生き残ることができるのでしょうか。

大庭さん「生鮮食品や弁当、総菜以外の分野で、他のスーパーとの差異化を図り、そこから高収益を得ることで店の経営を続けているケースが考えられます。例えば、水産加工品や畜産品、青果類などの品ぞろえが豊富で、その分野に関して固定客が形成されているようなケースです。

また、食料品以外の分野の商品も取り扱うスーパーであれば、嗜好(しこう)品や雑貨類などに関して他社と差異化を図り、そこから高収益を得ることで店の経営を続けているケースも考えられます。このほか、コンビニエンスストアがコインランドリーを併設して収益を得ることに代表されるような、本来のスーパーのビジネスとは異なるサービスを同時展開し、集客上の相乗効果を得ることで店の経営を継続しているケースもあり得るでしょう」

Q.小売店や飲食店が長年にわたって経営を続けるためには、品質や接客サービスの向上を優先させるべきなのでしょうか。それとも、一定の利益を確保するために、まずはコスト削減を優先すべきなのでしょうか。

大庭さん「『長年にわたって経営を続けていくためには』という論点から、『品質や接客サービスの向上を優先すべきなのか、コストの削減を優先すべきなのか』と問われた場合、『品質や接客サービスの向上を優先すべきである』という答えしか浮かびません。

なぜなら、店が実際に提供する品質や接客サービスが『これだけの対価を支払ったことに対して、この程度の品質や接客サービスが得られることを期待したい』という客の期待を上回ることで、客の満足度が高まり、そのことが、店が客から愛され続ける源泉となるからです。

そのような経営を続けていく中で『より、お客さまに満足いただくための投資をしたい』『従業員に定着してもらうための処遇改善の原資を得るために、無駄なコストの削減を考えたい』というのが、長く経営を続けられる店の考え方です。目先のコスト削減を優先させたことで、品質や接客サービスが低下し、そのことが原因で客離れが発生し、店の経営が破綻してしまった事案は少なくありません」

Q.赤字を出し続けても、なかなか倒産しない店(企業)もあるようですが、なぜ、そのようなことが可能なのでしょうか。

大庭さん「『赤字が発生する』というのは、単年度において、店(企業)の収入である売り上げよりも、支出である費用が上回ったことで利益が得られなかったという状態のことです。一方、『赤字なのに倒産しない店(企業)』は利益が得られなくても、今後も経営を続けていくための資金が手元にある、あるいは今後獲得できる状況にあります。

そのような状況が得られる理由としては、先述のように、現金資産の取り崩しや資金調達、資金を得ることのできる他のビジネスを同時に展開していることなどが考えられます。また、近年は、赤字の店(企業)が他の事業者の傘下(M&A)に入ることで、資金や経営・集客上のノウハウを得て、経営を継続させるケースも増えています」

オトナンサー編集部

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