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「子供を殺してください」という親たちが抱える深すぎる闇

  • 2021.11.12

重度の統合失調症やうつ病、強迫症やパニック症といった精神疾患、不登校や無就労などのひきこもり......精神科医療を必要としながら、適切な対応をとられていない子どもたちがいる。親からの依頼で、そうした子供たちを説得し、医療へとつなげる活動をしている団体がある。

2021年11月9日、トキワ精神保健事務所を主宰する押川剛さんが原作を担当する、『「子供を殺してください」という親たち』(新潮社)の第10巻が発売された。リアリティのある描写が話題となり、今回の第10巻で累計100万部を突破する。

本作では、トキワ精神保健事務所が1996年から行っている「精神障害者移送サービス」での活動を描く。病識のない精神疾患患者を医療につなげられない家族の現実、長引く「ひきこもり」問題など、私たちの身近でも起きている問題が取り上げられている。

全てのエピソードは押川さんが経験してきた「事実」であり、登場人物にもすべてモデルがいる(もちろん、プライバシーに配慮し、固有名詞などは変えている)。

本作は『「子供を殺してください」という親たち』『子供の死を祈る親たち』(新潮文庫)を底本にしているものの、押川さんが漫画用に新たにプロットを書き下ろし、文庫で描ききれなかったエピソードや社会情勢を盛り込んだ。

「命」ギリギリの現場を描く圧倒的リアリティ

現実には、元農林水産省事務次官が長男を殺害した事件や、精神疾患が疑われる無差別殺傷事件、ストーカー殺人など、漫画に出てくるケースを彷彿とさせる事件も相次いでいる。リアリティにこだわる本作品だからこそ、圧倒的なインパクトがある。

押川さんと漫画家の鈴木マサカズさんは、次のようにコメントを寄せている。

原作者:押川剛さん
私は、この漫画の原点となる「精神障害者移送サービス」を始めた約30年前から、精神疾患にまつわる「命」ギリギリの現場を見てきました。当時は「家庭」に隠匿されていたそれも、今では「事件」として顕在化しています。コロナ禍もあり、不可解な事件は今後さらに激増すると予測されます。この風変わりな漫画が多くの読者に支持されているのは、ひとえにそういった日本の現状に対する恐れがあり、真実を知りたいと願う人たちが数多くいることの現れだと思います。

漫画家・鈴木マサカズ氏
この漫画のお話をいただいたのはもう5年前になるでしょうか。直感的に「いま自分が描きたものはこれだ!」と強く感じたことを昨日のことのように思い出します。そしてその思いはいまも変わりません。この漫画に描いてあることは誰にとっても他人ごとではなく紙一重のできごと。彼ら彼女らの目は苦しみや悲しみ、怒りがこもった目です。そのようなことを思いながら今日も粛々と作画をしています。

自称「ひきこもり」の目つきに隠されていたものは...

第45話では、中学校で不登校になり、高校を中退した息子の「ひきこもり」に悩む親からの依頼で、押川さんがケアをする場面が描かれている。

家族だからこそ、我が子が抱える問題をどうすればいいのかわからず、救いの手を求めている人は、身近にもいるかもしれない。他人事では済まないリアリティのあるストーリーから目が離せない。

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