男性が彼女に幻滅する理由とは【ひとみしょうの男ってじつは】

彼女に「幻滅する」という言い方があります。彼が彼女のなんらかの言動に幻滅し、やがてふたりの関係がフェードアウトする……。

今回は、男はなぜ彼女に「幻滅する」のか？について、みなさんと一緒に見ていきたいと思います。

「母のイデア」と比較しているから

すべての男は「母のイデア」を持っています。現実のお母さんを基準に「理想の女性像」を持っているということです。

たとえば、お母さんが不安症で息子の細かいことにすべて口出しをするという場合、息子は「細かいことを言わず、おおらかで、天真爛漫な女性」こそが理想の女性だと考えるようになります。

あるいは、母親が息子のことをかまわない場合、息子は細かく目配り気配りする女性こそ最高の女性だと考えるようになります。

ちなみに、イデアとは、「物事の完全なかたち」のこと、つまり「ちょっと神がかっている概念」のことです。完全なんて、この世に存在しないですから。

憧れと性欲

その母のイデアを、男たちは中学生くらいから具体的に追及し始めます。言い方を換えれば、健全な性欲の目覚めとともに追求しはじめます。

だから、たいていの男はまず憧れから入ります。クラスの、お利口でお嬢っぽくてポニーテイルのあの子に憧れるのです。なぜなら彼女は彼が抱く「母のイデア」に限りなく合致するからです。

がしかし、当然のようにそのお嬢は彼と口をききません。憧れられているというのを肌で感じて知っているその子は、自分に憧れを抱かない「ふつう」の男子と仲良くするからです。

やがて憧れから入った男たちも、物事の匙加減を知り、めでたく彼女ができます。で、別れて、新しい彼女ができて……ときて、今の彼女、つまりあなたと付き合います。

彼があなたに幻滅する理由

彼があなたに幻滅したのなら、それは、あなたのなんらかの言動が、彼が抱く「母のイデア」と合致しなかったからです。

彼女がソファに寝転んで片足を背もたれに上げて、ヨレヨレのショーパンの裾から手を突っ込み、ケツをポリポリ掻いても、幻滅しない男は幻滅しません。「超プライベート感があって最高にええな。しかもちょっとエロいし」と思うだけの男子っていますからね。

でも、反対に、彼女のそういう言動に幻滅する男もいます。それは彼の「母のイデア」に、あなたの言動が合致しなかったからです。彼はたとえば、いつもメイクも洋服もしぐさもしおらしい女子こそが最高だと思っているのです。

彼と「話し合い」にならない理由

彼がどのような母のイデアを持っているかなんて、彼女にはわかりませんね。本人もきっとよくわかっていないはずです。そもそも「おれは母のイデアを持っている」と思っている男なんてほぼ皆無ではないでしょうか。仮にそう意識していたとしても、そのイデアを具体的に言語化できる男は絶対に皆無でしょう。物事の完璧なかたちって、言語化するのがきわめてむずかしいからです。言えてせいぜいイデアの外側のパッケージの部分だけです。その内奥なんて誰も言語化できません。無意識の領域を含むから。

だから、彼女が「わたしのなにに幻滅したのか教えてよ。そしたらそこを直すから」と言っても、彼からこれといった返事が返ってこないのです。彼も自分がなにを考えているのかよくわかっていないから。ただ「なんとなく」「この子じゃないな」と思った、というのが、精一杯言語化できる範囲です。

男女の関係って、言葉にできないことをたくさん含んでいます。なぜなら、男はつねに母のイデアをもとに恋愛しているからです。

ちなみに、女子はどのていど母のイデアをお持ちですか？女子の場合は母ではなく父のイデアですか？

どなたか教えてください。

（ひとみしょう／作家・キルケゴール協会会員）