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絵の中に入り込む新しい芸術鑑賞。「浮世絵劇場 from PARIS」で作品世界へダイブ

  • 2021.11.9

最新技術を駆使し、巨大映像空間へ没入する360°体験型展覧会「浮世絵劇場 from PARIS」が圧巻だと話題だ。2018年から19年にかけてフランスで開催され、200万人を動員した「Dreamed Japan “Images of floating World”」。フランス版の作品を大幅にパワーアップして凱旋帰国を果たした。

チームラボ・NAKEDのようなアートチームの近年の活躍により、日本においてデジタルアートはひとつのカルチャーとして市民権を得ている。だが本展はそれらとは少し違う。
デジタルアートの展覧会は「きれい」や「かっこいい」など、どこか感覚的に楽しむものが多い。空間の楽しさや面白さは、アートというよりエンタメ感が強いからだろうか。
一方「浮世絵劇場 from PARIS」は、新たなアート作品を鑑賞するスタイルといえる。最新技術を駆使して作品の魅力を引き出した映像を360度の巨大なスクリーンで観ることでまるで作品のなかに入り込んだような感覚になる。
12幕からなる映像シーンが、1,100m2を超える大空間に映し出される会場は、圧巻のひとことだ。

© Danny Rose Studio © Kadokawa Culture MuseumHarumari Inc.

映像を手がけているのはダニーローズ・スタジオ。パリを拠点に活動する、デジタルアーティスト・プログラマー・音楽家で構成された多領域にわたるアーティスト集団だ。彼らは、建築、デジタルアート・サウンドスケープデザインといった異なる領域同士の相互作用を探究しながら芸術的アプローチを試みている。フランスのみにとどまらず、オーストラリアやシンガポールなどでも大型のインスタレーションを行なっている。
「Dreamed Japan “Images of floating World”」は2018年にパリで、19年にはプロバンスで開催され、のべ200万人を動員。海外の人々から見た「浮世絵」はモダンでクール……そんなことを改めて日本人が実感する展示だったのだ。

© Danny Rose Studio © Kadokawa Culture MuseumHarumari Inc.

江戸時代、浮世絵1枚の値段は28文、かけ蕎麦一杯と同じだったという。「浮世」とは「現世」のこと。人々の身近な存在であった「浮世絵」は、今でいうInstagramのようなメディアだったのだそう。
確かにそういわれてみれば、綺麗な景色、着飾った有名人、海や季節の花々などいつの世も日本人が“切り取りたい画”は一緒なのかもしれない。
ダニーローズ・スタジオは「浮世絵」にテクノロジーとストーリーを掛け合わせ、12幕の映像をつくり上げた。葛飾北斎や歌川広重らの世界的にも有名な浮世絵が音楽とテクノロジーとかけ合わせられて鑑賞者を包み込む。《富嶽三十六景》《東海道五十三次》のめくるめく世界へと誘われていく。扇が時を刻み、提灯が宙を舞い、桜の花びらが風に揺れ、荒波はリズムにあわせて頭上を駆け巡る。なんとなく日本人なら知っているモチーフだけに、そのダイナミックな動きとシルエット、着物や扇の柄のモダンさなど改めてその芸術性に目がいくだろう。決まった鑑賞位置はないが、そのダイナミックさを体感するには地べたに座り込むスタイルをおすすめしたい。途中、鑑賞する場所を移動したり歩き回ったりしてぜひさまざまな角度から“作品のなか”を愉しんで欲しい。

また、映像空間の奥側の後室では浮世絵の世界を多角的に紹介する展示を開催。映像制作に使用された多数の浮世絵を紹介するとともに、現代においての浮世絵を展示している。
意外と知られていないが、浮世絵は現代でも制作されており、進化をし続けている。

デビッド・ボウイやロックバンド「KISS」と日本のアイドル「ももいろクローバーZ」の浮世絵をはじめ親しみやすい作品も展示され、その制作過程まで鑑賞することができる。
角川武蔵野ミュージアムといえば、フォトジェニックで象徴的な「本棚劇場」が有名だが、ミュージアム全体や隣接する神社など隈研吾が設計した建築も見どころ。老若男女が愉しめる浮世絵劇場とあわせ、周辺の散策も外せない。

浮世絵劇場 from Paris
開催期間:開催中〜2022年4月10日(日)まで
会場:角川武蔵野ミュージアム 1階グランドギャラリー
https://kadcul.com/event/50Harumari Inc.
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