1. トップ
  2. 萩尾望都が「ひきこもり」をテーマに物語を描いたら...

萩尾望都が「ひきこもり」をテーマに物語を描いたら...

  • 2021.11.8

ひきこもりとは何なのか。ひきこもっていると、人はどうなってしまうのか。「ひきこもり」をテーマに、小説、エッセイ、昔話から漫画までを幅広くおさめた異色のアンソロジーがある。『ひきこもり図書館 部屋から出られない人のための12の物語』(毎日新聞出版)だ。

編者の頭木弘樹さんは、20歳のときに難病を患い、13年間の闘病生活を送った。その「ひきこもり」生活で、頭木さんはいろいろな本を読み、ひきこもりを描いた作品たちに出合った。頭木さんがひきこもりながら感じた、切実だけれどもやもやと言葉にできない思いが、収録12作品には見事に描かれているという。

この図書館の目的は、ひきこもりを肯定することでも、否定することでもありません。ただ、ひきこもることで、人はさまざまなことに気づきます。心にも身体にもさまざまな変化が起きます。
そのことを文学は見逃さずに描いています。
(「ひきこもり図書館 館長からのご挨拶」より)

12の作品は、時代も国籍も、ひきこもりのバリエーションも実にさまざま。根っからのひきこもり体質だった、『変身』フランツ・カフカのひきこもり名言集。岡山県に残っている、「鬼退治に行かない」桃太郎伝説。『ポーの一族』の萩尾望都さんが描く、感覚遮断「ひきこもり実験」SF。そして、推理作家エドガー・アラン・ポーの「赤い死の仮面」は、コロナ禍の現代にも重なる、感染症予防ひきこもりホラーだ。

外出自粛がさかんに叫ばれた時期には、ひきこもり生活を経験した方も多いのではないだろうか。家族以外の人にまったく会わない、外の空気も吸わない、毎日見慣れた部屋の壁。そんな生活の中であなたが感じた何かが、『ひきこもり図書館』のどこかにひっそりと書かれているかもしれない。

こんな時代だからこそ、「ひきこもり文学」の扉をノックしてみてはいかがだろうか。

■目次
ひきこもり図書館 館長からのご挨拶
・萩原朔太郎「死なない蛸」
・フランツ・カフカ「ひきこもり名言集」
・立石憲利「桃太郎――岡山県新見市」
・星新一「凍った時間」
・エドガー・アラン・ポー「赤い死の仮面」
・萩原朔太郎「病床生活からの一発見」
・梶尾真治「フランケンシュタインの方程式」
・宇野浩二「屋根裏の法学士」
・ハン・ガン「私の女の実」
・ロバート・シェクリイ「静かな水のほとりで」
・萩尾望都「スロー・ダウン」
・頭木弘樹「ひきこもらなかったせいで、ひどいめにあう話」(上田秋成「吉備津の釜」)
あとがきと作品解説

元記事で読む
の記事をもっとみる