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自己成長を促すために「気持ちをシラフにする」方法

  • 2021.11.4

自助系のインスタグラムを見ていると、自分の感情を把握して、それに浸ることの重要性を訴える投稿が必ず出てくる。

確かに励まされるけれど、そういった投稿は感情を否定しないことにフォーカスしすぎな感もある。「自分の気持ちを尊重するのは大事なことです」と話すのは、著書に『My Self: An Autobiography of Survival』を持つ社会福祉士のケリー・キトリー。「でも、そのことばかり考えていると、不安から抜け出せなくなることもあります」

あなたにも、あれこれと思いを巡らせ、感情(特にネガティブな感情)を分析した経験があるかもしれない。これはいたって普通であると同時に有害なこと。自分の行動を決める上で、感情だけを頼りにするのはオススメできない。じゃあ、感情に主導権を握らせることなく、自分の気持ちを尊重するには? その答えは、気持ちを“シラフに”するというもの。

このコンセプトは、薬物に頼ることなく自らの感情を管理するためのメソッドとして、日本でもAAとして知られる米国発のアルコール依存者更生会が生み出したもの。現在では、さまざまな組織がAAを起源とした12ステップ・プログラムを取り入れている。

これは誰にでも使えるメソッド。ACOA(AAとは無関係で、アルコール依存症者に育てられて成人した子どもたちの会)メンバーのオリーブ・Gにとっても、気持ちをシラフにすることが重要な自己成長戦略となっている。

「アルコール依存者に育てられた子どもたちは、もともと痛みに“依存”していると教わりました。それが小さい頃から慣れ親しんだ感情なのです」とオリーブ。「だから、何か悪いことがあると、恐怖、トラウマ、恥辱といった“インナー(自分の中の)ドラッグストア”へ向かいます。アルコール依存者が、お酒を買いに行くの同じです」

オリーブは気持ちをシラフにすることで、このインナードラッグストアから自分自身を遠ざけている。これは、感情を健全に処理して、負のスパイラルにはまらないようにする上でも有効。このメソッドを日常に役立てる具体的な方法を、アメリカ版ウィメンズヘルスから見ていこう。

ニュートラルな状態を見つける

まずは、自分が一番自分らしく感じられるときのマインドセット(ベースとなるマインドセット)を把握すること。叫んだり罵ったりしてしまうほどの強い感情(怒りなど)や、何も手につかなくなるほどの感情が現れたら、日記に書き留めて、その感情をもたらした原因を考えよう。

「気持ちがシラフになると、本当にパワフルで自由な感じがします。パートナーの前でかんしゃくを起こすことはなくなりましたし、クライアントのために全力で働けるようになりました。現在はコーチとして、人々の体内にある恐怖、トラウマ、恥辱を見つける手助けをしています。もう自分のエゴに主導権を握られることはありません」。

日記をもとに振り返ると、刺激に対する感情的な反応のパターンが見えてくる。それが分かれば、何かがおかしい(ストレスのせいで感情が高ぶっている、体やホルモンが変化している、過去のトラウマが顔を出している)ことも察知しやすい。

自分がニュートラルな状態にない、というのは価値ある情報。それをもとに次のステップに取り組んで、刺激に“反応”するのではなく“対応”できるニュートラルな状態を取り戻そう。

健全に気を散らす

フラストレーションや悲しみといった感情の波に飲まれると、じっとしていられなくなる。それはそれで大丈夫。その感情や感情の出所をずっと無視するわけにはいかないけれど、その瞬間のエネルギーを他に向けて頭の中をスッキリさせれば、より落ち着いた状態で感情に向き合える。

「泣くのが辛すぎるなら、その逆の行動を取り、何か滑稽なことをしてみましょう」と話すのは、バーチャルヘルスケアサービス『Teledoc』臨床心理士のデスリーン・ダドリー博士。SNSでクスッと笑える投稿を探せば、一時的に気分は上がる。それがダメなら、信頼のおける友達と話したり、軽快な音楽を聴いたり、散歩をしたり、HIITをしたり、熱いシャワーを浴びたりしてみて。その結果、ニュートラルな状態に戻れれば理想的。

感情に身を委ねていい

気を散らしても、精神的に一杯いっぱいな感じや気分の落ち込みが消えない場合は、良し悪しを判断せずに、その感情に浸ってみよう。大切な人を失ったり、会社をクビになったり、恋人と別れたりといったストレスフルなシーンでは、その感情に浸るのが絶対不可欠。

その状況を乗り切るためには、いまが辛い時期であり、しばらくはバランスの取りようがないことを認めるしかないときもある。ただし、キトリーいわく、自分の感情に反応してしまうことを認める一方で、健全な気晴らしにいそしむ時間をつくることが極めて重要。

「私にとって気持ちをシラフにするということは、『考えていることを考え、感じていることを感じ、自分自身が満足できる行動を取る』ということです。直接会って話せない友達に伝えることから、お金の使い方まで、何に関しても、決断を下す前には自分のオプションを出し切ります。自分の決断に自信がないときはなおさらです。出会い系アプリで交際を求めていない男性が表示されたら、『私からアプローチしたら、どうなる? 自分が好きになれるだろうか? 自分が惨めに思えるだろうか?』と自分自身に問いかけます」。

薬物、アルコール、寝すぎ、有毒な人間関係といった不健全な対処メカニズムに走るのではなく、不快な感情と静かに思慮深く向き合うのは、気持ちをシラフにする上で大事な要素。いまの気持ちはいつか過ぎ去り、そのうちもっと生産的な方法でニュートラルな自分に戻れるという信念を貫いて。

見方を変える

感情を処理する能力が高くなり、健全な対処メカニズムが身に付いてきたら、“認知の再構築”というメソッドを活用しよう。その出来事を他者の目で見て、自分とは違う考え方や何らかの教訓を探してみると、思わぬ発見がある。

以下は、あなたに試してほしいキトリーのメソッド。紙に横線を1本引いて、線の左側をA地点とする。このA地点は、その出来事に関する気持ちの掃きだめ。

横線の右側にあるB地点では「その出来事を若かりし頃の自分に話している未来の自分の姿を想像しましょう」。困難との向き合い方を若かりし頃の自分に教えるとすれば、未来の自分は何を言うでしょう? その内容を書き出せば、いまの自分に対して思いやりのある見方が生まれるかもしれない。最初のうちは、年を取った自分のアドバイスなど当てにならないと思うかもしれないけれど、何度か繰り返しているうちに、自分が成長していることに気が付けるようになる。

現実の作業には時間がかかる

方法を間違うと、気持ちをシラフにするための練習が“スピリチュアルな迂回”になってしまう。この言葉を生み出した精神療法士のジョン・ウェルウッドによると、スピリチュアルな迂回とは「スピリチュアルな考え方や手法を用いて感情的に“やり残した仕事”を回避し、“悟り”というの名のもとに、自分の脆弱感を強めたり、基本的なニーズや気持ち、発達課題を軽視したりすることを指す」

「必要なのは愛だけ」とか「ヨガで人生が変わった―ただ練習を続ければいいだけ」というようなアドバイスは、スピリチュアルな迂回の典型。著書に『Recovering Spirituality: Achieving Emotional Sobriety in Your Spiritual Practice』を持つ心理学者のイングリッド・クレイトンも、「最近は、長時間の瞑想をして、ヨガをして、グリーンジュースさえ飲んでいれば、人間のありようが変わるというマーケティング戦略がありますからね」と話す。

残念ながら、そんなことで人間のありようは変わらない。「スピリチュアルな経験をして、サポートを受けつつも、感情に向き合わなければなりません」と話すのは、リカバリー・ライフコーチのシャリ・ハンプトン。「その作業を避けることはできません」。自分のしていることや人に言われていることが物事を単純化しすぎていると感じたら、あなたはおそらく気持ちをシラフにしているのではなく、スピリチュアルな迂回をしているということ。

※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: Mara Santilli Translation: Ai Igamoto

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