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ファッションとテクノロジーが融合する未来を探して。DECODED FASHION TOKYO SUMMITレポート。【Part 2】

  • 2015.7.24
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リズ(手前)をモデレーターに貴重な意見の交換が行われた。左から、SAPのクリストフ・シュローダー氏、ハイブリス・ソフトウェアのカサンドラ・ジラール氏、三越伊勢丹の北川竜也氏。

【Part 1】はこちらから。

2012年にスタートしたデコーデッド・ファッションが東京で初開催。ファッションとリテールの革新という課題において、新しいアイディアを提案することを目的とし、国内外から注目を集めたイベントの徹底レポート後半編。

16:50「SAPプレゼンツ:リテールのためのテクノロジー」

ファッションブランドやリテーラーがテクノロジーを使いこなすためにはどうすべきなのか。リズのモデレートで、ハイブリス・ソフトウェアのカサンドラ・ジラール氏、SAPのクリストフ・シュローダー氏、三越伊勢丹の北川竜也氏が語り合った。

話題は店舗、カタログ、パソコン、スマホなど、顧客との接点になる全てのチャネルをシームレスに融合させる「オムニチャネル」に。顧客に利便性を提供し、一番摩擦のないかたちでブランドを体験してもらうのが目的だ。

「三越伊勢丹は実店舗が重要であり、非常に強力なアナログバワーがあります。特別な時間を過ごしてもらうための、そして観光客の目的地となるような場所をめざしたい。しかし、ウェブサイトが依然国内向けに留まっているなど、デジタル戦略の必要は感じています」と語る北川氏。ファッションにおけるデジタル戦略・施策を提案しているクリストフ氏はデータの重要性を強調した。「データを整理し、それをもとにテストしてみる。うまくいかなければやめ、うまくいけば増幅していけばいいのです」。データシステムの専門家カサンドラ氏はデジタル戦略によるグローバル化の必要を説きつつも、「アイデンティティを持ち続けることは重要です。日本のすばらしい“おもてなし”を使っていくことは有効ではあるとは思います」とアドバイス。それを受けてリズはメンズウェアのオンラインストア「ボノボス」を紹介。修理・交換・クレーム対応などのサービスを絶賛し、オンライン上での「おもてなし」の可能性を訴えた。

17:20「インタビュー:リテールの顔を変える」

ファッションビジネスをクリエイティブに分析し、コンテンツをキュレーションしているメディア「BoF」創始者のイムラン・アーメド氏。これまで多くのファッション業界の重要人物を取材しているが、今回大西洋三越伊勢丹ホールディングス代表取締役社長に公開インタビューを行なった。

なぜ今デジタル戦略を手がけようとしているのか、というイムラン氏の質問に対し、大西社長はEコマースの猛威に触れ、「早く購入したい、お店に行かずにショッピングがしたい、というニーズに応えられていませんでした。デジタル戦略はここ2、3年の最優先事項だと考えています」と答えた。しかし1対1の接客や気分が上がるような空間演出の重要性も強調し、「すべてを効率化してしまうのは適切だとは思いません。リアルとデジタルのバランスのよい融合をめざしたいと思っています」と見解を語った。さらにイムラン氏はもっとクールジャパンを世界中に訴えるべきでは、と問いかけたが、それに対してはマレーシアやパリに「日本のいいものだけを展開する店舗」をオープンさせることを表明、いずれは欧米にファッションに特化して出店したいという展望も語った。

パートナー企業による、ファッション×テクノロジーのプレゼンテーション。

「展示エキスポ」では、数々のテック企業がファッションに活用できるテクノロジーをファッション関係者に提案した。

「メイド イン ジャパン」にこだわるブランド「UNITED TOKYO」によるデモ店舗ではコミュニケーションロボットのPepperが接客。客をスキャンして年齢性別サイズを予測、やりとりを重ねて好みを絞り込み、最終的には客に合う商品を提案する。目的の商品まで誘導してくれるハンドリーダー、商品をカウンターに置くだけで瞬時に金額が表示される会計システム、スマートフォンにレシートを送信、購入したアイテムを蓄積し、お薦めのコーディネートが表示されるアプリなども合わせて紹介された。

また、別のブースでは撮影した動画の洋服をタッチパネルで着せ替えし商品を検討できるテクノロジー、展示会でのオーダーをデータ化できるシステム、ファッションとしてロボットを着る試みなども見られた。

「コンペティション優勝者発表&クロージングリマークス」

イベントも終盤を迎え、クライマックスとなるのはスタートアップ・コンペティションの受賞者の発表。今回は3位までが発表された。

3位は「どこにでもあるカメラをイノベーティブなアイデアで顔認識ソフトに組み替え、百貨店という場所でいろいろなものに改革を起こしていくのは間違いない」(北田淳コンデナストジャパン社長)という理由で「ABEJA」が受賞。そして『WIRED』日本版で紹介されるという副賞がついた。

2位は鈴木正史『GQ JAPAN』編集長の「想像力が刺激された」というコメントと共に「ELECTROLOOM」の名が呼ばれた。同誌のウェブサイトで紹介される他、「彩り祭」で優勝者と共に展示スペースが与えられることになった。

そして栄えある優勝者は「memomi」。三越伊勢丹が一番重視していた「カスタマーエクスペリエンスをどれだけ変えられるか」という点で最も優れていた、というのが受賞理由だ。

大西社長による会の盛況に対する喜びと感謝の辞があり、来年の開催への期待を込めながらデコーデッド・ファッションは盛況のうちに閉会した。

18:45「カクテルパーティ」

閉会後はカクテルパーティが行なわれ、イベント参加者がペリエ ジュエのシャンパーニュ「GRAND BRUT」を手に歓談した。ファッション企業、テック企業、スタートアップ企業のエグゼクティブが一同に介し、精力的に情報交換する姿も。

テクノロジー活用に遅れをとっていることを自覚しながらも、どのようなデジタル戦略が可能なのかわからず足踏みをしていたファッション関係者も多かったはず。彼らにとって今回のサミットは、目から鱗の体験の連続であっただろう。スタートアップの熱気も相俟って、日本のファッション業界に活気をもたらした1日だったことは間違いない。これからファッション企業がどのような変化を遂げ、グローバルに影響力を強めていけるのか、その変化を楽しみにせずにはいられない。

参照元:VOGUE JAPAN

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