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小林エリカの文房具トラベラー vol.14「鉛筆」

  • 2021.10.26
出典 andpremium.jp
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鉛筆に金色の文字で自分の名前が刻まれているのを見るのが、子どもの頃好きだった。あぁ、これぞ私の鉛筆!って感じがするし、何しろ金の箔押しっていうのがまた高級感があるではないか。
観光地の土産物店で大概見かけるのは鉛筆である。まあ、お値段も安いし、旅先から持ち帰るにも、オリジナルを作るにもお手頃よね、という感覚はどうやら万国共通らしい。ところでそもそも、三十過ぎた大人がそれほど鉛筆って使うものなのか!?という疑問はさておき、私はそれをどうしても手にせずにはいられない。はっきりいってダサイに分類されるようなデザインであっても、ほら、この街へ来た記念に……なんてポストカードを手にするノリで、ついついそれを握りしめ大量に購入してしまう。それを友人に意気揚々とプレゼントしたりするから、実は案外これって迷惑というもの!?と最近気づいたがやめられない。
考えてみればしかしそれは、はじめて自分の名前が刻まれた鉛筆の想い出と結びつき、その旅先の光景までみんな自分のものにしたいという儚い夢なのやも知れぬ。

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上/精神分析の巨匠フロイトの語句“Aufarbeitung”(過去の消化/清算の意味)入り。中/画家クリムトが結成した新芸術団体ウィーン分離派“secession”のゴールド鉛筆。下/私も〈伊東屋〉に発注。お名入れ200円、謹賀新年!

edit : Kisae Nomura
※この記事は、No.15 2015年1月号「&STATIONERY」に掲載されたものです。

&STATIONERY

作家・マンガ家 小林 エリカ
出典 andpremium.jp

シャーロック・ホームズ翻訳家の父と練馬区ヴィクトリア町育ちの四姉妹を描いた『最後の挨拶 His Last Bow』(講談社)発売中。2021年夏、はじめての絵本『わたしは しなない おんなのこ』(岩崎書店)が発売。

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