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大きくなったなぁと思う時

  • 2021.10.25

三度目の正直とはこのこと。

息子が5年生の時、期待されていた初の宿泊行事がコロナ蔓延で中止となりました。6年生になり行き先が変わっても、予定された夏には実施されず。もはやこのまま卒業かと思われていました。けれども、やっと、行くことがでたのです。日光へ。

行く前は、すったもんだでした。

まず、緊急事態宣言明けの10月に決行だなんて、強気だなと正直思いました。修学旅行は集団行動です。もし感染してしまったら……。そんな心配から、参加の可否の権限はこちらにあるので、息子とパパと私の3人で膝を突き合わせて話し合いました。行く行かないだけでなく、1日だけ参加という中途半端な案も過り。意見が二転三転したのちに、結局、最終的には息子が判断しました。参加するんだと。

そうと決まれば、支度があります。これまた一苦労でした。

普段の家族旅行の場合、万が一なにか足りなくても現地で調達すれば良いし、親と一緒だから子どもが困っても解決してあげられる、と思っているのでパッキングも楽。あれこれ悩まずに済んでいました。

けれども、今回ばかりは忘れ物があっては大変。親としての責任重大で、結局、出発前の数日は準備以外のことにあまり頭が回りませんでした。それに恒例の準備に加えて、健康管理カードに1週間前から体温やら睡眠時間やら何やらかやら記入せねばならず、さらには家で実施する事前のPCR検査もありました。もちろん検査をする前に、やり方が記されたお手紙も読まねばならず、はてさてそのお手紙はどこへやっただろうかなどと探し回ることから始まる……。そんなありさまで、私はかなりテンパってました。

そして、ボストンバックの中身をどう整えようかという悩みもありました。

宿泊施設に着いてから、やれ「靴下がない」「上着がない」、その他マスク、体温計、洗濯バサミなどが「ない、ない」と騒ぐことのないようにせねば。

サイトで検索すると、1日ごとの洋服をセットにして袋に入れておくと良いとありました。

でもママ友に聞くと、「幼稚園生じゃないんだから」という意見も。悩んだ末、1日ごとではなく種類ごとにまとめ、袋の中身が見えやすいよう透明ジップロックにまとめていれることにしました。

そして出発前夜に息子と中身を確認。

「はい、この袋は下着」「このセットは細かいもの。ね、わかった?」「これは、レク用のトランプ類。なくさないでよ」……。

行った先で自分で必要なものが取り出せさえできれば、それでいいわ。戻ってきてからのことは諦めよう。

私はそう自分に言い聞かせ、2泊3日後の中の状態に覚悟をしました。

きっとボストンバックの中は、ぐちゃぐちゃのどろどろで帰ってくるでしょう。着たものもきれいなものも、一緒くた。しぶしぶ私が洗濯機に全部を放り込むのが関の山。

さて、訪れた帰りの日。やはりとても楽しかったようで、息子のお土産話しも一入。ああ、行かせて良かったと心から思いました。そして、どっこいしょと重い腰をあげるように、思い切って聞いてみました。

「それで? 中身は? どうせぐちゃぐちゃなんでしょう?」 すると思わぬ返事が。

「いや? そうでもないと思うけど?」

どれどれ、と私はボストンバックのファスナーを開けると、なんと、すごい!

私が準備した状態とほとんど変わらず。綺麗にジップロックの袋が並んでおり、汚れた衣類はレジ袋に、それと分かるようにまとめてありました。さらに、そのレジ袋のまとまりを洗濯カゴにいれようとしたら、なんとなんと汚れた衣類まできれいに畳んであるではないですか!

ありえないわ。女子に手伝ってもらうなんてことはないだろうから、きっと先生の指導がよかったんだわ。

それとも、モンテッソーリ教育かしら。あの保育園時代に散々衣類を畳んだから、その経験が親不在の「危機的な」時に生かされたということのなのかも? あれこれ考えてみましたが、わかりません。ともあれ、うちの子も大きくなったなぁと思ったひとときでした。

大きくなるということは、単純に背が伸びるということではないですよね。

そんな「成長」を描いた作品を選んでみました。

『おおきくなるっていうことは』(中川ひろたか:文、村上康成:絵/童心社)

私が小さかった頃、久しぶりに親戚に会うたびに「大きくなったね」と言われて、なんて大人はあたりまえのことを言うのだろうと思っていました。でも、単純に背が伸びたねと言いたかっただけではなかったのでしょうね。一言に言っても、「大きくなるっていうことは」どんなことでしょう? 洋服が小さくなること、新しい歯が生えてくること、あんまり泣かなくなったり、大丈夫かどうか考えられるようになったりすることなど、いろいろあります。子どもと一緒にゆっくり、じっくり読んでみてください。一歩一歩成長してゆく過程を噛み締めながら、未来へと羽ばたかせてあげたくなる作品。入園・入学の際にも、読み聞かせで人気です(3歳から)。

『おとなになる日』(シャーロット・ゾロトウ:文、ルース・ロビンス:絵/童話屋)

ティモシーは、お兄さんのジョンのあとをくっついて離れません。でもお兄さんにしてみれば、ちっとも遊び相手にならず、足でまといなだけです。本を読んでいれば邪魔をしにくるし、洋服を着るにもご飯を食べるにも「ぼくもぼくも」とうるさいのです。そんなある日、ジョンが学校から帰ってみてみるといつものようにティモシーが飛び出して来るかと思えば……。いったいどうしたのでしょう。そしてジョンがお兄さんとして取った行動とは。大きな成長には、なにも一大イベントが必要なわけではありません。成長のための養分は、日々の積み重ねの中に、じつに多く含まれているものです。シンプルながら子どもの成長を見事にとらえた展開に、心温まらないではいられません。幼児から楽しめます。

『おおきな木』(シェル•シルヴァスタイン:文/あすなろ書房)世界各地で読み継がれたロングセラーの、村上春樹さんによる新訳です。

少年と、大好きな「おおきな木」との一生に渡る深い友情物語。少年は木によじ登ったり隠れんぼをして遊び、実がなれば頬張り、木陰で休みもします。やがて恋人ができるとその2人でもたれかかったり、旅がしたくなったら材木をわけてもらったりもします。たくさんのものを与えてくれる木は、親のような存在ともとれるかもしれません。考え深い詩のような作品ですが、シンプルな言葉と絵は、小さな子どももとりこになるようです。すべての世代に、歳を重ねることの意味を心にきざんでくれるでしょう。

(Anne)

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