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「猫と暮らす」はしあわせ?ペットとの日々で得られる心身の幸福度

  • 2021.10.21
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おうち時間が増えた今、かつてない高まりを見せているペット需要。愛らしい動物との暮らしによって人間の幸福度が上がるといわれている。ただ「可愛くて、癒される」だけじゃないペットとの暮らしは、私たちに何をもたらしてくれるのか。データからその秘密をひもとこう。

ペットとの暮らしがココロとカラダの健康に

まず、ペットと暮らすことでのポジティブな効果として、散歩やエサやりといったお世話が必要になるため、飼い主の生活サイクルがととのうことが予想できる。その結果、身体的、精神的な健康につながるともいえるだろう。

一般社団法人ペットフード協会が2015年に行った「全国犬猫飼育実態調査」によると、ペットを飼うことで飼い主自身が感じている“効用”は下記の通りだ。

半数以上が「生活に潤いや安らぎを実感できるようになった」「孤独感を感じなくなった」と回答している。愛くるしい姿に癒されるだけでなく、ペットを迎えて生活が変化・安定することで、気持ちにハリが生まれるのだろう。

また、2007年にドイツとオーストラリアで行われた調査では、ペットの飼い主はペットを飼っていない人よりも1年間に通院する頻度が15%少ない結果となったという。ペットを飼うことが、病気の治癒や回復につながるといえそうだ。ペットとの日々のコミュニケーションが、プラスの作用を生んでいるのかもしれない。

なぜペットを飼うことが身体的、精神的な健康につながるのか。それは“幸せホルモン”と呼ばれるオキシトシンが関係しているようだ。

例えば犬の場合、こんな興味深い研究結果が発表されている。
麻布大学獣医学部の永澤美保さん、菊水健史さんの研究によると、オキシトシンは飼い主が犬に触れるときだけではなく、犬が飼い主を見つめるときにも分泌されるという。飼い主と犬の関係が良好だと、触れたり見つめ合ったりする時間が増え、オキシトシンが頻繁に分泌されるため、身体的、精神的な安定につながりやすくなる。

ともに暮らし、関係性を構築することで“幸せホルモン”が増幅し、ココロもカラダも健康になるというわけだ。だが、このような効果・効用の観点を超えて、飼い主にとっては「ペットとの暮らしそのものが幸せ」と聞く。ペットは、私たちにとってどのような存在といえるだろうか。

ペットは“かすがい”のような存在

1つの研究結果をもとに、飼い主が感じている“幸せ”とペットの役割について、ひもといていこう。

2020年に発表された「コンパニオン・アニマルからのサポートが飼い主の精神的健康に及ぼす影響」という論文では、ペットが飼い主に与える影響について、「気持ちを和ませてくれる」という項目への飼い主の賛成度がもっとも高かったという結果が出ている。

一方で、ペットから受けられるサポートと「現在幸せかどうか」という主観的な幸福感との関連性を調べると、「気持ちを和ませてくれる」の関連度は案外低く、「家族とのコミュニケーションに役立つ」「ペットを通じて人間関係が広がる」「生きがいである」「ペットは自分を必要としてくれる」といった項目の関連度が高かったのだ。特に、1人暮らしの飼い主の方が、それぞれの影響が強いこともわかった。

つまり、人はペットを癒しの対象として見ているだけではないということ。家族や地域の人とのコミュニケーションを促進させる“かすがい”のような存在であり、飼い主自身の存在意義を明確にしてくれるパートナーでもあるのだ。飼い主にとってペットは、家族の一員というかけがえのない存在になっていることは間違いないだろう。

猫と暮らすことで得られる幸せ

コロナ禍によって高まっているペット需要だが、なかでも自宅で世話をしやすい猫を家族に迎える人が増えているようだ。自由気ままな猫と一緒にいるとリラックスした日々を送れそうだが、実際のところはどうなのだろうか。

東京農業大学の永澤巧さんらの研究によると、人は猫を撫でることでネガティブな気分が減少するのだという。その研究では、猫を撫でるグループとぬいぐるみを撫でるグループに分け、それぞれの脳活動を調べたそう。どちらのグループでもネガティブな気分の減少は見られたが、猫を撫でるグループではその変化がより顕著だったのだ。

また、猫を撫でると「IFG領域」という脳の部位の血流が活発になるということもわかっている。「IFG領域」は非言語コミュニケーションや他者との関わりにおいて重要な役割を果たしている。ポーカーフェイスな猫に対して「何を考えているのだろう?」という思考が働くことが要因だと推察され、他者とのコミュニケーションを向上させる可能性があることも示唆されている。

別の研究では、猫がリラックスしているときに喉を鳴らす「ゴロゴロ音」が、人のストレス状態を緩和するということもわかってきている。猫を撫でたときに聞こえるあの音だ。

「ゴロゴロ音」の周波数は約25~150ヘルツで、25ヘルツ程度の低周波数は副交感神経を優位にする働きがあるという。副交感神経とは、活動によって蓄積された疲労やダメージを修復し、元気な状態に戻すために不可欠な神経で、優位になることで心身がリラックスするといわれている。

つまり、猫と暮らし、日々触れることで、ネガティブな感情を抑えながら、心身の疲れを解消することができるといえる。

大切なペットと暮らすために考えておきたいこと

ペットは家族同然のかけがえのないパートナーであり、日々を健康的に過ごすためにも重要な存在だということがわかってきた。しかし、あくまでも人間とは異なる生き物。さまざまな事態を想定し、人とは違う備えが必要になる。ペットロスやペットの避難所なども社会問題化するいまの時代。だがその根本には、そういった課題や悲しいこともあると理解してもなお一緒にいたいという「かけがえのなさ」がある。

ペットは日々の生活のなかで、さまざまな幸せを運んできてくれる存在。その一方で、ともに生活していれば、大変なこともたくさんあるだろう。ペットの健康や防災など、事前に考えておくべきこともある。ペットを迎えるのであれば、楽しいことばかりに目を向けるのではなく、責任を持って真剣に向き合うことが大切だ。家族の一員という意識で接することで、ペットも飼い主もより幸せだと感じられる暮らしを築くことができるだろう。

文・有竹 亮介

〈引用データ〉
・一般社団法人ペットフード協会「全国犬猫飼育実態調査」(2015)
・Pets and Human Health in Germany and Australia: National Longitudinal Results(2007)
・永澤美保・菊水健史「オキシトシンと視線との正のループによるヒトとイヌとの絆の形成」(2015)
・金児恵「コンパニオン・アニマルからのサポートが飼い主の精神的健康に及ぼす影響」(2020)
・Takumi Nagasawa,Mitsuaki Ohta,Hidehiko Uchiyama “Effects of the characteristic temperament of cats on the emotions and hemodynamic responses of humans”(2020)
・高木 佐保「猫を飼う人の心身が癒やされている科学的根拠」(2020)
・Elizabeth von Muggenthaler, “The felid purr: A healing mechanism?”(2001)Harumari Inc.
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