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煮え切らない彼と結婚する方法【ひとみしょうのお悩み解決】

  • 2021.10.17

“【お便り募集】文筆家ひとみしょう お悩み解決” に送っていただいたお便りの中から、お悩みをひとつピックアップしてひとみしょうさんがお答えします。

「nanaco31歳女性」のお悩み

ひとみさん、はじめまして。
付き合って3年経つ、一つ年上の32歳の彼氏がいます。
ところどころで将来結婚したら〜のような話は出ていて、私の親にも会っているのですが、彼からのプロポーズや決め手となるようなアクションはありません。
煮えきらなくて2回程、私と結婚したいのかを聞いたことがありますが、どちらも「結婚したいよ」と言われました。でも、それ以上は自分から何かを言うのは怖くてできませんでした。

私は27歳の時、彼の前に付き合っていた男性(相手は2つ上でした)と結婚の話が進んで、双方の親にも紹介していましたが、一方的に別れを告げられました。理由は、好きじゃなくなったの一点張りでした。

そういったこともあり、自分には何か結婚できない、男性が結婚を決意できないような理由があるのかもしれないと、不安になります。
今の彼と結婚したいのですが、彼は私と同じようには、結婚への気持ちはないように思います。彼女のままを望まれているような気もします。
男性には、彼女にしたい女性と結婚したい女性の違いがあるのでしょうか?
どうしたらいいのか分からないです。アドバイスをお願いいたします。

〜ひとみしょうのお悩み解決コラム〜

nanacoさんに非はありません。非があるとすればそれは男性にあります。

彼と結婚する方法

煮え切らない男性と結婚しようと思えば、女性が式場の見学会を予約し、女性が式場を決めることです。つまり、段取りをすべて女性がやってしまうのです。すべての主導権を女性が握り、女性がやってしまうことです。
なぜなら、煮え切らない男というのは、単純に行動力がないから煮え切らないからです。
結婚する気持ちはある、でもいざ行動に移す段階になると逡巡する――こういう男はじつは多いです。
仕事でも同じです。男に仕事を任せると、いつまで経っても完了の報告がきません。いえ、彼は毎日真面目に仕事に取り組んでいるのです。でも行動することができないので、いつまで経っても仕事が終わらないのです。

では、なぜ男には行動力がないのか?
あれこれと迷っているからです。こうすれば上司がいい顔をしないだろう。では別の方法でやるとどうだろうか。きっと上司の顔は立つけれど同僚がいい顔をしないだろう……みたいなことを延々と考えてしまうので、つまり葛藤してしまうので、何ひとつ行動に移せないまま時が流れ去るのです。

母のイデア

では、結婚を前にしたとき、男の頭のなかで、なにとなにが葛藤しているのでしょうか?
答えは結婚相手の女性と「母のイデア」です。
母のイデアというのは、彼の実際のお母さんのことではありません。彼が夢想する完全なる母親像のことです。
すべての男は理想の母親像を持っています。自分のお母さんが完全なる母親であれば、彼にとって実際の母親が母のイデアです。

しかし、たいていの場合、実際の母親と理想の母親像とは乖離しています。たとえば、実際の母親はすごく心配性で過保護だ、という場合、彼にとっての「母のイデア」は、大地のように安定感があり、大きく包み込んでくれる慈悲深い母親です。

男が迷う理由

すべての男はつねに、母のイデアを探し求めています。
nanacoさんの彼は、母のイデアを探す中で、偶然nanacoさんに出会いました。そして付き合うことを決意しました。nanacoさんはきっとご存知ないかと思いますが、彼があなたと付き合う決意をした理由は1つです。あなたが彼の母のイデアにどことなく近いからです。
で、月日が流れ、いざ「結婚」をリアルに考えるようになったとき、彼はふたたび迷います。「本当に」nanacoさんと結婚してもいいのだろうか、と――。
なにも、nanacoさんと結婚したくないとか、nanacoさんによくないところがあるということではありません。まったくありません。
単純に、イデアという「空想」を彼が「最高の女性像」と思っているから、彼は迷うのです。
つまり、空想の中の理想の女性像「母のイデア」とは、現実の生身の女性ではなく、あくまでも空想上の存在です。空想だから「完璧」な女性なのです。
その「完璧」と、現実の彼女を比較したら、どうしても迷いが生じるでしょ、ということです。
男女反対の立場になっても同じことが言えます。彼女が空想上の完璧な男性像を夢想していたら、現実の生身の身体をもつ彼氏はもう無理です。太刀打ちできません。だから、たとえば、男性アイドルを好きになってしまった女性のなかには、いつまでも結婚しない人がいるのです。

nanacoさんの彼も、それに近いものがあります。というか、男は死ぬまで母のイデアを追い求める生き物なので、死ぬまで「浮気」するのです。実際にしなくとも、心のなかで浮気するのです。

小説の世界

母のイデアなんてただの幻想なのだから、nanacoさんが彼の手を引いて式場見学に行き、予約してください。
付言すれば、母のイデアなんてものは、小説のなかで追求すればいいのです。谷崎潤一郎や井上靖など、往年の大作家はかならずと言っていいほど「母のイデア」をテーマに小説を書いていますが、あれは母のイデアを追い求めても手に入らないから書いているのです。

(ひとみしょう/作家・キルケゴール協会会員)

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