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なぜ思い通りにならないの? 自分の「体」と向き合う、10代からの読書体験。

  • 2021.10.15

2021年9月から刊行スタートした、10代のノンフィクション読書を応援する新シリーズ「ちくまQブックス」。その中の1冊、伊藤亜紗さんの『きみの体は何者か ─なぜ思い通りにならないのか?』を紹介しよう。

ちくまQブックスは、学校現場の声を受けて生まれたシリーズだ。10代が小説以外の読書をするきっかけになるよう、身近な「なぜ?」について、やさしい言葉とイラスト・図版で読み通しやすくまとめている。

身近な「なぜ?」(Question)がスタート地点。
「知りたい」に答えます。
正解することよりも、探求(Quest)することの大切さを伝えます。
(ちくまQブックス特設サイトより)

『きみの体は何者か ─なぜ思い通りにならないのか?』は、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授で、障害を通して人間の体のあり方を研究している伊藤さんによる、14歳からの身体論だ。「体は思い通りにならない。でも体にだって言い分はある。」体の声に耳をすますと、思いがけない発見がそこにある。自分の体を生きるうえで大切なことを、この本は教えてくれる。

やさしい語りかけで「体」を見つめる

著者の伊藤さんは、吃音の当事者だ。同じ音が繰り返し出てくる、出したくても声が出ない......。吃音は「体は思い通りにならない」例そのもの。吃音について知らない人にもわかりやすく、やさしい言葉と豊かな表現で、吃音を通して私たちの体を見つめていく。

きつおん、って分かるかな。
しゃべろうとすると「あああああ」ってなったり、言葉がまったく出てこなくなったりする症状だ。
「どもる」って言ったりもするよ。

読者=「きみ」に語りかける文体で、この本は書かれている。だから、読んでいるうちに著者と一対一の対話をしている感覚になる。本にあたたかく迎えられ、手を引いていってもらえるような読書体験だ。

思い通りにならない体を抱えているのは、吃音を持つ人たちだけではない。緊張で体が固まったり、思っていることと違うことを言ってしまったり、私たち人間はみんな、思い通りにならない体とともに生きている。では、そんな人生は不便で不幸なのだろうか。必ずしもそうではない。「思い通りにならないこと」は「思ってもみなかったこと」を連れてきてくれるのだ。

この本は、きみがきみの体を好きになるための本だ。
そしてきみが自分の体と向き合うことで、新しい世界を発見するのを手助けする本だ。

この本を読み終わったとき、よく知っていたはずの自分の体が、ちょっと違った、ちょっと素敵なものに、きっと見えてくるだろう。

『きみの体は何者か ─なぜ思い通りにならないのか?』の目次は以下の通り。

第1章 体の声を聞く
第2章 体、この不気味なもの
第3章 体がエラーを起こす
第4章 恥ずかしいのはいやだ
第5章 自分らしい体
第6章 メタファーを味方につけよう
次に読んでほしい本


「ちくまQブックス」ではこの他、以下の3点が刊行済みだ。

苫野一徳『未来のきみを変える読書術 ─なぜ本を読むのか?』
鎌田浩毅『100年無敵の勉強法 ─何のために学ぶのか?』
稲垣栄洋『植物たちのフシギすぎる進化 ─木が草になったって本当?』

これに加え、2021年中に6点が刊行を予定されている。

■伊藤亜紗(いとう・あさ)さんプロフィール
1979年、東京生まれ。東京工業大学科学技術創成研究院未来の人類研究センター長。同リベラルアーツ研究教育院教授。専門は美学、現代アート。主な著作に『目の見えない人は世界をどう見ているのか』、『どもる体』、『記憶する体』、『手の倫理』など。

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