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「MEP Studio(ヨーロッパ写真美術館)による5人の女性アーティスト展 ─フランスにおける写真と映像の新たな見地」で、多様な映像表現に触れる。

  • 2021.10.15
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Marguerite Bornhauser Moisson rouge, 2019© Marguerite Bornhauser

東日本大震災と福島原発事故から10年の節目であり、パンデミックが世界を分断してから2年目となる2021年。現在、今年第9回目を迎えた「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2021」が開催中。テーマとして掲げるのは、「ECHO」(呼応)。歴史や過去を振り返りながら地球の叫びに耳を傾け、現在に呼応し、未来へつなげていくこと目指し、国内外の作家の写真作品やコレクションが、歴史的建造物や近現代建築の空間に展示された。

気候変動により住む場所を追われた人などを中心に撮影された、ファッションフォトグラファーでもあるアーウィン・オラフのポートレート作品《Im Wald(森の中)》シリーズや、性暴力のサバイバーのトラウマティックな記憶やその後の人生を写真作品としてなぞるリャン・インフェイの《Beneath the scars》。アイデンティティ、人種差別、フェミニズム、ジェンダーなどに焦点を当て、弱者の声を表現しながら「普通」「美しさ」「正しさ」の定義に疑問を投げかける、ンガディ・スマートの色鮮やかなコラージュや写真作品。ダミアン・ジャレ&JRによる 9 人のダンサーのための作品《Brise-Lames(防波堤)》など様々なテーマと「エコー(呼応)」する、国内外の気鋭のアーティストによる14のエキジビションを楽しむことができる。中でもGINZA読者におすすめしたいのが、HOSOO GALLERYで行われている、「MEP Studio(ヨーロッパ写真美術館)による5人の女性アーティスト展 ─フランスにおける写真と映像の新たな見地」。

2018年には若手女性アーティストの支援を目的とした施設「Studio」を新たに開設したMEPのディレクター、サイモン・ベーカーのキュレーションで、今後、世界での活躍が期待されている若手女性アーティスト5名の作品をフィーチャー。彼女たちの作品を通し、豊かな写真と映像表現のハイブリット性、多様性を紹介していく試みだ。

展示室でも一際存在感を放つのが、1989年生まれの人気ファッションフォトグラファーであり、フォトジャーナリストでもあるマルグリット・ボーンハウザーが、2019年に発表したシリーズ《Red Harvest》だ。アメリカのミステリー作家ダシール・ハメットの小説『赤い収穫』から引用したタイトルと呼応し、発光するように収集された赤い色に目を奪われる。

1993年生まれのビジュアルアーティスト、マノン・ロンジュエールによる《Ask the Dust(塵に訊ねよ)》シリーズからの一章《The unpredictability of Lightning (雷の予測不可能性)》もホラー小説のように想像力を掻き立てられる作品だ。米国の作曲家ジョン・アダムズのオペラ「天井を見つめていたら空が見えた」にインスパイアされ、架空の暴風雨という自然災害を出発点とした物語は、アーカイブフォトと彼女が生み出した偽りのアーカイブフォトを混在させることで、ドキュメンタリーとフィクションの境界線を曖昧にする。

1993年生まれのアデル・グラタコス・ド・ヴォルデールは、タンスに投影された映像《Jamais indemne! Un coeur ā corps 決して無傷ではない!(心を体に)》と共に、ホワイトキューブに書かれたマインドマップのようなメモ書きをインスタレーションとして発表。目に見えるものは私たちが奪い取られたものであるという前提をもとに、目に見えないもの、どうしても癒せないものの一部を目に見えるかたちで昇華するための空間を構築している。

同展示室には、1991年生まれの映像作家/ダンサーのニナ・ショレ(1991年レ・リラ生まれ)と美術作家/女優のクロチルド・マッタのユニットが手がける映像シリーズ《ELLES,…(彼女たち、…)》も。共に身体性を用いて表現活動を行うアーティストの二人が、タンジェとローマで滞在制作した2つの物語だ。詩的な映像でそれぞれの都市に内在する女性の視点、欲望、身体性を探る内容となっている。

本展示はアートとカルチャーの分野で活躍る女性に光を当てることを目的に2015年に発足した、 ケリングのプラットフォーム「ウーマン・イン・モーション」により支援されていることにも注目したい。週末は、異なる力強い個性を放つ5人の写真表現の響き合いを体感できる「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2021」(10月17日まで)にぜひ足を運んでみて。

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