1. トップ
  2. ライフスタイル
  3. 「考える」を楽しむ。ピタゴラスイッチ制作陣による『解きたくなる数学』

「考える」を楽しむ。ピタゴラスイッチ制作陣による『解きたくなる数学』

  • 2021.10.11

はかりに盛られたたくさんのナット。1つ取る前は、はかりの目盛りは360gを指していた。......ということは、このナットは全部で何個ある?

ナットを1個取ったときの目盛りが357gだから、1個の重さはホニャララg。ってことは......と、つい解きたくなる。しかしこれが、例えば次のような文章題だったとしたら、どうだろう?

【問題】
はかりの上に複数のおもりが載っています。全部の重さは360gです。おもりを1つ取ると、357gになりました。おもりの個数を求めなさい。

文章になったとたん、面倒くさくて解く気が失せるのではないだろうか。

本書、『解きたくなる数学』(岩波書店)は、はかりとナット、チョコレート、紙コップにサイコロ、トイレのタイルなど、身近にあるものを使い、写真やグラフィックで表現することで、「つい解きたくなっちゃう」23の問題を掲載している。

いずれもEテレ「ピタゴラスイッチ」の企画・監修を手掛ける佐藤雅彦さんが、慶應義塾大学の研究室の仲間とともに、頭をひねって考え出した珠玉の問題だ。

「お母さんのチーズ分配法」や「東京の人口と髪の毛」「ケーキとプレート」などと題された問題ページは、見開きの半分以上、時にはほぼ全面が写真で占められている。パッと見て問題の意図が分かりやすく、数学が苦手な人でも「解いてみたい!」という気持ちにさせられる。

ここでもう1つ、本書から問題を紹介しよう。背表紙の右下の写真を見て欲しい(岩波書店のウェブサイトで拡大画像を見ることができる)。

ここは波止場。
1本の杭に 2艘の船が ロープをつないでいる。
左の船が先に出航するためには どうすればよいか。
ただし、右のロープは外さない。
――『解きたくなる数学』p10より

頭の中にロープを思い描きながら、ああでもない、こうでもないと考えているうちにこんがらがって、「ええい、ロープ切っちゃえ!」と強引な解決策が浮かぶが、もちろん、そんな単純な答えではない。正解と解説は、ぜひ本書で確かめてほしい。自分で正解を導き出せたら高揚感があるし、解けずに断念したとしても、解説を読めば「な~るほど!」と次の問題にチャレンジしたくなる。

論理を組み立てる力、思考のジャンプ力が身につく

これまで「ピタゴラスイッチ」など動画を使った数学のコンテンツを数多く手掛けてきた佐藤さん。書籍(文字中心のメディア)では数学を扱ってこなかった(扱えなかった)。今回、本書をつくるきっかけとなった「トイレのタイル問題」を思いついた時、その理由には、2つの「難題」があることに気付いたという。

数学の文章は、概して、問題自体、何を言っているのか分からない。
数学の文章は、概して、義務的な気持ちにさせる。

数学アレルギーを自覚する一人として、おおいに賛同する。無味乾燥な文章や図形、x、y...などと書かれていると、問題の意味がわからず挫折することもしばしば。「解かなきゃ」という義務感から、さらに気持ちが萎える。

そこで本書では、現実の世界に数学の問題を「デザイン」することで、次の2つをめざしたという。

ひと目で問題の意味が分かる。
ひと目で問題を解きたくなる。

本書はその目的通り、いや、それ以上の仕上がりになっている。装丁もお洒落で、本棚に面で飾っておきたくなる(知的な本棚に見える効果も!)。ちなみに佐藤さんが「この本いちばんのおすすめ」としている「トイレのタイル問題」は中学入試にも出てきそうな角度を求める問題だが、これまた思考力が試される、「解きたくなる」問題だ。

佐藤さんはあとがきで、「この本により、多くの方が数学の真の面白さを知ることができ、そのことによって、より豊かで楽しい時間を過ごせたなら、作者にとって、こんな嬉しいことはない」と結んでいる。論理の組み立てが学べて、思考のジャンプ力が身につく。数学が好きな人も苦手な人も、考えること自体が楽しくなる一冊。

元記事で読む
の記事をもっとみる