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【公認心理師に聞いた】占いと心理カウンセリングの違いと活用法

  • 2021.10.1

人は自分のことを他人に話すことで気持ちがすっきりしたり、心が落ち着いたりするもの。当たる、当たらないが主題と思われがちな占いにも、そんなカウンセリング効果があるかもしれない。そこで、カウンセリングのプロである公認心理師の立場から占いの効用とカウンセリングとの違いについて聞いてみた。

物事の捉え方や考え方の癖を知って適応的な考え方を取得していく心理カウンセリング

占いと心理カウンセリングは似ているのではないか? この質問を公認心理師の山名裕子さんにぶつけてみたところ、「まったく違うものです」との答えが返ってきた。

「占いはクライアントの悩んでいることについて、具体的なアドバイスをしたり解決策をズバリと提示したりするものだと思いますが、カウンセリングの場合、カウンセラーから『こうしたほうがいい』と解決策を提示することはしません。そこが占いと心理カウンセリングの大きな違いだと思います」

では心理カウンセリングの場合、何か悩みを相談したときに、どんなプロセスでアプローチしていくのだろうか。

「心理カウンセリングの基本は傾聴。心に寄り添って話を引き出します。ご本人にはない角度から質問をして話を聞くことで、考えを整理してもらうのです。その後、一緒に解決方法を探っていきますが、解決策を決めるのはクライアント本人。選択の幅を広げるのがカウンセラーの役割の一つです」

一人で考えていると、なかなか自分の気持ちを客観的に言語化することは難しいが、カウンセラーと話をすることによって、「そのとき自分はこんな気持ちだったのか」とか「そういうふうに捉えていたのか」と自分と向き合うことができる。自分の心の中がどうなっているのかを知ることが、心理カウンセリングの役割の1つなのだとか。

「また、その場の悩みだけを解決するのではなく、今後同じようなトラブルが起こった時に、自分で解決できるようになることが心理カウンセリングの目指すところです。物事の捉え方や考え方を修正していくので、トラブルも起こりにくくなります」

人に話すことでカタルシス効果を得られるのが共通点

とはいえ、占いと心理カウンセリングの共通点もあると山名さん。

「心の中に溜まっているものを人に話してすっきりする、心理学では『カタルシス効果』と言いますが、そこは占いとカウンセリングの共通点と言えるでしょう。つまり心の浄化作用が期待できます。占いをカウンセリングの代わりにすることはできませんが、ストレスケア的に活用することはできるのではないでしょうか」

街の中やデパート、ショッピングセンターなど、占い師に直接占ってもらえるお店やブースは、身近なところにある。人に話してすっきりしたいと気軽に足を運べるのは、占いのメリットと言えそうだ。

物事を自分で決められない人は占いを信じすぎてしまう傾向が

占いは、はっきりと結論を言われることもあり、信じすぎて心が不安定になったり、結果に振り回されてしまったりする人がいる。そういう人に対して、どんな心構えで占いを受ければいいのか教えてもらった。

「まず、どんなに断定的な結果を言われたとしても、選択権はこちらにあることを忘れないでほしいです。例えば、引越しを予定しているのに『今は引っ越しはしないほうがいい』と言われたとします。その場合でも、『そういう意見もあるんだ』と受け止めて、よくないことが起こらないように自分に何ができるのかを考えられることが理想。『それでも私は引っ越しますが、気をつけたほうがいいことはありますか?』と、さらに質問できて、前向きに受け止められるといいですね。そういう捉え方をすれば、悪い結果を言われたとしても、それが有益なアドバイスになり得ます。悪いことが起こる前に注意を促してもらえてよかった…くらいに考えられる人は、占いをうまく活用できたり、楽しめたりするでしょう」

心理カウンセリングは健康なときから定期的に通うのが理想

ところで、心理カウンセリングは日本ではまだハードルが高いようにも思える。山名さんによると、欧米と比べて心理カウンセリングの利用率は10分の1以下というデータもあるのだとか。そもそも、どんなタイミングで受けたらいいのだろうか。

「会社の人間関係など、具体的な悩みを持っている人はもちろんですが、本来は予防的に通うことをおすすめしています。行くタイミングはいつでもOK。まず自分がどれくらいストレスを感じているのか、ストレスチェックに行ってみてはいかがでしょうか。体の健康のためにスポーツジムやパーソナルトレーニングに通うのは一般的です。それと同じように精神的な健康維持のため、心のトレーニングのために通う人が増えると、うつ症状などで悩む方も減るのではないでしょうか」

健康な時から心理カウンセリングに通うと、自分の考え方、ものの捉え方の癖を知ることができ、新たな気づきや発見がある。また、自分らしさとは何か、自分がどんな人間であるのかを知ることができるのも特徴とのこと。それによって、思考の幅を広げ、周囲とのコミュニケーションが円滑になり、ストレスを感じにくくなることがメリットと言えるそう。

「ただし、民間のカウンセリングルームは医療機関ではありませんので、イライラや不安感、それに伴う身体症状が出ていたり、学校や会社に通えないなど日常生活が送れない状態になっていたりする場合には、カウンセリングではなく、心療内科や精神科など医療機関を受診して適切な治療を受ける必要があります。でも、どんな症状が出ていたら医療機関に行けばいいのか、そこの線引きは難しいんです。だから、いつもと違った気になる症状があるけど、どこに相談したらいいかわからない場合なども、まずカウンセリングを受けて相談してみるのもいいと思います。病院にかかったほうがいいのか、もし受診するならどんな診療科に行けばいいのかを一緒に考えていくことができます」

つまり、健康なときから心理カウンセリングに通っておけば、何かあったときに早めに治療を始められるのもメリットと言える。

また、心理カウンセリング未経験者だと、いったいどんな悩みを相談したらいいのか……と考えてしまうが、その点も聞いてみた。

「職場の人間関係などはもちろんですが、私の場合、女性ということもあってか、恋愛の悩みや結婚をしたいがどうすればいいかなどの悩みを相談される方も多いです。20代〜30代の女性が、年齢が近いカウンセラーのほうが話しやすいと選んでくださるからだと思います」

また、夫婦や親子で来院する方もいるのだとか。例えば、夫婦間のコミュニケーションで、妻側に悪気はなくても、夫の捉え方は違うということを心理カウンセリングを受ける中で気づき、コミュニケーションを改善して関係性がよくなったというケースもあるそう。

最近では、経営者や会社で管理職の立場にある人が、仕事に生かすために心理カウンセリングを受けに来るケースも増えているという。

「人材育成に心理学を生かしたい、リーダーシップやマネージメントスキルを磨きたい、怒りを上手にコントロールするアンガーマネージメントを身に付けたいなど、ビジネス寄りのニーズでご来談いただく方が増えているのも最近の特徴です」

これらの場合は、今現在持っている悩みを解決したいのではなく、よりストレスなくコミュニケーションを取るためというプラスの効果を狙って、心理カウンセリングを受けるというわけだ。こういった明確な目的がなくても、ただ「幸せになりたい」という理由で訪れるクライアントもいるという。心理カウンセリングの目的は千差万別と言えそうだ。

心が健やかな状態であることの目安とは?

ここまで占いと心理カウンセリングの違いや、心理カウンセリングを受けることの意味などを聞いてきたが、最後に、心理学的に心が健康な状態であることの目安はどんなところにあるのかを聞いてみた。

「嫌な出来事や大きな変化があって影響を受けても、回復力が早い人は、心の状態が良いことの1つの指標と言えます。また、感情のコントロール(特に怒りや不安)ができている、睡眠がとれている、食事がきちんと取れる、会社や学校に時間通りに行けるなども、心が健康であることの表れでしょう」

特に日本人の特徴として、怒りを上手に表現できる人が少ないと山名さん。溜め込んで後で爆発したり、言葉では言わずに態度でじわじわと相手を責めたりする人も多いが、自分の心を尊重して、相手も尊重しつつ、きちんと丁寧に自身の主張を伝えられる人は、心が安定しているとのこと。

占いにしても心理カウンセリングにしても、他人に自分のことを話すことで、ストレスが軽減できたり、自分の気持ちを整理することはできそうだ。しかし、もしすでに何か不安を感じていたり、ストレスフルな生活を送っているという自覚があるならば、まずはカウンセリングを受けて心を整えてからのほうが、より占いも楽しめるのではないだろうか。

取材協力:山名裕子
撮影:友野雄

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