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メイクアップアーティスト・RIE OMOTOの大切なもの「アーミーパンツ」

  • 2021.9.29

クローゼットにひそむ、どうしても手放せないものはありますか?かけがえのない“記憶”が刻まれた物語を紹介します。

“あの時”の気持ちを忘れないために
30年以上をともに歩んできた相棒

NY・ブルックリンから届いた写真には、はき込まれたアーミーパンツ。メイクアップアーティストのRIE OMOTOさんが19歳で渡ったロンドンで手に入れたヴィンテージだ。

「デヴィッド・ボウイやセックスピストルズに憧れていて、ロックとパンクの聖地に暮らそうと岡山の美容室を辞めて留学したんです。若くてお金もないから週末はポートベローやカムデンのストリートマーケットをぐるぐる回って過ごして。『i-D』の誌面から出てきたような人々を眺めてカルチャーを感じるのが刺激的でした。“この街でなら、深く息ができる!”と思った。カムデンで見つけたこのパンツが手放せないのは、当時の記憶やマインドを忘れないため。私の“証”のようなもの」

帰国後に自身の美容室を立ち上げた。そして1997年、パリのメイクアップアーティスト、リンダ・カンテロのもとでキャリアを積むために再び旅立つことに。荷物にはもちろん、アーミーパンツを詰め込んだ。

「パリに着いた翌日にはミラノコレクションのバックステージにいました。初仕事はトム・フォード時代のグッチのショーで、名だたるトップモデルを前に震えがきましたね」

必死で過ごした3年を経てNYに拠点を移して20年あまり。ワードローブは変化すれども、やはりこれだけは特別、という。

「ドネーションなどで手放す服も多いんですけどね。90年代はボロいTシャツ革ジャンにチャンキーなブーツを、今はパリッとしたジャケットやシャツを合わせたりもしています。服もメイクも生き方も、自分の中の“自信”は大切にしつつ、その時々の心地よさに素直になること。自由に変化していくバランスを楽しむのがいちばんだと思っているんです」

GINZA2021年6月号掲載

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