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灘、開成、豊島岡。22の名門校の先生たちから親へ、珠玉のアドバイス

  • 2021.9.26
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おおたとしまささんの著書『正解がない時代の親たちへ――名門校の先生たちからのアドバイス[エッセンシャル版]』(祥伝社)は、幼児~思春期の子どもが育つ珠玉の言葉の数々を凝縮した1冊。

名門校(麻布、栄光、桜蔭、鷗友、海城、開成、吉祥女子、神戸女学院、四天王寺、品川女子、芝、修道、女子学院、巣鴨、洗足学園、東大寺、桐朋、豊島岡、灘、ノートルダム清心、雙葉、武蔵)のベテラン先生たちの言葉を、21世紀のど真ん中を生きる子どもの親が心得ておきたいポイントとしてまとめている。

「親の立場からすれば耳の痛い話も多いかもしれません。しかしそれ以上にきっと、『あ、それでいいんだ』と肩の力が抜ける瞬間があるはずです」

ナンセンスな問い

「親世代の成功事例が通用しないであろう未来に子どもが変化に対応して活躍する人材になるには、親として何を大切にすればよいのか?」――。

著者はこう聞かれることが増えているという。この問いの「親世代の成功事例が通用しないであろう未来」の部分は、「二重の意味でナンセンス」としている。

まず、親世代の成功事例が子ども世代でも有効だった時代など、むしろ「例外的」。子どもが「親世代の成功事例が通用しないであろう未来」を生きることは、いつの時代も「デフォルト(初期設定)」。それを心配すること自体がナンセンスという。

次に、そもそも生き物の本質は「変化に対応」すること。過去の世代からは、新しい世代が構築した社会秩序が「親世代の成功事例が通用しないであろう未来」に見えるだけ。子どもがそこをどう生きていけばいいかと気を揉むこと自体が、さらにナンセンスという。

「結論として冒頭の問いに対する私からの答えは、『親としてなぜこのような問いに囚われてしまうのかを考えてほしい』です。課題は、子どもではなく親の中にあるのです」

親のすべきこと

本書の目次は以下のとおり。

■目次
はじめに――それは子どもの問題ではありません
序章 「これからの時代」を生きる力
第1章 「グローバル」なんて怖くない
第2章 「進歩する技術」を味方につける
第3章 「ジェンダー」にとらわれない
第4章 「人権意識」を身につける
第5章 人生を「自分で決める」ために
第6章 焦らずに「土台」をつくる
第7章 「すごい親」より「いい親」がいい
終章 子どもを「見る」ということ
おわりに――「答え」は子どもの中にある

「ぼーっとする時間がもたらす『人生の羅針盤』」「反抗期は、哲学している証拠」「幼児期の皮膚感覚が人生の土台になる」「経験泥棒をしてはいけない」......。100以上の小見出しから、ここでは厳選して2つ紹介しよう。

■自分なりの信念をもって「凧を揚げる」
「若いころからあれもできるようになって、これも身につけて、世の中の風に乗って意識高く飛び上がっても、根本に真の価値観をしっかりと結びつけておかなければ、糸の切れた凧のようになってしまいます。自分なりの信念をもって凧を揚げなさいということです」(雙葉)

■親の努力はたいがい無駄
「『ほったらかしにしい。ほったらかしにしても崩れへん』とアドバイスすることはあります。(中略)こう言ってしまうと身も蓋もないのですが、子どものためにしなければならないからする努力ってたいがい無駄なんです」(灘)

子育てをしていると、つい目先のことにとらわれがち。そこでもっと俯瞰的にとらえてみる。そんな親のとるべき基本姿勢のようなものを教わった。22もの名門校の先生たちからのアドバイスを1度に読めてしまうのだから、本書はなかなか贅沢な子育て本である。

最後に、著者の考える「教育的な観点で親のすべきこと」とは。

「小さな小さなやる気は、子どもがいくつになっても、心の中でかなり頻繁に芽吹いています。(中略)それに気づいて、光を当て、温かく見守ってあげられれば、いくつになっても、おそらく大人になってからでも、人間は伸びていけます」

本書は、おおたさんの著書『21世紀の「男の子」の親たちへ』(2019年、祥伝社)と『21世紀の「女の子」の親たちへ』(2020年、祥伝社)に収録された先生たちの話から、特に印象的な言葉を抽出し、新たなコメント、解説、注釈を加えて再編集したもの。

■おおたとしまささんプロフィール

教育ジャーナリスト。1973年東京生まれ。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退、上智大学英語学科卒業。リクルートから独立後、数々の育児・教育誌の編集に携わる。学校、塾、保護者の現状に詳しく、各種メディアへの寄稿、コメント掲載、出演多数。中高の教員免許をもち、小学校教員や心理カウンセラーの経験もある。『名門校とは何か?』(朝日新書)、『ルポ塾歴社会』(幻冬舎新書)、『ルポ教育虐待』(ディスカヴァー携書)、『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』(祥伝社新書)など、著書60冊以上。

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