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68年たった今でも、ディオールのニュールックは新しい。その誕生が起こしたモード革命の展覧会をグランヴィルで。

  • 2015.7.15
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1945年に第二次世界大戦は終わったけれど、復興には時間がかかる。1947年2月12日にクリスチャン・ディオールが初のクチュールコレクションを発表した時も、まだまだ物資が不足し、電気も使用制限されていて......という暗い時代。クチュリエが使える布地の分量も限られていたので、当時女性たちが着ていた服といったら地味な色あいのボックス形が主流だった。そんなところに、肩が丸みを帯び、バストが強調され、ウエストがきゅっと絞られ、その下にまるで花が地面に向かって大きく開くような膝下丈のスカート、という女性らしさを満載した装いが登場したら? この衝撃的シルエットはディオールが発表したコロール(花冠)・ラインと命名されたもので、それをショー会場で見たハーパース・バザー誌の当時の編集長カーメル・スノウが 「ニュールック」と表現したのは、あまりにも有名なエピソードだ。

展覧会のメインウィンドー。1947年2月に開催されたクリスチャン・ディオールの最初のクチュールコレクションの会場の雰囲気を再現している。ショーで発表されたニュールックのマネキンが手前に立ち、ショーに集まったクチュール客を模したマネキンたちが後方にずらり。この客たちが着ているのは、ニュールックが登場するまでの主流だった肩の張った厳しいタイプの服だ。photos:Mariko Omura

現在、グランヴィルにあるディオール・ミュージアムで開催されている「ディオール、ニュールック革命」展は、ニュールックを代表するバー(Bar)スーツを軸に、女性の衣服の歴史に革命を起こしたこの新しい美意識について、誕生から現在にいたるまでを展示している。美術館はかつてディオール一家が暮らした家で、2つのリビングルームと父の書斎があった一階には、ニュールックがいかに革命的だったかを見せるべく、バー(Bar)スーツをメインにおいたショー会場をメインウィンドー内に再現。「スキャンダルと栄光」と題された一室では、その衝撃がいかに激しかったかを証言する当時のマスコミの反響を多数展示している。

展示内容はバラエティに富んでいる。(上左)初のクチュールショーのバックステージの写真が展示されている。(上右)バー(Bar)スーツのエスプリが生きた歴代クチュリエによるドレスの数々を展示。(下左)ディオールが1949年のクリスマスに知人の娘に贈ったクリスマスプレゼント。クチュールのアトリエによる特製のドレスやコートのシルエットはいかにもディオールだ。(下右)香水ボトルとミニュチュアドレスのウィンドー。photos:Mariko Omura

家族の寝室があった二階のスペースには、クチュールのアトリエを再現。ここの見どころは、ディオールがニュールック用にオーダーしたというトルソーだろう。彼が希望する体を業者にわからせるために既存のトルソーをトンカチでこわし、理想を示したそうだ。こうして生まれたのが、丸みを帯びた背中、極めて細いウエスト、少し前にでた腰をもつトルソーである。彼の女性のもつ曲線美への賛歌が一目瞭然! このフロアーでは、現在のアーティスティック ディレクターであるラフ・シモンズによるバー(Bar)スーツの解釈にもスペースを割き、1947年のクリエーションがいかにして、いつの時代にも常にニュールックでありえるのかを納得させる展示だ。

(左)再現したアトリエ内に置かれたディオール特注によるトルソー。photo:Mariko Omura (中)1947年に発表されたコロール・ラインのバー(Bar)スーツ。©Laziz Hamani (右)クリスチャン・ディオールによるクロッキー。初コレクションのコロール・ラインだ。©Christian Dior

後継者たちにより、バー(Bar)スーツのエスプリはその時代にあったコンテンポラリーな解釈で登場。(左)2009年秋冬オートクチュール コレクションで発表されたジャケット。©Laziz Hamani (中)ラフ・シモンズにとってディオールのデビューコレクションとなる2012-13年秋冬オートクチュール コレクションよりドレスのトワル。©Laziz Hamani (右)2012年に発表されたラフ・シモンズによる初のクチュールコレクションより。©Laziz Hamani

最上階フロアーでは、彼の初コレクションの2つのテーマであったコロール・ラインと8ラインがもつカーブの重要性を、香水ボトルの展示などによって物語っている。壁にはマッツ・グスタフソンが描いたさまざまな時代のバー(Bar)スーツのイラストレーションを展示。これらは、展覧会開催と同時に発売されたロランス・ベナイムによる書籍のために描かれたものだ。グランヴィルまで展覧会を見に来られなくても、この本があれば なぜバー(Bar)スーツが革命的で、なぜ今も新鮮なのかがわかる! という一冊である。

グランヴィルのディオール美術館。展示だけでなく、クリスチャン・ディオールが愛した庭や海の景色も見逃せない。photos:Mariko Omura

表紙はマッツ・グスタフソンによるコラージュ。これだけでも素敵! フランス語版と英語版あり。リゾーリ刊/27ユーロ。


「Dior , la révolution du new look」展
会期:開催中〜2015年11月1日
会場:Musée Christian Dior
Villa les Rhumbs
Rue d'Estouteville
50400 Granville
Tel.02 33 61 48 21
www.musee-dior-granville.com
入館料:7ユーロ
開館:10:00〜18:30 (入館受付は18:00まで)
ティールーム(7月1日~8月31日):12:00~18:30
庭園(入場無料):7~8月 9:00~21:00、4月~5月・9月 9:00~20:00、3月・10月 9:00~18:00、11月~2月 9:00~17:00

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