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不倫相手が子どもをもうけたことに絶望しています【ひとみしょうのお悩み解決】

  • 2021.9.14
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“【お便り募集】文筆家ひとみしょう お悩み解決” に送っていただいたお便りの中から、お悩みをひとつピックアップしてひとみしょうさんがお答えします。

「YYY31歳男性」のお悩み

同じ職場の既婚者とW不倫してます。
もともと既婚子無し同士でしたが、彼女の方が2ヶ月前に旦那さんとの子どもを妊娠しました。
それを聞いた時は、おめでたい気持ちとあまりにあっさり妊娠したことに複雑な気持ちになりました。
子ども作るなら僕を振ってからにしてほしかった。旦那さんとの子なのでなんら間違った行動ではないことは承知の上です。
しかしまだ、子どもが出来るまで遊びの関係だったって別れたほうがこちらも割り切れたのですが。今後について話合った際、彼女の方が「別れたくない。今まで通りでいたい」と言ったので現在まで付き合い継続中です。
さらに同じ時期同じ部署に新しく後輩の男の子が異動してきて、その男の子と大変仲良くなっているのです。音楽の趣味や映画の話などをして先日は彼から教えてもらった映画を1人で見てきたようです。
そんなことに嫉妬してしまっています。
赤ちゃんを産めばもう会える関係でもないのに関係を続けることに疲れたこと。
新たに嫉妬する対象も出来、4月から僕は体重が激減しました。
定期的に会って好きだと言ってくれるんですが関係を続けることに悩み出しています。
僕はどうしたら良いのでしょうか。

〜ひとみしょうのお悩み解決コラム〜

女子とはそういう生き物なのだということを知らないままピュアに恋すると痛い目にあいます。

男は「ずっと好き。ずっとこの関係が続けばいいなあ」と思って(うっとり)しがちですが、その傍らで、女子は「その都度」自分が欲しいと思ったものに猪突猛進。その変わり身のはやさたるや。

天敵とわかっているけれど

YYYさんの不倫相手は快活な女性です。平易に換言するなら、エッチと恋愛が好きな女性です。そういう女性を相手にするのって、(今回の件で骨の髄まで思い知ったと思いますが)ホント大変です。なぜなら、彼女は同じ場所でじっとするということをしないからです。

不倫相手、つまりYYYさんのことが好きと思ったらYYYさんにいき、エッチします。不倫とかそういうのとは「まったく独立に」、子を設けたいと思えばさっさと子づくりに励みます。さらに、ほかにいい男子がいたらその男子とも付き合おうとします。もう男の天敵ですよ。

で、男はその天敵に惹かれるのです。敵と知っていて、でも惹かれるのです。

わかりやすい例を挙げるなら、キャバ嬢と客の関係。こいつは金のためにオレに愛想を振りまいているとわかっているのに、男はクレジットカードが使えなくなるまで気前よく店に通います。こいつは地元のヤンキーと同棲しているはずだと薄々気づきつつも、同伴とアフターにしつこく誘います。で、金がなくなったころ、「やっぱり騙された」と思います。

そういう女子って、なぜか魅力的に見えるんですよねえ。なぜか「誰よりも」価値のある人に見えるんですよねえ。自分とエッチして家に帰ったら今度は旦那とエッチしていたんだと知っても、なぜか嫌いになれないんですよねえ。これ、男心の謎です。

男が天敵に惹かれる理由

私たちの心のなかにはたくさんの自分がいます。そのなかのひとりが、少年性を持つ自分であり、少女性を持つ自分です。

男はなぜ、相手を天敵と知って相手に恋してしまうのでしょうか?

答えは、女性は女神だと男が認識しているからです。

かわいくて、究極の曲線美に溢れたハダカを気前よく見せてくれて、男のろくでもない棒を(ホントにろくでもない棒を!)温かくやわらかいもので包み込んでくれる女性のことを、男は女神だと認識してしまうからです。

なぜ女神と認識してしまうのか?

男は絶えず「母のイデア」を探しているからでしょう。

これはなにも、マザコンのことではありません。

自分の母ではなく、「あなたが理想とする母親像=完璧な母親像」を絶えず探しているのです。それが男なのです。

YYYさんは、絶えず母のイデアを探し求めるうちに、なんらかのきっかけがあって今の不倫相手と出会いました。やがてその不倫相手のことを女神と認識するようになりました。

がしかし、女神はさっさと子を設けました。なおかつ、あろうことかほかの男子と仲良くしています。YYYさんはそれがショックで激やせしました。それでもYYYさんは彼女のことを女神だと思っています。なぜなら、YYYさんは今でも母のイデアを追い求めており、不倫相手の丸くてやわらかくて温かいものに触れたYYYさんは、彼女こそ俺の女神だと思い込んでしまったからです。

しあわせになる方法

以上のことからわかるように、YYYさんの悩みの本質は、「その」彼女にあるのではなく、YYYさんが母のイデアを探してしまうところにあります。

ということは、YYYさんは、「その」彼女との関係をどうするかということを考えるよりも(そういうのはなりゆきに任せておくといいです)、自分の心のなかにある「母のイデア」をどうにかするのが、幸せになる方法であると言えます。

が、それってどうすればいいんでしょうね。

男はきっと、死ぬまで「母のイデア」を追い求めます。そんなの幻影と知ってて、谷崎潤一郎も井上靖も晩年まで母のイデアを追求(追究)しました。イデアということを言い出したのはプラトンですが、プラトンは言いっぱなしでこの世を去りました。

さて、どうすればいいのでしょう。男はなぜ母のイデアを追い求めてしまうのでしょうか?

この難問が解けたら、きっとYYYさんは世界的な哲学者になれます。キルケゴールという哲学者は解を与えているように思うのですが、キルケゴール研究者は誰ひとりとして「キルケゴールは母のイデアについて言及していたのだ」とは言いません。

ひとまず、YYYさんとYYYさんのお母さんの関係をさらに良好なものにしてみてはいかがでしょうか。そこから謎が解けるかもしれません。

※参考 ひとみしょう『自分を愛する方法』玄文社(2020)

(ひとみしょう/作家・キルケゴール協会会員)

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