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料理レシピ本大賞入賞! ひとり分のごはん、100の自炊アイデア。

  • 2021.9.10

今月7日に第8回料理レシピ本大賞受賞作が発表され、本書『自炊。何にしようか』(朝日新聞出版)が入賞した。

著者は料理家・文筆家の高山なおみさん。素材の味をいかしたシンプルな料理が人気で、「きょうの料理」(NHK)の講師としても知られる。2016年に東京から神戸へ引っ越し、ひとり暮らしをはじめた。

本書は「ひとり分のごはん」の自炊アイデアをまとめたもの。「朝」「昼」「夕」「夏」「お客さん料理」「冬」と、食のドキュメンタリー形式で全100レシピを紹介している。もちろん、ひとり暮らしでなくても参考になる。

「ひとりで暮らしはじめたら、料理をもっと単純に考えるようになった。新しく見えてきたこと気づいたこと忘れないように書いておいたメモ。私の台所で生まれたのはまるで、ひとりごとみたいにでこぼことしたレシピですが......あなたの台所でも、役に立てますように」

パンは鉄のフライパンで焼く。

高山さんは朝起きると、寝る前に煮沸消毒しておいた布巾を洗濯するのが日課。ラジオをつけ、冷たい水を飲む。お風呂の湯をためる。身繕いをし、ベッドのくずれを直し、洗濯機をまわす。

へぇ! と思ったのは、台所にオーブントースターはなく、パンを焼くのに鉄のフライパンを使うところ。

小さく火をつけて温めたら、凍ったままのパンをのせ、アルミ箔をふんわりかぶせる。
アルミ箔にしわを寄せておくと、熱効率がいいみたい。
焼き目がついたら裏返して火を止め、小さく切ったバターをのせてまたアルミ箔をかぶせ、あとは余熱で。
こうするとバターがちょうどいい具合に溶ける。

(「◎朝ごはんはヨーグルトと果物、トースト、紅茶に決まっている。」より)

パンはいつも6枚切りのイギリスパンを買ってきて、1枚を半分に切り、ラップに包んでその日のうちに冷凍しておくという。

バターかクリームチーズをぬり、バナナ半本をのせて蜂蜜をかけ、クルッと巻いた「バナナトースト」。あまりにもおいしそうな写真に、早速作りたくなった。

ゆでた大豆があると、安心。

「冷凍してあるもの。」では、いつもこれだけ入っているのではなく、この日たまたまあったものを紹介している。

だしをとったあとの昆布、パン、ワンタン、合いびき肉、豚薄切り肉、自家製ソーセージ、豚腸(ソーセージを作る用)、大豆(ゆでたもの)、ベーコンのかたまり。

高山さんの住むマンションは、山のふもとの急坂にある。坂を下りたら上って帰ってこなければならず、気軽に買い物に行けなくなったそう。

そこで肉や野菜のかわりになるのが「大豆」。「ゆでた大豆が冷蔵庫や冷凍庫にあると、安心する」という。

大豆1袋は、寝る前にざっと洗ってから、たっぷりの水に浸す。
翌日、浸した水ごと鍋にあける。
うちにあるいちばん大きな鍋を使ってゆでる。
中火にかけ、クリームのようなアクが出てきたらいちどにすくう。
あとは弱火。水面が動かないくらいの火加減で。
豆が窮屈にならないように。ゆらゆら動きながらゆだるように。
豆が顔を出したらさし水をする。
1時間強でゆだるけど、やわらかさは食べてみて確かめる。

(「◎大豆のゆで方。」より)

ゆで汁とともに、冷蔵庫または冷凍庫で保存する。そのまますくって食べたり、おみそ汁やスープにゆで汁ごと使ったり、チャーハンの具にしたり。肉や野菜とともに、大豆も常備しておきたい。

黒の背景に、ラップに包んだごはんが並んだ表紙。素朴さゆえに、かえってインパクトがある。

「お米は生きるための、体と心になっていくものっていう気がする。(中略)水に浸しているとき、お米が水を吸う音が聴こえるようになった。ぴち ぱち ぴち ぱち。(後略)」

少し凹凸のある手ざわり。高山さんの日常をそのまま収めたような写真の数々。一緒に台所に立って、直接話を聞いているかのような文章。本書を手にとりページをめくってみると、よくある料理本とは違う感じがするだろう。

「今日、何にしようか」と考えながら、じっくり味わいたい1冊だ。

■高山なおみさんプロフィール

1958年静岡県生まれ。神戸市在住。料理家。文筆家。著書に、日記をまとめた『日々ごはん』、『帰ってきた 日々ごはん』シリーズ、『おかずとご飯の本』、『野菜だより』、『高山なおみの料理』、『料理=高山なおみ』、『実用の料理 ごはん』、『高山なおみのはなべろ読書記』など多数。絵本の文に、『どもるどだっく』、『たべたあい』、『それから それから』、『おにぎりをつくる』など。

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