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窓辺は小さなギャラリー、アートで生活に潤いを。

  • 2021.9.6
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南青山の路地を曲がった突きあたりにある白い一軒家。1階はギャラリー、2階と3階に暮らすのはギャラリーDEE'S HALLオーナーの土器典美。「靴を履いたままでどうぞ」と招き入れられて小さな階段を上ると、どこか海外のアパートメントに迷い込んだような錯覚に陥る。古いアンティーク家具とともに、家中そこかしこに並ぶアート作品に圧巻される。彼女の家に飾られている作品は、不思議とどれも温かい。前川秀樹の彫刻や小前洋子の立体作品の横には、1984年に発売された初代マッキントッシュのコンピューターが。「いちばん最初に使ったコンピューターだからなんとなく愛着があって。もう使えないんだけどね」と肩をすくめていたずらっぽく笑う。彼女の暮らしとアートとの距離は非常に近い。家の隅々まで、彼女の生活の延長線上に自然と作品がある。この暮らしに滲み出ているそれは、彼女流の美学なのだろう。

「アートを敷居が高いものと身構えずに取り入れているからかな。アートは必需品ではないけれど、暮らしの中にあることで生活が潤う。あればちょっと生活が楽しくなるようなものを、自然に家に置く感じ」

作った人の跡が見えるものや、思いが宿った力のあるものが好きだという。

「でもこういう仕事をしているとね、いちばん好きなものは絶対に自分の手に入らないのよ。自分の気に入ったものこそ、お客さんの手に渡るべきでしょ」

1. 窓辺は小さなギャラリー

彫刻家の前川秀樹が、ワークショップの際に制作したという像。作品というような大仰なものではないけれど、ラフな佇まいも気に入っているそう。

「小さいものが好きなの。小さいものって飾るところがなかなかないけど、窓辺がちょうどよくて」。小さなものが並ぶことで独特の存在感となる。

2. 美しいラグは身近な抽象画

アンティークのキリムの状態のよいところだけを切り取り、パッチワークで繋ぎ合わせたメメットアラスのキリムは、一枚一枚の柄の細かさに思わず見とれる。手前の赤いものは、さらに染め直した。床に敷くラグも、美しい抽象画のように目で楽しむのが土器流。

3. 作品を仰々しくせず、日常の一部に

窓の近くにラフに貼られた小林且典の作品は、日に焼けて変色している。額装せず、そのまま壁に貼っているのもチャーミング。「私は美術収集家や評論家ではないし、暮らしを豊かにするもののひとつとしてアートを捉えているから、気持ちがいいと思う場所に飾っているの」

前川秀樹の彫刻も、暮らしになじんでいる。

4. 思い出を飾る

10年前に亡くなったパートナーが集めていたガラクタのようなものを、友人の作家にお願いして時計に入れてもらった作品。部屋の作品やオブジェのひとつひとつにエピソードがあり、思い入れが詰まっている。

5. 石こそ愛しいオブジェ

週末は、石を拾いに遠方まで足を延ばすという。青森の海岸で拾った天然のメノウは、一カ所にまとめて並べて置くだけでアートオブジェとなる。「もし天気がよかったら、次の週末は糸魚川に翡翠拾いに行くつもり」

Yoshimi Doki|土器典美ロンドンでアンティークバイヤーとして活動ののち、1980年にアンティーク雑貨店「DEE’S ANTIQUE」を開く。2001年より、南青山にて現ギャラリーを主宰。Instagram:@dees2688

*「フィガロジャポン」2021年9月号より抜粋

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