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TOKYO2020がLGBTQ+アスリートのターニングポイントになったワケ

  • 2021.9.4

オリンピックは人類の祝典。世界中のスポーツファンが勝ち目のない選手を応援し、ベテラン選手の揺るぎない献身とモチベーションに感銘を受け、最後まで諦めない選手をたたえる。すべてのシーンが観客をドキドキさせるのは間違いない。でも、男子シンクロナイズドダイビング10m高飛び込みで金メダルを獲得したトム・デイリーが、パートナーのマティ・リーと表彰台に立ったときほど感動的なシーンはなかった。オーストラリア版ウィメンズヘルスより詳しく見ていこう。ゲイであることを2013年12月にカミングアウトしたデイリーは、母国イギリスだけでなく、LGBTQ+コミュニティーも代表していた。「自分がゲイであると同時にオリンピックのチャンピオンであることを心から誇りに思います。自分の性格上、若い頃は自分が何かを成し遂げるなんて、夢にも思いませんでした。その私がオリンピックのチャンピオンになれたのは、やれば何でもできるという証拠です」

長い間、LGBTQ+コミュニティーの権利を熱心に訴えてきたデイリーの努力は、偶然にも、LGBTQ+アスリートのターニングポイントと評された東京オリンピックで報われることになる。スポーツ情報サイト『Outsports』の統計によると、東京オリンピックには少なくとも172名のLGBTQ+アスリートが参加した。この数字はリオオリンピックの3倍以上。カミングアウトをしてからオリンピックで戦ったLGBTQ+アスリートの数は、2012年のロンドンオリンピックで23名、2016年のリオで56名。今回のオリンピックでチーム内にLGBTQ+アスリートがもっとも多かったのはアメリカ。イギリスは16名で第3位。

スポーツ界は、LGBTQ+コミュニティーの認知と受け入れが遅れていると言われていた。でも、この数年で急激に起きた社会的・文化的な変化はオリンピックにも波及した。『Outsports』共同設立者のシド・ジーグラーは『ガーディアン』紙に対し、オリンピック村のLGBTQ+アスリートから「自分の名前をLGBTQ+アスリートのリストに加えてほしい」という依頼が相次いでいることを明かした。前回のオリンピックでは、その逆の可能性のほうが高かったことを考えると、劇的な変化と言える。

「これは彼らがLGBTQ+であることを誇りに思っているからです。もう隠す必要のないことですし、彼らは(アスリート)コミュニティーの一部として認識されたいと思っています」とシーグラー。「TOKYO2020は、間違いなく(LGBTQを象徴する)虹色のオリンピックです」

『ガーディアン』紙によると、「ゲイアスリートのリストには1:8の割合で男性より女性が多く、女子サッカーだけでも40人以上。ゲイの男性アスリートには、飛び込みのアントン・ダウン =ジェンキンス(ニュージーランド)、馬術のエドワード・ガルとハンスペーター・ミンデルフート(共にオランダ)、ボートのジュリアン・ベノンスキー(アメリカ)がいる」。ウエイトリフティングでは、先日IOC(国際オリンピック委員会)から称賛されたトランスジェンダーのローレル・ハバードがニュージーランドを代表して戦った。

デイリーは勝利後の記者会見で、世間の注目を浴びながらゲイとして生きることの難しさを語った。「このオリンピックには、いままでのオリンピックよりカミングアウトした選手が多いです。私は2013年にカミングアウトしましたが、まだ若かったので孤独でしたし、人と違うため周囲から浮いている気がしました。社会の期待に沿うことは、昔から得意ではありません」

「いまはどんなに孤独でも、決して1人ではないことを若いLGBTQ+の人たちに知ってもらえたらと思います」

砲丸投げで銀メダルを獲得したレーベン・ソーンダーズ(アメリカ)も、“抑圧された人々”への仲間意識から、表彰台で腕を“X”にクロスした。黒人で、LGBTQ+の権利を積極的に提唱するソーンダーズは、「自分を主張する場がなく、毎日戦いながら生きている世界中の人々」を代表したいと語った。

LGBTQ+アスリートが増えたからとはいえ、まだまだやるべきことはある。今回の開催国である日本ではLGBTQ+コミュニティーの受け入れが遅れており、多くの国で合法化された同性婚が今も認められていない。LGBTQ+アスリートたちの功績とオープンな態度は、世界を奮起させている。英国女子ホッケーチームの前キャプテン、ケイト・リチャードソン=ウォルシュは『ガーディアン』紙に対して、「この話をすると涙が出そうになりますが、トム・デイリーが記者会見で『自分がゲイであり、オリンピックの金メダリストであることを誇りに思う』と言ったとき、心から『そうだ、そうだ』と共感しました。とても強く、パワフルなコメントです」次のオリンピックでは、さらにLGBTQ +アスリートたちの活躍が増えるかもしれない。

※この記事は、オーストラリア版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: Jessica Campbell Translation: Ai Igamoto

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