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アーティストの言葉を聞くことの価値を問う。林央子『つくる理由』

  • 2021.9.4

『拡張するファッション』から10年。「here and there」編集者、ジャーナリストの林央子の待望の書き下ろし『つくる理由』が発売された。90年代終盤から書いてきたものを集め、14年には美術展にもなった前作の刊行以降、10年の間に著者を動かすモチベーションとなったのは、“つくる理由”を共に探ることができるアーティストたちの言葉だったという。

現代アーティストの青木陵子から始まる取材は、竹村京、居相大輝、 山下陽光、PUGMENT(パグメント)、田村友一郎、L PACK.(エルパック)、金氏徹平、志村信裕へと続く。こうした同時代を生きる表現者との対話の記録は、アート、ファッションというカテゴリの枠にはめることなく綴られる。

装丁を手がけるのは、2017年に行われた、東京藝術大学公開講座(担当教員:竹村京)、林央子レクチャーシリーズ「つくる理由」のフライヤーをデザインした小池アイ子。表紙のモチーフとなったTシャツは、古着をリメイクし、あえて低価格で販売する、山下陽光による「途中でやめる」のもので、著者の私物だそう。

作家との出会いや取材場所までの道のり、対話、重ねたコミュニケーションから生まれた思考を写真資料と共に追っていくと、作り手と著者との関係性が浮かび上がってくる。そして、9組の“つくる理由”が、「アート作品にふれ、アーティストの言葉を聞くことに、なぜ価値をおくのか?」という著者自身の問いをめぐる旅の回答となる。

2020年秋からセントラル・セント・マーティンズ大学院で展覧会研究を学んでいる著者は、ロンドンで本書を完成させたという。コロナ禍で出口が見えないような日々を送る中でも、つくる行為に触れ、気づき、生きることを考えることが、少しずつ前へ進むことへとつながっていく。

『つくる理由 暮らしからはじまる、ファッションとアート』(DU BOOKS)
林 央子 著 2,530円

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