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アジア系ヒーローがついにマーベルに登場! ハリウッドの劇的な変化を象徴するアクション大作

  • 2021.9.3
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アジア系ヒーローがついにマーベルに登場! ハリウッドの劇的な変化を象徴するアクション大作
『シャン・チー/テン・リングスの伝説』 (C) Marvel Studios 2021

平凡な男がシャン・チーになる驚きをシム・リウ自身が体現

冒頭こそ、いつか見たチャン・イーモウやアン・リーの映画をスケール・アップした感じ? という既視感はあるが、サンフランシスコでホテルマンとして働くショーン(シム・リウ)と親友のケイティ(オークワフィナ)の日常の描写にはアメリカに暮らすアジア系の今が映し出され、独自の世界が動き出す。北米で生まれ育ってきた世代(ルーツと、現実に暮らす社会という2つの文化を持つ)の物語だ。

仕事帰りに飲んでカラオケで発散する、ごく平凡なショーンの秘めた能力は劇的に明らかになる。突如現れた正体不明の敵を武器も使わずに次々と倒し、巻き込まれた人々を危機から救う展開はスピード感があり、スリリングだ。武術の達人であることを隠して生きてきたショーン=シャン・チーは、親友で職場も一緒のケイティに問いつめられて過去を明かし、一度は逃げ出した自らの運命、そして悪に染まった父親と向き合うことを決意する。

主演のシム・リウは5歳で両親と中国からカナダに移民し、『パシフィック・リム』のエキストラからスタートして、母国カナダのTVシリーズなどで活躍し、本作に大抜擢された。
作品のヴィジュアルが初めて公開された時、実は「あれ?」と思ったのだ。駆け出しの頃は素材写真のモデルをしていたという経歴も頷ける、感じはいいけれどクセのない雰囲気。それがどうだろう、この堂々たる存在感。まさに、ショーンがシャン・チーになる鮮やかなサプライズを、リウ自身が体現する。軽やかさとシリアスのバランスが絶妙だ。

自分が誰なのかはわかっている。では、真の使命は何なのか? それを知るためのシャン・チーの彷徨は、生き別れになった妹との再会に始まり、亡き母の追憶、悪の組織「テン・リングス」を率いる父との対決へと進んでいく。その行程にずっと付き合うのがケイティだ。親友の秘密を知っても変わらぬ良き理解者として、冒険を共にするケイティは観客が自分を投影するキャラクター。ちょいちょい軽口を挟みながら精一杯アシストを続ける愛すべき相棒を演じるのは、『オーシャンズ8』『クレイジー・リッチ!』でパンチの効いたコメディセンスを見せ、『フェアウェル』ではルーツと向き合う主人公の心情をきめ細やかに演じたオークワフィナ。リウとのコンビネーションがチャーミングだ。

香港映画の大スター、トニー・レオンもついにハリウッド進出

シャン・チーの父親で、悪の組織を率いるシュー・ウェンウーを演じるのは、ウォン・カーウァイやジョン・ウー作品で知られる香港映画の大スター、トニー・レオンだ。90年代から映画好きの間では国際的な人気を得ていた彼が、最高の環境を得て、ついにハリウッド進出を果たした。微笑みながら声のトーンもほとんど変えず、静かに恐ろしい男のカリスマ性を魅せる演技は、さすがの一言だ。

監督は、母親が日系アメリカ人のデスティン・ダニエル・クレットン。ブリー・ラーソンが主演を務めた2作『ショートターム』『ガラスの城の約束』、マイケル・B・ジョーダン主演の『黒の司法 0%からの奇跡』などシリアスな作品を手がけてきた監督だが、大迫力のアクション・シーンの数々のテンポの良さ、ドラマに溺れ過ぎない緩急をつけた演出は見事だ。MCUのお約束で、今回のエンド・クレジットにもいろいろと出てくる。なるほど、こう来るか、という素敵な驚きはここにもある。

冷遇された時代もここ数年で劇的に変化

個人的に長年、ハリウッドはアジア系、それも北米生まれの移民に冷たいと感じていた。決していい意味だけではないエキゾティズムを求めてか、アジア系の重要な役に、わざわざ外国からスターを探してくる。もちろん彼らは実力あってこその起用であり、そもそも役柄自体が異分子的なものでもあった。それがここ数年で劇的に変化している。メインストリームでアジア系アメリカ人の物語が語られるようになり、ついにマーベルのヒーローが登場するに至った。

パンデミックという厳しい状況下がうらめしいが、このスケールを存分に堪能するにはスクリーンで鑑賞するのがベストな環境だ。安全に気をつけて、アクションもドラマも妥協ない完成度を楽しんでほしい。(文:冨永由紀/映画ライター)

『シャン・チー/テン・リングスの伝説』は2021年9月3日より公開。

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