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アルコ&ピース・平子祐希さんロングインタビュー。「嫁とのいちゃつきも、全部が教育につながっている」【後編】

  • 2021.8.30
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奥さんとは、 動物的な直感で付き合い始めました

2010年に太田プロに移籍したアルコ&ピースは、不定期にゲスト出演していたラジオ番組「有吉弘行のSUNDAY NIGHT DREAMER」(JFN)での活躍でにわかに注目され始め、2012年8月に始まった「アルコ&ピースのオールナイトニッポン0」(ニッポン放送)で熱狂的なリスナーを生んだ。 また、その年の年末に行われた「THE MANZAI」(フジテレビ)で3位に輝き、2017年には彼らがメインMCを務める「勇者ああああ」(テレビ東京)が始まった。

――事務所を移籍して状況は変わりましたか?

俺らは良かったっすねえ。あのままだったら、尖ったコントやったまま「アルピーさん、すげえ」と一部で評価されるだけで多分消えてったと思う。さらに上に先輩がいて、「お前らこうだぞ」って叱られながら引っ張り上げてくれる環境がないと、ライブシーンだけで終わってた。

――お世話になった先輩で言うと、有吉(弘行)さんですか。

有吉さんいなかったらもう消えてたでしょうね。今の仕事なんかも有吉さんのラジオきっかけでいろいろ拾われていったところが本当にある。

――どんな先輩ですか?

こっちの失敗を自分の失敗談を重ねて言ってくれるんですよね。「オメエらしょうがねえな」じゃなくて「難しいよなあ」って。「俺もできなかったんだよ、それ。大変なんだよな」って。 「ああ、この人が失敗してて、難しいっつってんなら、今このレベルで落ち込む必要ないんだな」という。計算上で言ってくれてんのかどうかはわかんないですけど。嫌になってもう投げ出そうってなっちゃうときも、「この人が悩んでたんだったら、そりゃ俺も悩むよなあ」と。 それですごい救われた感じがありましたけどね。一方的に居丈高に叱ってくるイメージかもしれないですけど、真逆。ああ、こういう叱り方っていうか諭し方、引っ張り上げ方があるんだなって。そういう先輩は初めてでした。

――ラジオで「平子る」(あるキャラに入り独特な言い回しでボケ続けること)のような言葉が生まれましたけど、そういう部分というのは意図して出していったんですか?

出してないです! めちゃくちゃ嫌です。だから俺はいっつも言ってるんですけど、「ボケに名前をつけた瞬間、そのボケは死に向かう」と。俺はよしとしてない。 だって、キャラを入れて喋ることなんて芸人には往々にしてあることで、それを独自性を持たせた名称をつけたりとか、あとは通常のボケでもものまねでも失敗でもスベりでも、全てにおいて「平子る」っていう言い方をされちゃうと、すごくイメージが固まっちゃって、自由度が狭まる。 まあ、それは、リスナーの中だけで広がっている言葉なんでまだ全然いいんですけど。そこまで定着してねえぞってなるから、それを嫌がることも恥ずかしい。難しいんですよね、そこに対する思いが(笑)。

アルコ&ピース・平子祐希さんロングインタビュー。「嫁とのいちゃつきも、全部が教育につながっている」【後編】の画像1

妻となる真由美さんと出会ったのが26歳のとき。どちらも第一印象は「最悪だった」と言うが、ひょんなことで再会したことから二人の運命が動き出す。

――挨拶代わりにハグした瞬間に「私たち、もともとひとつだったんじゃない!?」と思ったそうですね。

うん。これね、嫌なんですよ、どこ行っても、「ちゃんと教えてください」って言われるから(笑)。急にそこから信憑性がなくなる。でもそうとしか言えない(笑)。もうちょっとね、なんか具体的な知り合い方にすればよかったなあと思うんですけど、本当だから仕方ない。

――すぐ付き合い始めたんですか。

動物的直感みたいなもんですから、距離を置く理由がない。でも、服装からテンションから喋り方から、ものの考え方、捉え方から、キレイに全部合わなかったんです。合わな過ぎて5周ぐらい回ったのかも。嫌なCMをあえて見ちゃうみたいな(笑)。商品名が頭にこびりついて離れない。そのくらいのインパクトだった。「なんかいけすかないなあ」ぐらいなもんじゃなく、全部が嫌。「あり得ない」「つまんない男」って。 今考えると、ハグも普通のハグだった可能性ありますけどね。フリが効いてた分、「嫌いなやつにしてはちょっとしっくりくるなあ」というのを「めっちゃ相性いい」と錯覚したのかもしれない(笑)。

――その嫌いな部分っていうのは、ケンカしていくうちにどんどん直っていくんですか?

お互いに間を取りますね。僕はその頃、白シャツに色落ちしたジーンズみたいな、吉田栄作スタイル。で、彼女のほうはイケイケで。「つまらなくて嫌だ」、「イケイケ過ぎて嫌だ」っていうのがお互い少しずつ歩み寄っていったという感じですね。 「服装が地味過ぎてつまらない」って言うんならダメージジーンズをはいてみるとか(笑)。ずっと無地だったのが、英語が書いてあるTシャツも着ましたし。有楽町の丸井に行って一緒に選びましたよ、なんか「San Diego」とか書いてあるやつ(笑)。お互いの好みの中間どれだ? って模索しながら。それも楽しかったですね。コスプレの押し付け合いみたいな感じで(笑)。

――結婚はしばらく躊躇されたんですよね。

やっぱ俺はお金がないんで。責任も取れない。でも、向こうは「したい、したい」って勝手に一方的に話進めて。自分の両親にも向こうの両親にも怒られるのこっちですからね。相当、親とは揉めましたね。すごい叱られたし。

――奥様はなんでそんなに結婚にこだわった?

向こうも動物的直感で、「離しちゃいけない」っていう本能的なもんじゃないですかねえ。別に「結婚」っていう体裁を取らなくて も、「この人だな」っていう思いはあったので、役所に紙を提出するかどうかだけの違いだったんですけど、多角的に見たら、よくいる「結婚に憧れる女子」だったんでしょうね。行動力のある女性なんで「遅かれ早かれするんなら早い方がいいじゃん」っていう。 だから、コンビ組んだのも結婚も全部相手からで、ずっと受け身でしたね。俺もなんかの型にハマるっていうのが好きなんですよ。よくも悪くも所有物になる/されるっていうその締め付けが好き。 だから今、夫婦別姓とか問題提起されてますけど、俺はそこの押し付けがすごく心地いいタイプ。「平子」の姓は名乗ってもらってますけど、嫁の実家から徒歩1分のところに住んで、半マスオさんみたいな状態で、そこも俺は好きですね。

――不妊治療もされたんですよね。

5年ぐらいしたんじゃないのかな、ちょっとできづらい体質だと診断されて。あまりにもできないから、子どもができなかった場合、夫婦だけで費やせるお金と時間を計算して具体的に出してみたんです。「そしたら、夫婦二人でめっちゃくちゃ遊べるし、どこでも行けるね」って、いい方向に考えようとしてましたね。子どもひとりいるってそんだけのことなんだなっていうのをそこで実感しました。

――初めてのお子さんができたときはどんなお気持ちでしたか。

俺は子どもが2歳ぐらいになるまではふわふわしてて、実感がなかった。別に悪い意味じゃないですけどね。すごく大切に育てていく中でも、ふと、意識しないと、あれ? パパなんだ? とか、ふと思う感じでしたね。

――どんなお子さんですか?

上の男の子が小3で、女の子が小1。上の子はちょっと落ち着いた感じで、下の女の子はキャッキャしてますけど。俺と嫁がそのまま乗り移った感じ。 でも共通して優しい子に育ってくれてます。ちょっと長めに使った絨毯でも捨てるときは涙ぐむような、ものを大切にする子どもたちです。

――どうしても夫婦ゲンカもあるかと思いますが、子どもの前ですることは?

子どもの前では努めてしないようには心がけてますけど、やっぱりこっちが思う以上に子どもって敏感じゃないですか。寝てたとしても、怒鳴ってるわけじゃないのに声のトーンでハッとしてケンカだなって気づいたら、目覚めて眠れなくなっちゃうとか。それは絶対あると思うんで、「仲直りしたし、ケンカっていっても別にそんなに大きいケンカじゃないからね」って伝えます。子どもの頃って夫婦ゲンカをチラッと聞くだけでもすごく重大なこと喋ってるような、家庭崩壊につながるようなイメージ持っちゃう。 だから「よりよくするために話し合ってて、ちょっと言葉が荒くなっちゃってる部分はごめんね」とはもう先に伝えてますね。大きいケンカ聞かれちゃったときには、ちゃんと二人で謝るようにしてます。「心配しなくていいからね。でも嫌だよね、ごめんね」って。そんなときは子どものリクエスト聞いて「ホットケーキ食べたい」って言ったら「じゃあみんなで行こう」って。

アルコ&ピース・平子祐希さんロングインタビュー。「嫁とのいちゃつきも、全部が教育につながっている」【後編】の画像2

――コロナの影響で家にいる時間が多くなったと思いますが、いかがでしたか?

今まで知らなかった子どもの昼間の部分とか、こっちの昼間の部分とか、ママの昼間の部分とか、そういうのを共有できたのが良かったです。家にいること自体はそれほど苦じゃないですね、うちは。ママがカーテン引いてお菓子用意してプチ映画館作ってくれたり。そういうレクリエーション的なものはママが積極的にやってくれるんで。あとはウォーキングして公園行ったりお散歩したりっていう、できることで時間潰してますね。

――将来の家族像はありますか?

やっぱ僕ら夫婦の背中見て、子どもたちが同じように「夫婦仲良く、家庭を大事にする」っていう家族を作ってくれたらいいなあって思いますね。嫁とのいちゃつきも全部が教育なんで。うちもそうだし、嫁の両親もそうだし。やっぱ両親の仲の良さって伝染してくるし、それがスタンダードになっていく。それを見せつけるのが義務だし、継承してほしいなって思います。

――子どもが独立したあとのことは考えますか?

ずっとお金なくて、普通の人と結婚してたら享受できてたものを嫁と一緒にゆっくりやっていきたいですね。たとえば新婚旅行は、嫁の要望でイタリア行ったんですけど、やっぱ当時は渡航費だけでもうほぼほぼ金がなくなっちゃって。向こうに行ってもスタンドのケバブ食って、水飲んでっていう旅行だったんですよ。せめて、ヴィトンの一つぐらい買ってあげられるような、ちょっといいものを食べられるような旅行をしたいなって思ってます。

INFORMATION

『今日も嫁を口説こうか』 平子祐希/著 扶桑社 1430円 結婚14年目となる現在も、交際2か月目の熱量をキープしているという平子さん。そんな芸人一の愛妻家が綴る、夫婦愛をテーマにしたエッセイ。『家事なんてデートみたいなもんだ』など、金言が満載。

インタビュー/てれびのスキマ 撮影/馬場わかな(kodomoe2021年4月号掲載)

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