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資産運用は金利をチェックすればわかる 日米金利の動きと株価の関係

  • 2021.8.30
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資産運用をする際、チェックをしておきたいことはさまざまありますが、なかでも金利は重要な項目です。保有している株や債券といった資産について、売買のタイミングなどの判断は、金利が目安になります。

金利はわかりやすい指標ですが、実は奥が深いもの。それは、日本国内だけではなく、アメリカの金利の動きに影響を受けることも理由のひとつです。
今回は、資産運用に欠かせない金利のことと、日米金利の動きと株価の関係について、実例を交えてお伝えします。

そもそも金利ってなに?

金利とは、いわば「お金の賃貸料」のことです。
今、お金が欲しいのに手元にない、という時にはどこかからお金を借りることになります。借りた後は、金利を上乗せしてお金を返します。つまり、金利はお金を借りるための費用=コストと言えます。

たとえば、マイホームを購入したいけれどもお金が足りない時には、住宅ローンを組んで金融機関からお金を借ります。金利2%の30年ローンで2000万円を借りたら、返済は2000万円に2%の金利分を上乗せして払います。
なぜ2%の負担をしてもお金を借りるか。それは、今マイホームが欲しいからですね。

逆に、今すぐには使わないお金がある場合はどうするでしょうか。個人の場合、金融機関に預貯金として預けておくことが一般的です。
金融機関は、多くの預貯金を集めて、その資金を必要な人に貸付をして利益を得ています。
つまり、預貯金をすることは、金融機関を通じて間接的にお金を貸しているようなもの。そのため、預貯金をすれば金利分、お金を増やすことができます。

では、金利はどのように決まるのでしょうか。
それは、主に需要と供給のバランスで決まります。お金を借りたい人(需要)が、貸したい人(供給)より多くなると、お金の需要が増えて、金利は上昇します。
お金を借りたい人が多ければ、金利を上げても借りてくれるからです。

しかし、金利が高くなりすぎると借りてくれる人が少なくなります。
住宅ローンの例でいえば、金利が高くなると返済額が増えてしまうため、マイホームのランクを下げて借り入れ金額を減らしたり、マイホーム取得を先延ばしにしたり、という判断になってしまいます。

そうすると、逆に金利は下がっていきます。金利が下がれば、お金を借りたい人が増えてきます。金利の低い今がチャンス、と住宅ローンを組む人も増えるでしょう。
そしてお金を借りたい人が増えると需要が増えて、金利は上がっていく…といったように、金利は上がったり下がったりを繰り返していきます。

長期金利と短期金利

さて、金利には長期金利と、短期金利があります。
長期金利は、金融機関が1年以上のお金を貸し出す時の金利です。需要と供給のバランスや、物価の変動、短期金利の動きなどの長期的な予想で変動します。
長期金利は、1年以上の定期預金や、住宅ローンなどの長期のローンの金利に影響があります。

新聞やテレビなどで報じられている長期金利は、10年物国債の利回りです。10年物国債とは、貸したお金が10年後に戻ってくる国債のこと。長期金利の指標になっています。
住宅ローンの金利は、借りる時の金利なので低いほうがいいですが、資産運用として10年物国債に投資=貸すなら、長期金利は高いほうがいいと言えます。

短期金利は、金融機関が1年未満のお金を貸し出す時の金利です。短期金利は、日本銀行の金融政策によってコントロールされています。
指標は、無担保コールレート翌日物の金利です。これは、金融機関同士が、無担保で資金を貸し借りするときの金利のことです。短期金利をコントロールすることによって、市場経済の安定を調整しています。

短期金利は金融政策で決まりますが、長期金利の動きは将来に向けての予想が影響し、一般的に短期金利が上がる前に長期金利が上がりやすい傾向にあります。
資産運用でチェックするべきは、この長期金利です。

金利と株価の関係

長期金利と株価は、密接な関係があります。一般的に、長期金利が下落すると、株価は上昇します。それは、投資マネーが債券から株式に流れるからです。

たとえば、長期金利が3%から1%に下がったとします。すると、10年物国債などで運用すると今まで3%の運用益が得られるところ、今後は1%しか増えません。そのため、多くの投資家は債券ではなく、株式で資産運用をしようと考えます。
すると、株式が多く買われ、株価が上昇していきます。

逆に、長期金利が3%から5%に上がったらどうなるでしょうか。
株式は債券よりもリスクが大きい投資です。そのため、長期金利が上がると、投資マネーは株式から債券に移り、株式が多く売られます。すると、株価が下落していきます。
このような傾向をふまえて、長期金利の動向を見ておくと、株式の売買のタイミングを判断するのに役立ちます。

日米の金利と株価を比較してみよう

では、2021年7月末時点で、日米の長期金利、株価はどのようになっているでしょうか。
10年物国債は、日本国債は0.019%、アメリカ国債は1.226%です。
2011年からの10年の長期金利の推移を見ると、日本はずっと低く現在も下がり傾向。アメリカは、上がったり下がったりを繰り返しながら、現在は下がり傾向です。

長期金利の推移(2011年8月〜2021年7月・月次)
長期金利の推移(2011年8月〜2021年7月・月次)

表:Investing.comのデータより筆者作成(日本国債10年・米国債10年は債券利回り)

日本の長期金利はアメリカに比べて低水準ですね。ここには、将来期待される経済成長率や物価上昇率の違いが表れています。
日本は、ずっとデフレが続いていて、脱却する見通しは感じられません。一方アメリカの経済成長は期待されています。そのため、日本の長期金利はアメリカよりも低水準なのです。

では、株価はどうなっているでしょうか。それぞれの株価指数から見てみましょう。
2021年7月末時点の株価指数は、日本が1901.08(TOPIX)、アメリカは4395.26(S&P500)です。

株価指数の推移(2011年8月〜2021年7月・月次)
株価指数の推移(2011年8月〜2021年7月・月次)

表:Investing.comのデータより筆者作成

また、10年間の推移をみると、日本は横ばいですが、アメリカは上昇傾向であることがわかります。

TOPIXは、東証株価指数とも言われ、日本の代表的な株価指数です。東証1部に上場している全銘柄を対象として計算しているので、市場全体の値動きを表しています。
TOPIXはコロナ禍でいったん下がりましたが、その後はゆるやかに上昇、その後は横ばいです。

S&P500は、ニューヨーク証券取引所、NASDAQに上場している銘柄から代表的な500銘柄の株価を指数化したものです。
世界中が影響を受けたコロナ禍で、アメリカでも株価が下がりました。しかし、ワクチンや医療体制の整備などが進み、経済成長も期待できると市場からの判断もあり、株価は上昇しています。

株価上昇の理由は、長期金利の下落とも関係があります。
長期金利と株価指数のグラフを合わせて見てみましょう。

長期金利と株価指数(2011年8月〜2021年7月・月次)
長期金利と株価指数(2011年8月〜2021年7月・月次)

表:Investing.comのデータより筆者作成(日本国債10年・米国債10年は債券利回り)

日本では、2014年に追加金融緩和策が発表され、金利は下落、株価は上昇しました。
一方、アメリカでは、2018年まで高水準だった金利が下落したあと、株価指数の上昇が鮮明になっています。

お金は低いところから高いところへ流れる

投資の格言に、「お金は低いところから高いところに流れる」という言葉があります。
これは、投資マネーは金利が低いところから高いところに移っていく、という意味です。
長期金利が低くなり、10年物国債で運用してもお金が増える見込みがなければ、より高い金利が見込める株式市場へと流れるのは必然とも言えるでしょう。

しかし、金利が高い投資先はリスクも高いことが一般的です。
いくら高い金利を示されても、信用度が低い国の国債や、経営状態が右肩下がりの企業の社債や株式を買おうと思う人は少ないでしょう。
金利とリスクはトレードオフの関係でもあります。バランスをとりながら、投資マネーはより高い金利を求めていきます。

金利の差は、債券と株式だけではなく、国による違いもあります。
長期金利は日本よりアメリカのほうが、高い水準で推移しています。そのため、日本より高い金利のアメリカにお金が流れていきます。

日米の金利差の4つのパターン

日本とアメリカでは、お互いに影響を与えながらもそれぞれに市場を持ち、金融政策がとられています。では、両国の金利が上下した場合、株価にはどのような影響があるでしょうか。以下4つのパターンが考えられます。

日本の金利:上昇・アメリカの金利:上昇

日米とも金利が上昇傾向にあるのは、景気がよくなる期待感が大きくなっていることを表します。企業の収益が上がって、その後は株価も上昇すると見込まれます。

日本の金利:上昇・アメリカの金利:低下

これまでの傾向として、日本はアメリカに比べて低金利ですから、日本の金利が上がってアメリカの金利が下がれば、日米の金利差が小さくなっていく状態です。
投資マネーは日本に流れ、日本の株価も上昇していきます。

日本の金利:低下・アメリカの金利:上昇

逆に、日本の金利が下がってアメリカの金利が上がると、日米の金利差はますます広がっていく状態です。投資マネーは日本から離れてアメリカに流れます。日本株は売られ、株価も下落していきます。

日本の金利:低下・アメリカの金利:低下

日米とも金利が低下すると、投資マネーは株式市場に流れ、株価は上昇します。
株価は企業価値を表すものですが、低金利を背景とした株高は、実態経済よりも高水準の株価になりがちです。そうなると、今度は株価の下落につながるでしょう。

このように、金利と株価は影響を及ぼしあいながら、上昇と下落を繰り返します。
金利の動きから投資マネーの流れを先読みすれば、投資判断に生かせますね。

今後の金利はどうなる?

では、今後の金利に大きな影響を与える、日米の金融政策について見ていきましょう。

日本の金融政策は、消費者物価の前年比上昇率2%を目標にしていますが、なかなか実現されず、デフレの状態が続いています。そこにコロナ禍が加わり、景気は停滞している状況です。
そこで日銀は、短期金利をマイナスにするとともに、長期金利が0%程度で推移するよう国債を上限なく買い入れて、市場に資金を供給する金融緩和策を維持します。

今後も金利は低い水準が続きそうですが、市場には多くの投資マネーが流入します。
お金は低いところから高いところへ流れるので、債券は売られて株式が買われ、株価は上がっていくのではないでしょうか。

アメリカでも同様の金融緩和策がとられていますが、2022年1月にかけて、緩和を縮小していくとの見方が強いようです。雇用や消費の回復にともなって、金融緩和策は縮小していく方針ですが、時期が早まるのではないかと見られています。
緩和策が縮小されれば、アメリカの利上げにつながります。急上昇ともなれば、乱高下する株式もあるでしょう。アメリカの金融政策は、今後の動きに注目する必要がありそうです。

投資マネーは国境を越えて流れます。金利は日本だけではなく、日米の動きにも目を配り、投資判断に生かしていくようにしましょう。

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