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派遣社員を辞めて「自分らしい」キャリア形成する方法【ひとみしょうの余談ですみません】

  • 2021.8.27

コロナ禍によって収入が減った人や、職を失った人もおいでかと思います。

そのような人は、必然的に、ご自身のキャリアについて考えざるをえないのではないでしょうか。考えなしに「食うため」に急いで職安に駆け込む人もいると思いますが、でも少し時間があれば、考えるでしょう。

さて、今回は、キャリアというものをどう捉えるべきなのかについて、一緒に見ていきたいと思います。

大学の先生が教えない「キャリア形成」

いま、多くの大学にはキャリアカウンセラーが在籍しています。たいていは経営学修士、博士といった、ビジネス系の大学院に学んだ方が大学のキャリア支援センターの准教授などをなさっている。そういった印象があります。

経営学を学んだ先生ですから、必然的に、カウンセリングの内容はビジネス寄りの話になります。

たとえば、自分が就職したい業界の動向をチェックしよう。自分がこれまでやってきたことの棚卸をしよう、など。

しかし、そのさらに奥、というか根本にあるのは、言うまでもなく、「私の人生」です。「私」は、本当はどういった仕事に就きたいと思っているのか?本当はなにをしたいと思っているのか?

この「本当は」に関する考察抜きに、キャリア形成はできません。

「本当は」とはなにか?

わたしたちは常に葛藤しています。

たとえば、「より生活費を得やすい、あまり好きになれない職業」と「お金になりにくいけどやりがいを感じる仕事」との間で、葛藤しています。

大学の先生もそれは知っているようで、だから、たとえば、芸術学部の学生に対して「好きを仕事に、という以外の選択肢を持とう」と教えるそうです。

がしかし、そう言われても、やっぱり「好き」という気持ちは消えてくれず……。

というか、葛藤こそが、キャリア形成におけるもっとも根源的な「問い」だから、消えるとか消えないではなく、葛藤について考えて、葛藤をどうにかすることこそが、キャリア形成そのものだと言えます。

コロナ禍によって収入が減った人や職を失った人は今、「本当の自分」と対話するチャンスの前に立っています。これまでは日々の仕事に追われて隠していた「本当の自分」を表に出して、それと対話するチャンスの前に立っています。

私たちは生まれてから死ぬまでずっと葛藤する生き物

では、「本当の自分」の言うことを、わたしたちはどこまで受容すべきなのでしょうか?

たとえば、本当は絵本作家になりたい(でもそれでは食えないだろうから、やっぱり次も大手派遣会社に仕事を紹介してもらおうかな)、と思って実際にそうするのか?

キルケゴールという哲学者によると、私たちは生まれてから死ぬまでずっと、葛藤する生き物だと言います。

つまり、たとえば、「本当の自分」が「絵本作家になりたい」と言う。対して、もうひとりの自分が「それでは食えないから派遣社員になるべき」と言う。このような葛藤の中に「死ぬまで」いるのです。

実際に、死期が近い人の中には、「生活のためにお金を得る仕事より、本当にやりたい仕事をすればよかった」と後悔する人がいると聞きます。

では、私たちはどう生きるといいのでしょうか?

とりあえず食っていかないといけないのですから、まずは生活費を得るための仕事を探す。同時に、絵本作家になる道を模索する(たとえば、定時であがれる仕事に就いて、夜は絵本を描く生活をはじめるとか)。

葛藤をなかったことにしてしまわない

この話のポイントは、葛藤をなかったことにしてしまわない、ということです。

就職支援センターの修士号を持つ偉い先生がなんと言おうと、あなたの葛藤は死ぬまであなたに付きまといます。

そこで大切なことは、葛藤を見て見ぬふりをしないということです。ちゃんと「本当の自分」の言い分にも耳を傾け、ならかの現実的な対処をする、ということです。

それを怠って、「なんとなく食える生活」に甘んじると、先にご紹介した死期が近いのように後悔するしかなくなります。

誰にとっても葛藤は苦しいものです。でも、その苦しさ抜きに「本当のキャリア形成」はなされない。

そういうシビアな現実があるのだ、ということだけでも、最低限知っておいていただきたいと思います。

「やりたいことを仕事に」とか「キャリアアップセミナーを受ければなんとかなる」なんていう甘い言葉に騙されたら人生が台無しになります。

(ひとみしょう/作家・キルケゴール協会会員)

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