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人気セレブに大流行!カスタムファッションブランドに注目

  • 2021.8.26
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今季のオートクチュールコレクションで見た最高の瞬間のいくつかは、モデルたちがそれぞれのルックナンバーを持ち、空を遮るような大ぶりのハットをかぶってアトリエを駆け抜けていた、栄光の時代を思い起こさせるものでした。

オートクチュールがインスピレーションを与えてくれる存在である一方、パリのアトリエで作られたカスタムメイドのアイテムを手に入れるのは、多くの人にとって夢のまた夢。けれど、近年登場した新ブランドから、イラストや刺繍、ペイントを施した、オーダーメイドや一点物のアイテムを手に入れるのであれば、実現可能かもしれません。

たとえば、ペイントを施した「ジュリエット・ジョンストン(Juliet Johnstone)」のパンツは、デュア・リパ、ベラ・ハディッド、ケンダル・ジェンナーといったストリートスタイルを牽引する3人組が着用しています。

また、「スモール・トーク・スタジオ(Small Talk Studio)」のニコラス・ウィリアムズは、ヴァージル・アブローやモデカイ・ルビンスタイン(通称ミスター・モート)といったファッション関係者のために、個別のイラストや刺繍を施した作品を制作している(「スモール・トーク・スタジオ」のデザインには、富士フイルムの箱やマスタードの容器などが描かれている)。

少量生産や、クラフトとクチュールの融合といった考えに基づいて生まれる作品は、パンデミック前から続くハンドメイドのトレンドと相まって、一部のファッショニスタたちの間で“イット”アイテムに。

クチュールを取り扱う高級雑誌に対して、手作りのZINE的なものを想像してもらうといいかもしれません。装飾された「ボーディ(Bode)」のパンツや、ペイントが散りばめられた「エス・アール・スタジオ(S.R.Studio)」のジャケットが有名デザイナーのロゴよりも求められている世界では、ウィリアムズとジョンストンの作品が、ファッションの巨匠から自分だけのオリジナルアイテムを贈られるのと同じ価値があるということ。

ブルックリンを拠点とするウィリアムズは、祖母から手刺繍の基礎を学び、2017年に自身のブランドを立ち上げました。友人のフィル・エアーズと協力して、今ではビジネスを成功させています。1つのアイテムを制作するのに通常2~4日かかり、ウィリアムズとエアーズは一度に3~4種類のデザインを共同で開発しているそう。

ウィリアムズは「お互いが納得するデザインに到達するまで、二人の間で作品を行ったり来たりさせ、新しいイメージのレイヤーをどんどん追加していくんだ」とその制作過程を語っています。

一方、LAを拠点とするジョンストンは、もともとアーティストとしての教育を受けてきたため、ファッションのバックグラウンドを持っていませんでした。しかし、ワークウェアブランド「カーハート」や「ディッキーズ」のパンツに絵を描いて履いていると、街で人々に呼び止められ、そのパンツについて質問されるようになったそう。

そこで、パンデミックの直前に、自分の作品をInstagramに投稿し始めたところ、すぐに依頼を受けるようになったという。ベラ・ハディッドが思いがけず彼女の写真に「いいね!」を連発したとき(後にジョンストンは「真相はわからないけれど、彼女は隔離中に退屈していたから、『この子を有名にしよう』と思ったのかもしれないわ」と話している)、ジョンストンはベラがパパラッチの写真で着てくれるかもしれないと考え、共通の知人を通じて彼女にパンツをプレゼントしたそう。

代わりに、ベラはその着用画像を自分のInstagramに投稿。「それをきっかけに、他のモデルやセレブ、セレブのスタイリストなど、色々な人から注文がくるようになった」とジョンストンは振り返ります。

その後、自身のウェブサイトを立ち上げ、今では「ラッパーからお母さんまで」幅広い層に支持されているそうで、「誰かのお母さんやおばあちゃんのためにカスタムすることもあれば、トラヴィス・スコットから注文を受けたこともある」と語っています

サイケデリックな動植物や、「LOVE」「EARTH」といった言葉をモチーフにした彼女の手描きの作品は、完成までに何日もかかるという。少量生産であることに加えて、サマー・オブ・ラブ(ヒッピー文化から生まれたムーブメント)のノスタルジーも魅力の1つ。ジョンストンは「世界が本当に暗くて怖い時期に、蝶やユリの花が描かれたパンツを見るのは素晴らしいこと」とコメント。

二人のデザイナーは、自分たちの成功と、人々の消費に対する考え方の変化を、直接結びつけています。ジョンストンは「特にパンデミックに見舞われ、トラウマになるような転換期となり、誰もが経験したことのない困難な年に、人々はサステナブルで、小規模で、心のこもったブランドや製品を買うことに興味を持ち始めていると思う。そして、特別感を得ようとしている」と語りました。

彼女のようなブランドが成功しているのは、「私たちが依存している大量生産の文化から、人々の心が離れていっているから。アマゾンプライムやファストファッションの時代に、少しだけ特別で、ストーリーのあるものを求めているのだと思う」と説明。

ウィリアムズは次のように述べています。

「パーソナライズされた一点もののアイテムは、サステナビリティや公正な労働慣行について、怪しげな主張をしている大手ブランドの代替品でもある」
「僕たちのような事業は、顧客と作り手のつながりがより直接的で透明性が高いからね。僕らのビジネスは、規模を拡大できるわけではないから、必ずしもファストファッションが抱える問題を解決するようなものではありません。けれど、大規模なファッション業界が淘汰されるまでの暫定的な選択肢としてはいいんじゃないかな」

両者とも、当面は比較的小規模で地域に根差した自社ブランドでの活動に満足しているようだが、こうした姿勢は、常に拡大が求められる今の時代において、とても新鮮に映る。ジョンストンは、「さまざまなブランドからコラボレーションの話を持ちかけられている」と言うが、適切な機会を見計らっている段階なので、まだ参加していません。

また、「靴やブーツ、財布など、変わったものにペイントしてほしいという人」から、週に何百通ものDMやメールを受け取っているというが、「自分のブランドに合わせて効率化するようにしている」とのこと。最初はアップサイクルされたアイテムを使っていたが、現在はオリジナルのカットソーも制作していて、近いうちにシルク素材へのハンドペイントにも挑戦する予定なのだそう。

ウィリアムズは以下のように語っています。

「意外にも、ヴァージル(・アブロー)のためにアイテムを作ったことが、直接的に僕の活動の幅を広げたわけではなかった」
「けれど、それがブランドに多大なる信頼性を与えてくれたことは間違いない。それに、とても名誉なことだったし、『スモール・トーク・スタジオ』の可能性を再考するきっかけとなった」
「当時、(ヴァージルが手がける)『オフ-ホワイト』の次期コレクション用にいくつかのアイテムを一緒に製作するという話もあったけど、ヴァージルがあまりにも忙しくて実現できなかったんだ」

さらに、「また一緒に仕事をする機会があれば、連絡してくれると思う」と加え、コラボレーションには前向きな姿勢を示しました。

※この翻訳は抄訳です。

Translation: Masayo Fukaya

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