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小林エリカの文房具トラベラー vol.09「金銀」

  • 2021.8.26
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出典 andpremium.jp
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私には鴉の血が流れているのやもしれぬと思うほど、光物の魅力には抗いがたい。金銀キラキラがピカピカが好き。それが例え本物のダイヤモンドでなくたって構わない。私はとにかく輝くものが好きなのよ
ひとくちに金や銀といえどもその差は無限大。ちょうどイヌイットが白の種類を事細かに見分けるように、私のような鴉人間は口うるさい。
イソップ物語のガチョウが産む卵のような金色、古墳の中に眠る鏡のような銀色、野原一面に降り注ぐ太陽のような金色、海を泳ぐコハダの背中のような銀色、ほら、夜空を見あげたときの星の色みたいな、そんな色々が欲しいのよ。
しかしながら、光を紙の上に定着させようというのは至難の業だ。輝きをペンやインクなんかの液体で再現しようというのがそもそも無謀というものである。とはいえ、それでもそんな我が果てしない欲望を叶えてくれる筋金入りの文房具たちがこの世には存在するのだ。その精鋭たちの放つ輝きを見るたびに、私はうっとりとその光に吸い込まれそうになる。

左/絵の具は〈吉祥〉の日本画材料顔料が好き。赤金もあり。中/友人から教えてもらったチェコ〈centropen〉の水性金銀ペンは発色も使い勝手も最強! 右/英国の〈WINSOR & NEWTON〉のインク壺シリーズの可愛さは無敵。

edit : Kisae Nomura
※この記事は、No.10 2014年8月号「&STATIONERY」に掲載されたものです。

&STATIONERY

作家・マンガ家 小林 エリカ
出典 andpremium.jp

シャーロック・ホームズ翻訳家の父と練馬区ヴィクトリア町育ちの四姉妹を描いた『最後の挨拶 His Last Bow』(講談社)発売中。2021年夏、はじめての絵本『わたしは しなない おんなのこ』(岩崎書店)刊行予定。

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