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「仕事の棚卸」とはじつは何をすることなのか?【ひとみしょうの余談ですみません】

  • 2021.8.22

コロナ禍によって職を失ったり、なんか転職したいと思った場合、「次の仕事なにしよ」と思い、場合によっては履歴書や職務経歴書を書くと思います。

そのとき、私たちは頭のなかで「仕事の棚卸」をします。

仕事の棚卸とは、これまで自分がやってきたことを思い起こす作業のことです。

今回は、その仕事の棚卸とは、じつは何をすることなのか、について一緒に考えてみたいと思います。

本当の仕事の棚卸とは

仕事の棚卸をやるときは、ひとりでやらないで、誰かと一緒にやった方がいいと言う人がいます。

たとえば、あなたが「パワポで資料しか作ってこなかった私はたいした仕事をしてこなかった」と思っていても、人によっては、パワポで資料を作ることのできる能力は「すごい」のだそうです。ようするに、そういうスタッフを欲しがっている会社があると。

なので、「自己評価」のみならず「他者の評価」も含めて、棚卸をした方がいいのだそう。

がしかし、本当に大切なことは、自分の過去を振り返りつつ、「本当はどんな仕事をしたいのか」を知ることです。

つまり、仕事の棚卸とは、これまでやってきた仕事を振り返ることを通して、すでに心の中に巣くっている「本当にやりたいこと」を言語化して表に出すことです。

仕事に関するわたしたちの葛藤

いま、経営系の大学院が人気らしく、そこを出た人の中にはキャリアカウンセラーになる人がいます。それこそ、転職したい人に対して「仕事の棚卸」のお手伝いをしたり、これまでのキャリアから次の仕事を見つけるお手伝いをする、それがキャリアカウンセラーの仕事です。(それ以外の仕事もたくさんしているようですが、ここではそのことだけに話を絞りたいのでそう書きました)。

そのキャリアカウンセラーに相談して、うまくいく人といかない人がいます。後者の人はキャリアカウンセラーの仕事を「机上の空論」と揶揄します。「私のキャリア」という「過去のデータ」を大学院で学んだ知識で加工して、なにか有益そうなことを言ってお金をもらえていいね、なんて言います。

ホントはそうじゃないのだけれど、でも、まあ、そう言いたい気持ちもわからなくはありません。

なぜなら、私たちはつねに「本当はこういう仕事をしたい」という気持ちを心の奥底に隠し持っているからです。その気持ちと、「現実的に食っていきやすい仕事」とが、心の中で葛藤し、その結果「現実」がつねに勝つ。勝ってもなお葛藤は消え去らない。これが私たちの多くの心の中だからです。

なので、仕事の棚卸とは、「本当はこういう仕事をしたい」という気持ちを何年間隠し通してきたのか?を確認する作業でもあるのです。

善く生きたいとなぜか思ってしまう自分の心の中の自分

たとえば、本当は絵本作家になりたいのに、それでは食えないと思って派遣社員を選んで、そろそろ次の更新の時期なのにクビになりそうな女性の場合。

彼女は契約が更新されない状況に焦ります。「やっぱり」更新なしか、ああ、来月からどうやって家賃払おうか、などと思います。

同時に、絵本作家と、次なる派遣の仕事を、頭のなかで天秤にかけます。直後、「やっぱ絵本作家なんかじゃ食えないしなあ」と思います。で、派遣会社にメールして次の仕事の紹介を得ようとします。が、直後、「また派遣か。あ~、どうやったら絵本作家になれるのだろう?」と思いため息をつきます。

自分の「キャリア」を考えるとき、わたしたちは「よそゆきの顔」で考えます。

しかし、わたしたちが本当に向き合うべき相手は、対話すべき相手は、心の中にいる「本当はこういう仕事に就きたい」と渇望している自分なのです。

「本当は~」という気持ちは、「より善く生きるにはどうすべきか」と言い換えることができます。

なぜなら、仕事とかキャリアという「表層」の奥には、「善く生きたいとなぜか思ってしまう自分の心の中の自分」が潜んでいるからです。

※参考 ひとみしょう『自分を愛する方法』玄文社(2020)

(ひとみしょう/作家・キルケゴール協会会員)

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