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本当に価値あり? 髪、肌、爪のためのサプリの真実とは

  • 2021.8.20
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美容サプリをまだ購入したことがない人でも、宣伝を見たことある人はいるはず。セレブの支持やインフルエンサー、ソーシャルメディアマーケティングのおかげで、髪や肌、爪のビタミンのニーズは爆発的に増加した。マーケティング調査会社、Goldstein Researchの報告によると、2016年の業界規模は約3,800億円で、2024年中には約7,400億円に上ると予想されている。

けれども、粉末が入った錠剤やフルーツ風味のグミ1本で、ツヤのある肌や、輝く髪、キレイな爪が手に入るの? あまりにもいい話のようにも思えるけれど、一部の専門家によると、それは本当かもしれない。

美容サプリには標準化された用量や規制がなく、それらの製品は一元化されたデータベースや管理機関によってきちんと確認されていない。実際、2020年に行ったある研究では、半径約4.8キロメートル内にある7つの店舗を調査した結果、「ビタミン、ミネラル、食品エキス、植物性成分、動物性成分(コラーゲン、フィッシュオイルなど)、アミノ酸、ホルモン、異なる微生物菌株」などの異なる225種類の成分を含む、176種類のサプリが発見された。これらの調査結果は、美容サプリの長期的な有効性に対する知識不足や栄養の“過剰摂取”への懸念を引き起こした。ビタミンやミネラルが不足していないのにも関わらず、さらに摂取することは有害になる可能性があるそう。

「多くのサプリの服用量は1日の推奨摂取量の何倍もあります」と話すのは、スキンケアブランドAtolla Skin Labの共同創設者兼公認皮膚科医のラネラ・ハーシュ医師。ハーシュ医師いわく、特定のビタミンが不足している場合(血液検査で医師が確認する必要あり)、それを補うことは有効だそう。ただ、実際にはその必要性はまれで、「皮膚科学における大抵のサプリメントは有効性を証明するデータがない成分が使われています」とハ―シュ医師は説明する。

スキンケアブランドのSurface Deepの創設者で公認皮膚科医であるアリシア・ザルカ医師は、特定のニーズがあった患者に改善が見られたことから、自身の診療でサプリメントを使用している。「けれども肌や髪、爪が改善しても、それがサプリメントによるものなのか、その他のポジティブな変化によるものなのかは判断が難しいところです」とザルカ医師。ゆえに、ザルカ医師は結果についての約束は控えめにしているそう。

ビオチンのような特定のビタミンは髪の成長を助け、その他亜鉛などは肌を改善する可能性があるけれど、これらを1つのボトルに詰め込むのは混乱を招いてしまう。そのため、どの成分が髪、肌、爪に具体的な効果をもたらすのか、自分で理解しておくことが重要だ。ここでは、もっとも人気の美容サプリメントとその効能について、詳細を見ていこう。

ビオチン

ビタミンB7としても知られるビオチンは、健康的な肌や髪、爪の細胞を形成するのに必要なタンパク質の代謝を助ける重要な役割を担っている。ビオチンが重度な不足状態に陥ると、抜け毛や皮膚炎、爪がもろくなることが多く、サプリメントで補うことでこれらの症状改善に役立つと、美容クリニックThe Art of Skinの創設者で カリフォルニア大学サンディエゴ高の皮膚科学臨床学准教授のメラニー・パーム医師は説明する。

けれども、18件の研究結果によると、推奨される30マイクログラムのビオチンを既に毎日摂取している場合、余分に摂取しても美容効果は期待できないとのこと。30マイクログラムは、バランスのとれた食生活を送っていれば十分に摂取できているはずだそう。ビオチンは卵やサーモン、ポークチョップやハンバーグ、ヒマワリの種、サツマイモ、アーモンド、ブロッコリー、ほうれん草などに多く含まれる。

その上、学術雑誌『the Journal of the American Academy of Dermatology(JAAD)』に掲載された最近の研究では、ビオチンサプリメントを摂取すると、甲状腺や心不全を含むさまざまな臨床検査の妨げとなることが判明。「血液検査の2日前にはビオチンの摂取を控え、甲状機能の血液検査をする場合は医師にサプリメントのことを伝えましょう」とザルカ医師。

妊婦用ビタミン剤

妊娠中の女性の髪は太くてツヤがあり、伸びるのも早いと言われている。ただ一般的に信じられているのとは異なり、それは妊婦用ビタミン剤の服用が理由ではない。

「髪が伸びるのが早いのはビタミンではなく、妊娠中のホルモンによる可能性が高いです」と話すのはイリノイ州・ノースブルックにあるNorth Shore Center for Medical Aestheticsで公認皮膚科医を務めるシェリル・ホイヤー医師。

ホイヤー医師いわく、実際には妊娠が髪の成長に効果をもたらすという証拠はないんだとか。だから赤ちゃんを産む(または予定している)のでなければ、わざわざ購入する必要はなさそう。

ケラチン

ケラチンは髪、肌、爪の一番外側にある層を構成する構造タンパク質。その多くは体内で生成されるが、美容マニアたちはケラチンを補うことで髪が強く、ツヤツヤになると主張している。しかし、これにもその事実を裏付ける証拠はない。

実際ケラチンは胃の中の消化酸に強い抵抗力を持っているため、サプリメントを摂取することは有害になる可能性があるそう。「猫は自らの舌を使って自分で毛づくろいしますが、腸の中で毛玉を作り最終的に嘔吐します。これは、毛に含まれるケラチンを体内に取り込めないためです」とホイヤー医師。

コラーゲン

ケラチン同様、コラーゲンは肌を滑らかでハリのある見た目にしてくれる天然の構造タンパク質。加齢と共にコラーゲンの生成量が減少すると、シワができ始める。

じゃあサプリメントを摂取すれば若さを保てる? ある小規模な業界出資の研究では、2.5グラムのコラーゲンペプチドが入ったアンプルを12週間摂取した女性は、肌の水分量や弾力、キメや密度が改善したことが判明した。

けれども、これはたしかな解決策ではないという。「食事やサプリメントから摂取したコラーゲンは、腸内でアミノ酸に分解されます。そのアミノ酸がどのように使われるかは体が判断することになります」とパーム医師。「それらは必ずしもコラーゲンを作るためのアミノ酸とは限らず、血管をサポートしたり、肝臓を修復したり、脳を刺激するタンパク質になったりします」

つまり、コラーゲンはアンチエイジングには有効かもしれないものの、保証はないということ。

ビタミンC

強力な抗酸化物質であるビタミンC。ビタミンCは、コラーゲンの生成促進や劣化予防、メラニン(皮膚の色素沈着)の生成を抑止することで、皮膚がんや老化を予防することがわかっているとホイヤー医師は説明する。

問題は? 大量に摂取したとしても、肌に浸透するのはごくわずか。

ビタミンCを配合した外用剤(一般的には美容液など)は、しっかりと研究が行われていて、より効果的だ。けれども安定した処方にするのは非常に難しいので、臨床試験に裏付けられた、皮膚科医公認のブランドを選ぶようにしよう。

オメガ3系脂肪酸

これは本当に効果が期待できそうなサプリメント。これらの必須脂肪酸は健康的な髪や肌の細胞に不可欠な栄養を提供してくれる。「皮膚の細胞膜は、コレステロール由来の層で構成されていて、オメガ3系脂肪酸はそれを維持するのに必要な成分です。また、同様に髪の健康にも役立ちます」とパーム医師。

オメガ3系脂肪酸をおなかいっぱい食べれば、肌や髪にツヤがでるかもしれない。パーム医師いわく、サーモンやマグロなどの魚を定期的に食べていない人は、DHAとEPA(脂ののった魚に含まれるもっとも効果的なオメガ3系脂肪酸)を合わせて1日500mg摂取すると良いそう。

亜鉛

亜鉛はニキビ用洗顔料やシミのケアなどでよく使用される成分で、一部の研究では経口摂取することでニキビや酒さなどの炎症性皮膚疾患に効果があることが判明。ゆえにザルカ医師は軽度のニキビ患者には亜鉛を推奨している。

けれどもアメリカ皮膚科学会は最近、皮膚疾患に対する亜鉛サプリメントの使用を全面的に推奨するには、現状の証拠では不十分だと結論づけた。

また、亜鉛は細胞の分解やタンパク質の合成などの役割もあるため、爪が乾燥していたり、もろい場合には、食事から十分摂取できていないサインかもしれない。

女性はカキ(亜鉛を最も多く含む)や牛肉、栄養強化シリアル、ベイクドビーンズ、ロブスターやカニ、ナッツ類、チーズ、オーツ麦、鶏肉、ヨーグルトを食べることで、1日の推奨量である8mgを摂取することできる。

まとめ

美容サプリメントのレビューは、専門家からも一般消費者からも賛否両論がある。市場は非常に複雑だが、信頼性の高いブランドとして、常にトップに立っている製品がいくつかある。

ただ、サプリメントを摂取する場合、必ず医師に相談するようにしよう。「ビタミンを摂りすぎてしまう人もいます。多く摂取すればいいと考えるのはやめましょう」とザルカ医師。「特に妊娠している場合は、サプリメント療法を始める前に信頼できる医療機関に確認しましょう」

※この記事は、『Prevention』から翻訳されました。

Text: Kayla Blanton and Marygrace Taylor Translation: Asami Akiyama

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