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みずみずしい「美」を感じる、ある夏の物語。

  • 2021.8.19

美意識を育んでくれる一方、選ぶ段階からセンスが問われる映画・本・音楽。多方面で活躍する憧れの彼女たちが独自の観点で選んだ、主人公の生き方や洗練の描写など、至極の美を体現する作品を紹介。

映画監督の岨手由貴子さんが選んだのは、ミア・ハンセン=ラブ監督の『あの夏の子供たち』。この作品の中に岨手さんが見出した美しさとは?

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感情は実は等価で、どれもみずみずしい。

『あの夏の子供たち』

「映画はさまざまな美しさを教えてくれるものですが、そのひとつに“流れている時間”の美が挙げられると思います。これは、ある男性の自死の後、遺された妻と子どもたちが過ごす夏の日々のストーリー。川べりを歩く午後やガラガラに空いた映画館、ひとりで入ったカフェ、蝋燭の炎が照らす晩夏の夜……。彼女たちが過ごす時間は家族を失う前と変わらず、みずみずしい瞬間に満ちています。立ち直れないような悲劇も、笑い合った思い出も、すべては等価に存在する。生きている者だけが時間を重ね、きっとこれからも歳をとって、悲しさや愛しさ、そして多くの美しい時間に立ち合うことができる。そんな“人生は続く”という美しいテーゼを描いた、すばらしい作品です」。ミア・ハンセン=ラブ監督の実体験をもとに作られたというリアルな筋書き。喪失からの再生をしなやかに切り取る。

『あの夏の子供たち』●監督・脚本/ミア・ハンセン=ラブ●2009年、フランス映画●110分

岨手由貴子映画監督YUKIKO SODE大学在学中に映画製作の道へ。山内マリコ原作『あのこは貴族』が公開中。5月26日より期間限定先行レンタル開始。

※『フィガロジャポン』2021年7月号より抜粋

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